( 273406 ) 2025/03/09 07:47:47 0 00 新型コロナウイルス5類移行後も運転手の離職が収まらず、減便・廃止が続く路線バス=2月、鹿児島市のJR鹿児島中央駅前
運転手が足りない。地方だけでなく鹿児島市内でも運転手不足による路線バスの減便・廃止が相次ぐ。住民の移動を支えるバス業界の求人難は深刻だ。待機時間のある変則勤務や事故リスクが敬遠されがちな上、平均年齢の高さなど構造的問題も横たわる。バス運転手を取り巻く実情を紹介する。(連載かごしま地域交通 第2部「運転手はどこへ」①より)
「『県をまたぐな、行動を控えろ』という国のメッセージは強烈だった。運輸業界はもろに影響を受けた」。鹿児島交通(鹿児島市)の西村将男副社長は新型コロナウイルス感染拡大時を振り返る。
乗客とともに、先行きが不安になった運転手もいなくなった。自らも感染の恐れと闘いながらバスを動かし続ける重圧は気持ちを折るのに十分だった。
市内を中心に、市内と大隅半島や南薩を結ぶ442系統(2024年3月時点)を運行、コロナ流行初期の20年度末は519人の運転手が在籍した。人の流れへの制限が目立った21、22年度の2年間で定年を含む100人が辞めた。
24年度は24人が退職し10月時点で384人になった。この間の入社は4人。「人の流れが戻り、便を増やしたくても運転手がいない」と西村副社長。状況に変化の兆しはない。
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市内や北薩地域を中心とする251系統(25年2月現在)を運行する南国交通(同市)も、20年度末に449人いた運転手のうち、22年度末までに66人(定年含む)が現場を離れた。
上川博文自動車事業部長によると、コロナ流行時点で既に人手はぎりぎりだった。運転手同士が濃厚接触者にならないよう出勤をずらすなど、とにかく感染対策を徹底してもらった。
「何とか欠便を出さずに済んだ。集団感染(クラスター)が起きていたら分からなかった」。計画通りに運行できない欠便は行政処分の対象となり、バス事業者にとって禁じ手だ。
コロナが感染症法上の5類に移行した後も離職は止まらない。南国交通は昨年4月、2割程度の減便を盛り込んだダイヤ改正をした。5%だった鹿児島交通と比べて大がかりだった。
同じ4月、南国交通は、市交通局の経営改善策の一環で12年度から運行を受託する北営業所管内の一部路線を返上した。理由は運転手不足。5年ごとの更新で26年度末までの契約だった。期限前に業務を戻された市交通局も欠員状況に陥るとはいえ、他社に構っていられないほど自社の人繰りに窮していた。
市交通局の受託を続ける残りの路線も、27年度以降の再契約は困難との意向を伝えている。南国交通の運転手は現在376人。ダイヤを守るためには30人ほど足りない。休日出勤を募りカバーしている。
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バス運転に必要な大型2種免許の県内保有者は、コロナ前の19年末1万6263人、23年末1万4284人と約2000人減った(警察庁運転免許統計)。
運転手の急病などに備え各営業所にはカバー要員が待機していた。今はそうもいかない。乗務予定が近い運転手を繰り上げ、その間に本社から応援を出してしのぐこともある。
市内のある車庫で、一日の勤務を終えたばかりの運転手を取材していた時だ。しきりに腕時計を気にしていた。「すみません。今からまた行かなきゃ」と別のバスの方へ駆けていった。前日に起きた事故の影響で急きょ代打勤務になったという。現場の綱渡りは続く。
南日本新聞 | 鹿児島
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