( 273504 )  2025/03/10 04:04:09  
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トルコのクルド人の非合法武装組織である「クルド労働者党(PKK)」が反政府闘争の停戦を宣言し、武装解除や組織解散は不透明だが、川口市で難民認定申請中のクルド人に影響を与える可能性がある。

PKKの宣言によりクルド人の難民性が否定されるという声もあるが、政府との和平の実現により迫害を主張する理由がなくなるとの見方もある。

日本国内の入管関係者は新たな難民申請が難しくなる可能性があり、クルド人らも難民性を主張し続けるかは疑問が残る。

(要約)

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クルド人少年が煙幕を出す花火を投げつける事件が起きた大型商業施設‖埼玉県川口市(植村光貴撮影) 

 

トルコの少数民族クルド人の非合法武装組織「クルド労働者党(PKK)」が反政府闘争の即時停戦を宣言した。武装解除や組織解散の実現は不透明だが、今回の一連の動きは、埼玉県川口市で難民認定申請中のクルド人らの立場に何らかの影響を与えるのか。トルコのクルド人らからは「クルド人が難民申請する口実がなくなった」との声も出ている。 

 

■もう難民ではない 

 

「われわれは指導者の呼びかけの内容に全面的に賛同する」 

 

シリアのクルド地域に本拠を置き、PKKに近いとされるメディア「ルドー」によると、PKK執行委員会は今月1日、このような声明を発表して即時停戦を宣言した。 

 

その2日前の先月27日、PKK創設者のオジャラン受刑者(76)の獄中声明が公表され、「PKKは役割を終えた」として武装解除と解散を求めた。その際、次の一文が注目された。 

 

「(トルコ)国内でクルド人のアイデンティティーの否定が解消され、表現の自由が改善されたことで、PKKは創設の意義が弱まっている」 

 

創設者みずからがトルコでのクルド人の迫害を否定し、PKKが「全面的に賛同」したことで、クルド人の難民該当性も否定されたことになる。 

 

■政府との対立利用 

 

トルコ国内のクルド人の人権をめぐる状況は、2003年に発足したエルドアン政権により激変。国営放送でクルド語の放送が始まり、クルド系政党はクルド語での政治活動が可能になるなど、クルド系住民の権利が拡大。12年からは政府とPKKとの和平交渉が始まった。 

 

翌13年、PKKはオジャラン受刑者の指示に基づき停戦を宣言。しかしPKK内部の路線対立もあって武装解除には至らず、15年に政府とPKKの対立が再燃した。 

 

川口に在留するクルド人の間では、こうした対立状況を「クルド人への迫害」と主張し、難民申請の理由とする形になっていたが、政府とPKKの和平が実現すれば、そうした状況も過去のものとなる。 

 

■難民の主張継続か 

 

 

トルコ国内でクルド人の多い地域に住むクルド人男性は「クルド人であることを理由にトルコで迫害されているという主張は、もう通じなくなる。日本だけでなく世界中でクルド人が難民になろうとする口実がなくなる」と話す。 

 

日本国内の入管関係者も「新規の難民申請はやりにくくなるかもしれない」。一方で、日本で難民申請中のクルド人らが「過去にあれだけわれわれを迫害したトルコ政府は信じられない」として、難民性を主張し続けるとの見方も出ている。 

 

PKKは声明で停戦を宣言する一方、武装解除については「指導者自身が主導しなければならない」としてトルコ政府にオジャラン受刑者の釈放を要求。また、解散については触れておらず、今後も曲折がありそうだ。 

 

 

 
 

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