( 272976 ) 2025/03/08 05:28:55 0 00 参院予算委員会に臨む石破茂首相=7日午後、国会内(春名中撮影)
医療費の支払いを抑える「高額療養費制度」の利用者負担の上限額を引き上げる政府方針は7日、「白紙」に追い込まれた。石破茂首相はこれまで一部見直しを2度表明していたが、患者団体らの反発は収まらなかった。与党内からも夏の参院選への影響を懸念する声が上がり、方針転換せざるを得なくなった。
■保険財政安定を模索
政府が一時、上限額引き上げを目指したのは、制度の持続可能性を高めるためだ。医療技術の高度化や高額薬剤の普及で医療費は押し上げられ、現役世代の保険料が上昇しており、保険財政を安定化させる必要があった。同時に岸田文雄前政権で決定された子供関連政策の財源確保のため、社会保障の歳出削減を図る狙いもあった。
ただ、厚生労働省での議論の過程では患者らの意見を聞く機会がなく、患者団体が強く反発。立憲民主党も政府方針は「受診控えにつながる」などと批判した。
■参院選敗北なら政権交代も
これを受けて首相は2月28日の衆院予算委で一部見直しを表明し、8月の引き上げのみを維持する方針を示した。政府・与党内にはこの段階で凍結論もあったが、首相自身が一部見直しにこだわった。
だが、患者団体などの反発は収まらず、与党内からも夏の参院選への影響を念頭に、上限額引き上げの凍結に向け「政治判断すべきだ」(自民党・佐藤正久幹事長代理)との意見が噴出。3月7日には自民の松山政司参院幹事長が森山裕幹事長に「参院自民の総意」として「国民の理解を得られない」と伝えた。少数与党で党内基盤の弱い首相にとって党内の不満は無視できない。参院選の敗北は政権交代につながる可能性もあり、凍結判断に傾いた。
■「見直しは必要」
ただ、制度の持続可能性を高め、保険財政を安定させる対策は、引き上げの白紙に伴い今後も大きな課題として残る。
また、年3・6兆円規模の対策が盛り込まれた「こども未来戦略」で、令和10年度までに1・1兆円を社会保障の歳出削減で賄うとされた。当初方針では1600億円の公費削減が見込まれていたため、代わりの財源確保策を探る必要があるが容易ではない。
日本総研の成瀬道紀主任研究員は「見直し自体は必要だ。時間をかけて丁寧な議論を行い、結論を得るべきだ」と話している。(大島悠亮)
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