( 272671 )  2025/03/07 04:58:53  
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参院予算委員会で答弁に臨む石破茂首相=6日午前、国会内(春名中撮影) 

 

石破茂首相が2月の日米首脳会談で、米国製大型輸送機購入の意欲をトランプ大統領に伝えていたことが判明し、自衛隊に波紋を広げている。高い輸送力を持つC17輸送機が念頭にあり、自衛隊への配備は首相の長年の持論だ。ただ、国内で運用するには課題が多く、導入のメリットをデメリットが上回りかねないとの懸念がつきまとう。 

 

■「政治的意図感じる」 

 

「現場からは出てこない発想だ。政治的意図を強く感じる」 

 

自衛隊幹部はこう懐疑的な見方を示す。 

 

航空自衛隊は現在、国産のC2や米国製のC130といった輸送機を保有している。C17はC2と比べて積載量が倍以上で、戦車やヘリコプターを運ぶこともできる。 

 

ただ、C17は大型で重量があり、長い滑走路が必要だ。例えばC2が置かれている空自入間基地(埼玉県)で運用するためには、滑走路を延長する必要があるとみられる。また、新機種を採用する場合、乗員や整備員を新たに育成しなければならず、「既存の機体を増やした方が合理的だ」(若手隊員)との指摘もある。 

 

■野党時代に検討要求 

 

自衛隊でC17の導入を求める機運は乏しいが、政府には熱心な推進者もいる。防衛相や防衛庁長官を歴任し、兵器の性能に一家言を持つ首相本人だ。 

 

首相は今月4日の衆院予算委員会で「輸送機は多くの物を積めれば積めるほどいい」とした上で、「自衛隊の機動展開、住民の適切な避難のために輸送力の強化が必要だ」と主張した。 

 

首相は民主党政権時代にも、国会質問でC17導入の検討を求めていた。今回の購入打診について、防衛省幹部は「それだけ首相の思いが強かったということだ」と言葉少なに語る。 

 

もっとも、外交カードとして切った一面もある。トランプ政権内では、日本は防衛費をGDP(国内総生産)比3%に引き上げるべきだとの主張も出ている。首相としては米国製兵器の購入を先んじて打診することで、トランプ氏の歓心を買う狙いがあった。 

 

複数の防衛省関係者によると、C17を導入する場合でも、少数の調達に止まる見通しだ。このため、政府・与党内では「対米関係を考えればやむを得ないコストだ」(自民党国防族議員)との声も出ている。とはいえ、現場のニーズにマッチしていない機体を押し付ければ、自衛隊の負担は増しかねない。(竹之内秀介) 

 

 

 
 

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