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竹中平蔵氏 立花孝志氏 

 

 みんかぶマガジンにて、経済学者の竹中平蔵氏と「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志氏の対談を実施した。兵庫県知事選やフジテレビなど多岐にわたるテーマについて議論した内容を全6回にわたってお届けする。第1回は立花孝志氏の政治手法について聞いたーー。(取材日:2025年2月10日) 

 

ーー本日のゲストは、経済学者の竹中平蔵先生と、「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志さんです。よろしくお願いいたします。 

 

竹中平蔵:今回ぜひ立花さんにお伺いしたいと思ったのは、独自の発想で人々を驚かせながらも、さまざまな問題提起を行い、それを社会に浸透させていく手法についてです。そのような発想や政治活動のスタイルは、いつ頃から、どのような経緯で思いつかれたのでしょうか? 

 

立花孝志:まず、私は20年前に『週刊文春』でNHKの不正経理を内部告発しました。基本的には真面目な性格なので、その後も淡々とメディアにNHKの問題を取り上げてもらい、2009年の政権交代の際には民主党の議員を応援しました。 

 

 しかし、その後、民主党がNHK問題に取り組まないことが明らかになり、橋下さんに頼ろうと維新の会に行きましたが、結局どの党もNHK問題には手をつけませんでした。そこで、2013年に政治団体を設立し、駅前で演説を始めることにしました。 

 

 当時は、「私は元NHK職員で、NHKの不正を追及している」と真面目に話しても、誰も立ち止まって聞いてくれませんでした。2億円もの横領があったと話しても、ほとんど関心を持たれなかったんです。 

 

 ところが、不倫やスキャンダルの話をすると、人々の関心が集まることに気が付きました。そこで、「悪目立ち」することで注目を集め、その上で正しいことを伝えていく、という方法を取らざるを得なかったのです。 

 

竹中平蔵:なるほど。私も共感する部分があります。ちょうど立花さんが内部告発をされた頃、私は総務大臣という立場にあり、NHK改革を進めたいと考えていました。 

 

 しかし、当時のNHKにはさまざまな問題があり、結局、十分な力を発揮することができませんでした。 

 

 また、今日の話にも関わることですが、総務大臣になるまで、私はNHKは特殊法人であり、NHK法という独自の法律があるのだと思っていました。 

 

 しかし、実際にはそんなものはなく、放送法がその根拠となっているのですよね。日本にとって放送とは基本的にNHKが中心であり、その後に民放が出てきたという歴史があります。 

 

立花孝志:私がNHK問題に関わり始めた2006年頃には、「竹中懇」や片山虎之助さんの意見があり、それぞれに納得する部分がありました。私はそれらの意見を支持しながら、NHK問題に取り組んでいました。 

 

 

ーー「悪目立ち」をしていると言われることについてですが、それは手段としてやっていることなのでしょうか? 

 

立花孝志:よく「悪目立ちしている」と言われますが、手段として使っていたのは2~3年前までです。昨年の兵庫県知事選挙に関しては、決して目立つことを目的としたのではなく、真実を明らかにするために行動しました。結果的に注目を集めることになったのかもしれませんが、私はただ疑問を持ち、真実を追求していただけなのです。 

 

 例えば、私が入手した情報の多くは、維新の会の関係者から提供されたものでした。その情報が正しいかどうかを確認するために、関係者の事務所を訪ねました。しかし、それが「脅迫」だとされてしまいました。私は単に質問に答えてもらえなかったので事務所を訪ねただけなのですが、それが問題視されたのです。 

 

 私は、いきなり事務所を訪れたわけではなく、まず事前に連絡を取っています。しかし、それでも逃げ回られたため、仕方なく事務所に行ったのです。そして、1か所の事務所を訪ねた後、「これ以上は危険だからやめよう」と判断し、それ以上の行動はしていません。 

 

 それでも「悪目立ちしている」と言われることについてですが、例えば、10年で10人の女性と不倫し、それがすべて雇用関係のある相手だったとすれば、現在の法的解釈では不同意性交等に該当する可能性がありますよね。そのような疑問を呈しただけで目立ってしまうという現状があります。少なくとも、私は兵庫県知事選挙で「悪目立ち」するつもりはまったくありませんでした。 

 

ーーガーシーさんについても、手段だったということでしょうか。 

 

立花孝志:通常の政党であれば、ガーシーを公認することはないでしょう。しかし、私が重要視しているのは、テレビの裏側の真実を明らかにすることです。だからこそ、彼が注目されているにもかかわらず、テレビには一切出演させない、話題としてすら取り上げないという状況を見て、これは変えなければならないと感じました。 

 

 そこで、ガーシーに「このままではネット上だけの話で終わってしまう。選挙に出馬することで、テレビに無理やりこの問題を扱わせる手段を取るべきではないか」と提案しました。 

 

 結果として、あれから3年が経ち、ジャニーズの問題など、当時ガーシーが指摘していたことにもいくぶんかの真実性が含まれていたことがわかりつつあります。 

 

 

竹中平蔵:興味深いですね。というのも、昨年のノーベル経済学賞を受賞したアセモグル教授の理論にも通じる部分があると感じます。 

 

 アセモグル教授はMITで研究をされていて、制度や仕組みが経済発展において極めて重要であると主張しています。例えば、朝鮮半島では、北と南で同じ言葉を話しているにもかかわらず、経済格差が何十倍もあるのは、制度の違いによるものです。 

 

 また、アメリカのアリゾナ州とメキシコの国境にあるレガノスという町では、かつては同じ地域だったにもかかわらず、現在ではアメリカ側の方が3~4倍の所得を誇っています。これも、制度の違いによるものだと言われています。 

 

 こうした制度の違いが経済や社会の発展に大きく影響を与えるという考え方は、日本の放送法などの制度改革の議論にもつながる話です。しかし、制度改革を訴えるのは、主に経済学者や政策研究者ばかりで、一般の人々にはなかなか関心を持たれにくいのが現実です。 

 

 ただ、今回のように、強い問題提起があった結果として、「この制度は本当に正しいのか?」という議論がようやく活発になりつつあるのではないかと思います。 

 

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