( 273861 )  2025/03/11 06:16:55  
00

竹中平蔵氏 立花孝志氏 

 

 みんかぶマガジンにて、経済学者の竹中平蔵氏と「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志氏の対談を実施した。兵庫県知事選やフジテレビなど多岐にわたるテーマについて議論した内容を全6回にわたってお届けする。第4回は政治資金問題についてーー。(取材日:2025年2月10日) 

 

ーー竹中先生がこれまでに受けた批判の中で、一番「これは違う」と思うものは何ですか? 

 

竹中平蔵:私が金持ちだと思われていることですね(笑)。例えば、りそな銀行に2兆円を注入した際、「キックバックを受けている」と批判されたことがありました。 

 

立花孝志:キックバックといえば、パソナからのキックバックの話もよく取り上げられますよね。 

 

竹中平蔵:しかし、そんなことは現実的にできるはずがありません。面白い話があるのですが、大臣になると資産を公開しなければならないんです。資産公開の目的は、権力を持った人間が任期中に不当に資産を増やしていないかを監視することです。ところが、NHKをはじめとする報道機関は、資産の多い順にランキングを作り、まるで娯楽のように報道します。例えば、私が高層マンションに住んでいたことを取り上げられましたが、まったく関係のない誤解が広まることもあるのです。 

 

立花孝志:竹中さんが大臣になられた頃、派遣制度に対する批判も強かったですよね。当時、竹中さんが派遣制度を推進したのは、グローバルスタンダードに合わせるための判断だったと思います。しかし、それを理解できない人たちは、「自分が就職できなかったのは規制緩和のせいだ」と考え、小泉内閣やパソナに矛先を向けたのだと思います。 

 

竹中平蔵:おっしゃる通りです。実際には、派遣制度は小泉内閣以前にすでに決定されていました。ILO条約に加盟した90年代末の時点で制度は整備されており、その手続きは厚生労働省が行っていました。私は当時、経済財政担当だったので、派遣制度の実施には直接関与していません。 

「派遣労働者が増えた」と言われますが、現在でも全労働者のうち派遣労働者は3%程度に過ぎません。多くの人が勘違いしているのは、非正規雇用の3~4割のうち、派遣労働者はごく一部であり、大部分は契約社員やアルバイトであるということです。 

 

立花孝志:派遣業を推進し、パソナの役員になり、儲けるだけ儲けた上にキックバックまで受け取っている——そんな分かりやすいストーリーができあがってしまったから、ターゲットにされてしまったんですね。竹中さんは、それに対して文句を言わないところが潔いですね。 

 

竹中平蔵:言っても仕方がないですからね。面白いことに、パソナの取締役会長を辞めた途端、批判はほとんどなくなりました。ネット上では、いまだに過去を掘り返して批判する人もいますが、以前ほどの勢いはありません。 

 

 

立花孝志:私は、パソナが「テンポラリーセンター」だった時代から南部さんと知り合いです。NHKでも当時、長期雇用のアルバイトを3年以上雇うと正社員にしなければならないというルールがありました。そのため、一度パソナに預かってもらい、再派遣してもらうことで、柔軟な雇用を実現していました。 

 

 もちろん、新規雇用の際にもパソナにお願いすると、大変優秀な人を派遣してくれました。経営側にとっては、非常にありがたい制度だったと思います。しかし、正社員になれない人にとっては、不満の対象になってしまうのだろうとも感じました 

 

竹中平蔵:それは、日本の正社員制度が特殊だからこそ起こる問題でもあります。1979年の東京高裁の判例によって、日本では企業が倒産するまでレイオフ(解雇)できないとされました。これほど手厚く保護されている社員制度は、世界的に見ても極めて珍しいものです。 

 

 そのため、企業としては正社員だけでは経営が成り立たず、非正規雇用の割合が増えていくのは必然です。よく「資本家が労働者を搾取している」と言われますが、実際には、正規労働者が非正規労働者を搾取している構造になっているのです。 

 

立花孝志:本当にその通りですね。労働組合に加入している人々は、労働三法によって強く保護されています。病気や怪我をしても手厚い補償があり、失業手当や傷病手当などの制度も充実しています。その結果、企業は高額な人件費を負担せざるを得ず、必然的に短期契約の非正規雇用を増やさざるを得ません。その結果、正規と非正規の間に大きな格差が生じてしまっています。 

 

立花孝志:昨年の総裁選で、小泉進次郎さんが「雇用の流動化」を訴えていましたね。あれは非常に的を射た発言でした。だからこそ、まさか進次郎さんが総裁にならないとは思いませんでした。 

 

 なぜ自民党は進次郎さんを選ばなかったのか、未だに疑問です。もしかすると、国民も選挙を軽視していたのかもしれません。彼の提案は、現実をしっかりと見据えたものだったと思います。 

 

竹中平蔵:そうですね。現在の制度を変えようとすると、多くの人が非常にネガティブな感情を抱きます。しかし、長期的な視点に立てば、変革は避けられないものなのです。 

 

立花孝志:他の候補者たちは、とりあえず総理大臣になりたかっただけ、という印象がありますね。 

 

 例えば石破さんについても申し訳ないですが、「総理になりたい」という思いが先行していて、「総理になって何をするのか」が明確ではなかったように思います 

 

竹中平蔵:おっしゃる通りです。本来、総理大臣というのは何かを成し遂げるための手段であるべきですよね。 

 

立花孝志:小泉進次郎さんは、本当のことを言ったからこそ、国民にとって耳の痛いことでもしっかりと伝えていました。一方で、他の候補者は耳障りの良いことばかりを並べ、あえて厳しい現実には触れなかった。その違いが、政治の質を決定づけているのではないかと思います。国民のリテラシーを向上させなければ、国力はどんどん衰退していくでしょう。 

 

 

竹中平蔵:確かにそうですね。ところで、立花さんにお伺いしたいのですが、政治資金の問題については、どのようにお考えでしょうか? 

 

立花孝志:正直なところ、あの程度の問題は目をつぶるべきだと考えています。うちの党では、そのようなことは一切行いません。むしろ、ネットを活用して資金を調達することが可能であり、選挙を通じて収益を生み出せる仕組みを整えています。 

 

 しかし、20年前は何千万円どころか、億単位の金額が動いていました。現在では、年間で数百万円、場合によっては数十万円のレベルです。一番多い人でも、3年から5年で5,000万円ほどです。それを考えると、現在の政治資金問題に対する評価は、あまりにも厳しすぎるように思います。 

 

ーー国民の評価というより、メディアの報道が厳しすぎるということでしょうか? 

 

立花孝志:そこが問題なんですよね。メディアは視聴率を気にするため、政治家が少額の資金問題で追及され、困っている様子を報道することで視聴者を引きつけようとします。 

 

 つまり、メディアの姿勢は、国民の関心を反映しているとも言えます。政治家がカメラに追いかけられ、逃げ回る姿を見て楽しんでいる人もいるのではないでしょうか。 

 

竹中平蔵:私は、根本的な議論が不足していると考えています。例えば、フジテレビのガバナンスの問題が議論されていますが、日本では政党のガバナンスを規定する法律が存在しないことが大きな課題です。企業には会社法、宗教法人には宗教法人法がありますが、政党に関する法律——いわゆる「政党法」はありません。 

 

 政党の設立や解散、党首の選び方などのルールが明確に定められていないのです。例えば、自民党の総裁選では、党員の投票が半分、議員の投票が半分で決まり、決着がつかない場合は、ほぼ国会議員の投票だけで決める仕組みになっています。しかし、これは一体誰が決めたルールなのでしょうか?本当に公平な方法なのでしょうか? 

 

 現在調査中ですが、世界の多くの国では、党員がこれほど影響力を持たないケースは少ないようです。例えば、自民党の党員数は約100万人ですが、アメリカの民主党、共和党はともに数千万人の党員を抱えています。 

 

 もし自民党の党員数が100万人から1,000万人に増えれば、党費だけで政治資金の問題は大きく改善されるでしょう。さらに、党員が党首選びに関与できる仕組みになれば、より多くの国民が政治に関与しやすくなると思います。 

 

 政治家が国民にとって遠い存在であり、「あの人たちは勝手にやっている」と思われているからこそ、小さな政治資金問題が大きなスキャンダルになってしまうのです。 

 

立花孝志:政治家は、メディアからの批判に対して弁明できる力を持つべきです。YouTubeやSNS、ホームページなどを活用し、「このような批判があるが、実際はこうだ」と即座に発信できるスキルが求められています。しかし、日本の国会議員には、その能力が欠けている人が多いように思います。というより、何かしらの疑惑があった際に、弁明できないような人をあえて選んでいるようにも感じます。このような風潮を変えなければならない時期に来ていると思います。 

 

 

ーー政党法の制定について、何か動きはあるのでしょうか? 

 

立花孝志:今のところ、そのような動きは聞きませんね。現在、自民党と公明党が最大会派として与党を形成している以上、自分たちに不利になるような法律を制定することは考えにくいでしょう。 

 

竹中平蔵:11970年代の大平内閣の時、新自由クラブとの政策協議の中で、4つの合意のうちの1つとして「政党法を制定する」という話がありました。しかし、結局実現しませんでした。それでも、70年代にはこうした議論が行われていたのは事実です。 

 

 しかし、今の政治家たちは目先の選挙対策に追われ、制度改革についての議論はほとんど行われていません。これは、日本経済がなかなか浮上できない大きな理由の一つだと感じています。 

 

 だからこそ、私は立花さんの発信力を活かして、他の政党が言えないような政党法の整備やベーシックインカムのような議論を広めていただければ、日本の政治を変えることができるのではないかと思います。 

 

立花孝志:そうですね。私もベーシックインカムには賛成です。福祉制度をしっかり整え、食べていけない人々の生活を支えつつ、「働きたい人は働く」「働きたくない人は無理に働かなくてもよい」という社会を目指すべきだと考えています。 

 

みんかぶマガジンTV 

 

 

 
 

IMAGE