( 272481 ) 2025/03/06 06:56:49 0 00 近年の投資ブームに警鐘を鳴らしていた森永卓郎さん
1年3か月にわたるがん闘病の末、1月28日に逝去した経済アナリストの森永卓郎さん(享年67)。生前、数々の著書を上梓した森永さんだが、未発表の原稿があった。本誌・週刊ポストが入手したその遺稿には、来る株価大暴落への警鐘と対策が網羅されていた。本記事では、現在の投資ブームに対する森永さんの警句を紹介する。
お金に囚われ過ぎて生きるのは無意味──森永さんが遺稿に綴っていたのは、そんなメッセージだった。
特にやってはいけないのが「投資」だと森永さん。バブルの再来と見ている現在の投資ブームを真っ向から否定したうえで、遺稿にはこうあった。
「経済評論家も政府も、『長期・分散・積み立て』の3原則を守っていれば、株式投資は確実に儲かると喧伝するから、すっかり『投資は儲かるもの』と、信じこんでしまっている。しかし、それは根本から間違っている」(以下「」内は森永さんの遺稿より)
ここ数年、半導体銘柄を中心に空前の株価高騰が起こり、現在ではバブルの中心が宇宙開発に移りつつある。この株価高騰に森永さんは警鐘を鳴らす。
「エヌビディア1社の時価総額が日本のGDP(2023年:591兆円)と肩を並べる(2025年1月6日:587兆円)のは、とてつもない過大評価であり、宇宙開発は妄想に近い。月に行かなくても、はるかに暮らしやすい土地が、地球上にはいくらでもある。つまり、現在のバブルは、とてつもない大きさに成長する一方で、すでに末期症状を呈しており、その大崩壊は間近に迫っている」
投資の本質はギャンブルであり、老後資金や生活資金をギャンブルでまかなおうと考えてはいけないと森永さんは注意を促す。
「投資をすれば放っておいてもお金が増えていくという幻想は、もう捨てるべきだ。
投資で生活資金を増やそうなどとは、間違っても考えず、まじめに働くことに専念する。それが、安定した人生を豊かに生きるコツなのだ」
そもそも多くの人は老後の不安から老後資金を必要以上に貯め込んでいる。内閣府の『経済財政白書』(令和6年度版)によれば、日本人の金融資産のピークは60~64歳で平均1838万円。その後、徐々に減るものの、85歳を過ぎても所有する金融資産は平均1500万円を超える。
「つまり、日本人は老後不安から過剰な資金を貯め込んだ末に、老後も節約と労働を続け、せっかく貯め込んだ老後資金にはほとんど手をつけずに死んでいくということだ。
なぜ、こんなおかしなことが起きているのか。それは、メディアや政府が『公的年金不安』を煽り、『老後生活を守るためには、多くの資金が必要だ』と言い続けているからだ」
墓にお金を持っていけないことを肝に銘じる必要がある。
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【プロフィール】 森永卓郎(もりなが・たくろう)/1957年7月12日生まれ。東京都出身。経済アナリスト、獨協大学経済学部教授。テレビやラジオのコメンテーターとしても活躍。2025年1月28日に逝去(享年67)。森永さんが実践を通して綴った遺稿は『森永卓郎流「生き抜く技術」31のラストメッセージ」(祥伝社・3月3日発売)に詳しく掲載されている。
※週刊ポスト2025年3月14日号
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