( 271646 )  2025/03/03 05:55:13  
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新潟で中国人転売ヤーと接触した駐車場 

 

 米の価格高騰が止まらない。政府は備蓄米の放出を発表したが、この事態に乗じて急増しているのが“転売ヤー”だ。とりわけ中国人向けSNSで日本の米の転売をめぐるやり取りが活発で、〈本日新潟コシヒカリ15袋入荷。飲食店歓迎〉〈千葉の米わずかに入荷。東京付近配送可能〉などの中国語の投稿が連日のようにアップされている。彼らは何者で、いかにして“商品”を仕入れ、どのように売っているのか──。実態に迫った。【前後編の後編】 

 

 実際に中国人向けSNSを通じて、転売ヤーに接触を試みた。 

 

 事前の中国語のやり取りで「新潟まで取りに来る場合は玄米30 kgで1万7000円。都内まで送る場合は送料込みで2万円」と提示された。5kgだと約2800円。今の店頭価格よりは割安だ。 

 

 受け渡し場所として指定された、新潟県内のスーパーの立体駐車場を訪れた。 

 

 転売ヤーは男女2人のペアで、いずれも30代半ばに見える。メディアで米の転売が連日取り上げられているからか、挨拶後に「来るのに何時間かかった? どこから来た? どうしてわざわざ車で取りに来た?」と質問してきたが、一通りのやり取りが終わると女性が状況をこう説明した。 

 

「米は毎日知り合いの農家から買い付けている。購入者は中国人か中華料理のお店が多い。うちが扱うのは新潟産コシヒカリだけ。午前中でその日の分は売り切れる」 

 

 さらに質問しようとしたところ2人ははやばやと車に乗り込み去っていった。 

 

 このアカウントには米のほか、カードゲームやゲーム機本体を販売する投稿もあった。 

 

 同じくSNS上で米の転売を投稿する、神奈川県内で中華料理店を営む中国人男性にも取材した。 

 

 店を訪ねると、レジ奥には10 kg入りの米袋が大量に積まれている。価格は10 kg7000円だった。 

 

「米業者から1トンくらい仕入れて余っているから、同胞たちを助けるために小紅書(SNS型電子取引アプリ)で売ろうと思ってね。新米だ。品質は間違いない。転売ヤー? うちは安く仕入れて高く売ることはしてないよ」 

 

 男性はあくまで“人助け”のスタンスだった。 

 

 転売行為自体は法令等で処罰の対象ではないが、投機的な転売が増えることで価格高騰に拍車をかけてしまう側面はある。「令和の米騒動」を収束させるには何が必要か。農業ジャーナリストの松平尚也氏はこう言う。 

 

「流通する米が不足する状況自体が問題で、転売が広がる素地を作っています。備蓄米放出だけでは収束しない可能性があります。2018年の減反政策廃止後も続く生産調整を緩和し、主食用米の生産量を今より増やすべきです。それで価格が低下するなら、欧米のように農家に直接支払いをするなど経営安定化に向けた支援を行なえばいいのです。供給量が増えて価格が適正化されたら、転売ヤーがコメ取引に集まる余地も少なくなります」 

 

 いつまで高騰が続くのか。日本人の生活にとって喫緊の大問題だ。 

 

■前編記事:中国人向けSNSで活発にやり取りされるコメ転売〈本日新潟コシヒカリ15袋入荷〉〈千葉の米わずかに入荷。東京付近配送可能〉など 直接農家を訪ねてくる中国人も 

 

※週刊ポスト2025年3月14日号 

 

 

 
 

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