( 272576 )  2025/03/07 03:10:39  
00

斎藤知事を叱責する大声が… 

 

兵庫県の斎藤元彦知事が、自身の疑惑に“クロ判定”を出した県議会特別調査委員会(百条委)の結論を受け入れない姿勢を示した。さらに、疑惑を告発し自死した元県幹部の県公用パソコンに「わいせつ文書」があったと言い始め、県民の関心があるとして中身の公開を検討する考えも表明した。 

 

斎藤知事の疑惑は昨年3月12日、退職間際だった西播磨県民局長・Aさん(60)が外部に郵便で知らせた。知事のパワハラや「おねだり」がひどいと指摘したほか、2023年11月の阪神・オリックス優勝祝賀パレードの協賛金を出した金融機関に県が国費補助を増額する裏約束をした疑いがあるなど、計7項目が書かれていた。 

 

「これを知った斎藤知事は片山安孝副知事(昨年7月に辞職)らに犯人探しを命じ、特定されたAさんは退職を取り消され、懲戒処分を受けました。 

さらに、Aさんの県公用パソコンの中から見つけた私的な文書データを印刷したものを当時の井ノ本知明総務部長が県議らに見せて回りました。 

 

百条委でも、維新所属で副委員長だった岸口実県議と委員だった増山誠県議がデータの開示を要求。受け入れられませんでしたが、その結論が出る前日にAさんは自死したんです。 

Aさんはデータが出回ることに苦しんでおり、『一死をもって抗議をする』『百条委を必ずやり通してほしい』と書き残していました」(知人) 

 

死をきっかけに、県のAさんへの仕打ちが告発者の不利益な扱いを禁じた公益通報者保護法に違反しないかどうかも百条委の調査項目に加わった。 

 

「その後、昨年11月の出直し知事選で、岸口、増山両県議らから怪文書などを受け取った立花孝志NHK党党首が、その内容を基に『疑惑は嘘で、斎藤さんはハメられた』との主張を展開しました。Aさんのパソコンの中身だという真偽不明の話が拡散され、“黒幕”として名指しされた百条委メンバーだった竹内英明県議や奥谷氏らは猛烈な誹謗中傷を浴びました。攻撃は選挙後も続き、竹内さんは県議を辞職しましたが今年1月に亡くなりました。自死とみられます」(県議会関係者) 

 

調査の重要人物が2人も亡くなる異様な展開の末、怪文書伝達などの責任を問われた岸口、増山氏が辞任して去った百条委は3月4日、遂に報告書の内容を固めた。 

 

「県職員の証言や専門家の意見を基に、報告書はAさんの処分を『公益通報者保護法に違反している可能性が高い』と判断しました。パワハラやおねだり疑惑も告発をほぼ認める内容です。パレード絡みの公金不正支出疑惑も、背任容疑で県関係者が起訴されれば『管理責任を重く受け止め対処せよ』と斎藤知事に求める厳しい内容になっています」(県議会関係者) 

 

斎藤知事は昨年3月27日の会見で、告発は「事実無根」「嘘八百」だと罵倒した。これに百条委は「文書には一定の事実が含まれている」と結論付け、県の対応は「全体を通して客観性、公平性を欠いており、行政機関の対応としては大きな問題があった」と断じた。 

 

 

3月4日の委員会で奥谷氏は故竹内氏に触れ、涙ぐみながら「さぞかし無念であったと思います。こんにちの日を共に迎えたかった」と話した。傍らでは何人もの県職員が泣いていた。 

そして翌5日、報告書は県議会本会議に報告され、多数決で了承された。 

 

「採決に先立ち報告した奥谷氏には議員のほとんどが拍手を送りました。議会の圧倒的多数が、告発を虚偽と決めつけた斎藤知事に態度を変えるよう求めた形です。 

しかしここから斎藤知事や支持者は抵抗を強めたんです」(地元記者) 

 

70の傍聴席はほとんどを斎藤知事の支援者が占め、奥谷氏が報告書を読み上げた時には女性2人が立てた親指を下に向けるブーイングポーズで抗議。大声を上げた高齢男性1人が強制的に退室させられた。 

 

さらに百条委の秘密会の音声を隠れて録音し立花氏に提供していた増山県議は、報告書了承に反対する討論を行なった。増山氏は岸口氏とともに維新も離党している。 

 

「討論で『憶測に基づいた誹謗中傷性の高い結論を導いている』と告発文書の信用性を否定した増山氏に、傍聴席から拍手が起きました。結局、採択には増山氏と、この日維新を離党した白井孝明県議の2人が反対し、岸口氏は採決時に退席しました」(地元記者) 

 

この様子を厳しい顔で聞いていた斎藤知事は本会議が終わると報告書には従わない意思を鮮明にした。 

 

直後の囲み取材では公益通報者保護法違反の可能性が高いとの指摘に「可能性ということですから、逆に言いますと適法性の可能性というものあるということで、兵庫県、私としては対応については適切だったと考えています」と言ったのだ。 

 

自身のパワハラが事実上認められたことに対しても「違法性の認定をされていない」と主張。場所を改めた午後の定例記者会見でも、報告書は「1つの見解」だと言い、自身の言動に問題があったとは認めない。そして斎藤知事は、処分撤回などAさんの名誉回復を図らないのかと聞かれると突然饒舌になり、Aさんのパソコンに「倫理上極めて不適切な、わいせつな文書」があったと言い始めた。 

 

「これまで斎藤知事はAさんの懲戒処分の理由の一つに『業務と関係のない倫理上問題のある文書を業務中に作成した』ことを挙げてきました。突然文書の中身なるものを持ち出したことで記者団は驚き、なぜそこまでAさんを貶めるのかとの質問が相次ぎました。 

 

斎藤知事は中身を明らかにしたことに問題はないと強調し、少なくとも計7回、『わいせつ文書』という言葉を繰り返したのです。ムキになって連呼した印象です」(現場にいた記者) 

 

 

会見での異様な光景はこれだけではない。この日、百条委報告に不満を持った片山元副知事がコメントで「パソコンの中身を公開するよう知事に求める」と表明していた。斎藤知事はこれに触れ、公開するかどうかは「決めていない」と言い始めたのだ。 

 

さらに「検討したいということか」と聞かれた斎藤氏は、「納税者から見て(パソコン内容に)関心はあると思いますので、どういった対応ができるかは、最初から全てがダメとかっていう議論ではない」と返答。情報公開請求があれば開示の可否を検討するとの考えを表明したのだ。 

 

「公用パソコンの中にあるものは公文書とみなすという論理ですが、百条委はこの私的データは扱わないと決めていました。その理由を弁護士である奥谷氏は『公文書公開では、通常他人に知られたくないと認められるものは個人に関する情報として非公開情報とされる規定があります』と説明してきました。斎藤知事の主張はこの考えに真っ向から反しています」(県職員) 

 

Aさんの私的情報はこれまで何度も拡散されてきた。「毎回、人格を貶め告発の信用性を下げる目的です。同じことを今度は知事が自ら行おうというのです」(県職員) 

 

会見は普段に増して殺伐とした空気になり、終盤には「あなたは死体蹴りをやっている。死者を冒涜するな。職員をばかにするな」と斎藤知事を叱責する大声が飛んで大荒れとなった。 

 

「斎藤知事の発言で、支持者グループのチャットでは早速公開請求の呼びかけが飛び交っています。想像もつかないことを知事が先導して始めたんです」 

 

県関係者の一人はそう話し、気分が悪くなったとふさぎ込んだ。疑惑発覚から間もなく1年。醜悪さを増しながら混乱は一層深まっている。 

 

※「集英社オンライン」では、今回の記事についてのご意見、情報を募集しています。下記のメールアドレスかX(旧Twitter)まで情報をお寄せください。 

 

メールアドレス: 

shueisha.online.news@gmail.com 

 

X(旧Twitter) 

@shuon_news 

 

取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班 

 

集英社オンライン編集部ニュース班 

 

 

 
 

IMAGE