( 272626 )  2025/03/07 04:07:18  
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「被害があった事実を認めてもらいたい」と訴える鈴木さん(仮名、右)と佐藤さん(仮名)=東京都内で2025年2月12日午後8時15分、西本龍太朗撮影 

 

 「自分が生きた証しを認めてもらいたい」 

 

 旧ジャニーズ事務所(現SMILE―UP.=スマイルアップ)の創業者、故ジャニー喜多川氏による性加害問題で、被害者への補償窓口が設置されてから間もなく1年半がたつ。 

 

 しかし、補償を巡って国内外で提訴が相次ぐなど、解決にはほど遠い状況だ。 

 

 詳細な説明もなく、一方的に「補償対象外」と通告された当事者の間には不信感が広がっている。 

 

 ◇不透明な基準、理由なく放置 

 

 元ジャニーズJr.の40代の男性は「鈴木」という仮の名前で、被害を訴えてきた。 

 

 2024年2月、スマイル社が設置する被害者救済委員会に業務委託された弁護士のヒアリングを受けた。 

 

 旧事務所への在籍を証明する証拠や性被害のストレスによる通院記録などを示したが、6月になって「在籍も被害も確認されなかった」とメールで知らされた。 

 

 事務所在籍は「自分の生きた証し」。判断の根拠を問い合わせたが、明確な回答は得られていない。 

 

 鈴木さんは今年2月、被害を訴える「佐藤さん」(仮名、50代)らと共にイベントに出席。スマイル社側の対応を「理由もなく放置し、一方的に(補償の)対象としないと通告している」と批判した。 

 

 さらに、「被害者に寄り添う姿勢は感じられない」「不透明な基準で選別されている」と指摘し、速やかな対応を求めた。 

 

 ◇米国では高額の訴訟も 

 

 解決まで時間がかかっていることで、交渉を裁判の場に移す人もいる。 

 

 被害を受けたと主張する元所属タレントの田中純弥さん(43)ら2人は24年12月、スマイル社や元幹部らを相手取り、計3億ドル(約450億円)以上の賠償を求め、米ネバダ州クラーク郡の裁判所に提訴した。 

 

 一方、スマイル社は同月、田中さんら2人を含む4人に対し、損害賠償の義務がないことなどの確認を求め国内の裁判所に提訴。理由について「救済委員会による補償枠組みに応じてもらえず、具体的な補償金額を示せない」などとしている。 

 

 ◇最新の補償人数は 

 

 スマイルアップは2月28日、この日までに1018人から被害申告を受け、連絡が取れている784人のうち548人と補償内容で合意したと発表した。 

 

 補償対象外は218人。同社は毎月2回、補償の進捗(しんちょく)状況を公表しており、申告者数は前回の公表時から1人増えた。 

 

 補償の対象外となり、再審査を求めている鈴木さんは声を絞り出した。 

 

 「ジャニーズに2度殺された気分。被害の時に1回。今、存在を消されていることでもう1度、殺されている」 

 

【西本龍太朗】 

 

 

 
 

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