( 271636 )  2025/03/03 05:43:18  
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レギュラーガソリンの給油所小売価格で日本一高い状況が続いていた長野県が揺れている。高止まりの状況を県が問題視して対策に動き始めた直後、販売事業者らでつくる「長野県石油商業組合」の一部支部が価格を不正に取り決めるカルテルを結んでいた疑惑が浮上。こうした中、なぜか全国順位がじわりと下がった。支部関係者は「店頭表示価格の情報交換がなくなった」と証言する。 

 

■22週連続トップ 

 

経済産業省資源エネルギー庁の給油所小売価格調査では、令和5年4月以降、長野県のレギュラーガソリンの平均小売価格は全国最高値になることが多く、令和6年は公表された51週中48週で1位。今年1月14日まで22週連続でトップとなり、1リットル当たり182~190円台で推移した。内陸にあり、山間部が多いため輸送コストがかかることが要因の1つとされてきた。 

 

ガソリン価格は県民生活に直結するため、阿部守一知事は1月16日、同組合幹部と意見交換を実施。価格低下に向けて協議会を立ち上げ、ガソリンスタンドやサービスステーション事業者の経営体制強化や経営支援のあり方などを検討していく方針を決めた。 

 

だが2月5日に地元新聞社の報道でカルテル疑惑が浮上。長野市内のガソリンスタンド間で「〇円値下げ」「〇円値上げ」といった情報が組合支部連絡網で伝えられ、店頭表示価格の調整が行われているという内容だった。18日には長野市を含む北信地域でカルテルが結ばれた疑いがあるとして、公正取引委員会が独禁法違反(不当な取引制限など)の疑いで同組合への立ち入り検査に踏み切った。 

 

こうした中で、長野県のガソリン価格は全国順位を落とした。知事と同組合の意見交換後の1月20日の調査結果で2位(193・5円)になり、カルテル疑惑報道後の2月10日には3位(191・8円)に下がった。2月25日には2位(191・4円)だった。 

 

■「電話で情報交換」 

 

組合幹部は「コンプライアンスに違反するようなことは一切ない」と強調。だが、長野市内の支部関係者はカルテルは否定しつつも、疑惑表面化前までは小売価格を決めるにあたって電話で価格の上げ下げの情報交換を行ってきたと証言する。 

 

この関係者によると、毎週水曜日に元売りメーカーから仕切り価格(卸売価格)の変動幅(値上げ額、値下げ額)が通知され、ガソリンスタンドでは翌月曜日に店頭表示価格に反映させている。かつては他店の店頭表示価格を偵察するなどしながら自らの価格を決めていたとされるが、それが電話に切り替わり、卸売価格の小数点以下の変動幅をどのように店頭表示価格に反映させるかについて情報交換していたとする。 

 

 

ただ、価格を高止まりにさせる狙いはなく、「自分のところだけ高い表示価格で売るわけにはいかず、安い方に合わせることになる」と強調。また、店頭表示価格が同じでも、各社、各店ごとに仕入れ値が違い、経営方針も違うため、会員価格やアプリ登録、車検などに伴う値引きなどで実際の販売価格は異なっているとも指摘する。 

 

■「確認できなかった」 

 

カルテル疑惑報道後、組合は同20日をめどに県へ報告する約束をしていたが、報告したのは28日の夕刻。高見沢秀茂理事長は中間報告として「8支部の支部長らを集めて事実確認したが、出席者は事実は存在しないとの返答だった」と述べ、「再度、第三者委員会を入れて詳細な調査をするべく準備を始めたところ、公取委の検査が入りできなくなった」と釈明した。 

 

阿部知事は「組合としてどんな調査をされたんですか」と声を荒らげ、不信感をあらわにした。(石毛紀行) 

 

 

 
 

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