( 274956 )  2025/03/15 06:24:28  
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悩ましいカフェの座り方をめぐる問題 

 

 さまざまな用途で重宝されるカフェ。休憩や仕事だけでなく、昨今は訪日外国人も多く訪れることから、特に都市部で混雑が目立つようになった。そんなカフェでは、しばしば「席の座り方」をめぐり、価値観の違いがあらわになる。 

 

 先日、空席を探して店内を見回していた30代女性・Aさん(ウェブデザイナー)は、とある光景に「怒りをおぼえた」という。友人同士らしい女性2人が、2人用テーブルをつなげて横並びで座っていたのだ。「友人同士なら、向かい合って座ってほしい。そうしたら、テーブルが一つ空くのに……」と内心憤ったが、「空けてください」とは言えなかったという。 

 

 横並びはアリなのかナシなのか。利用者だけでなく、店側の話も含め、座り方の価値観を探った。 

 

 広告代理店社員の40代男性・Bさんは、Aさんと同意見だ。作業や仕事の打ち合わせでカフェはよく利用するが、「4人分の席を2人で使う客が気になります」と語る。 

 

「たとえば、大きな4人用のテーブルに2人が座っていたら、それは先着順だし仕方ないと思うんですけど、混んでいる時に2人用のテーブルをくっつけて2人とも同じ側に座られると、一つテーブルを空けてと言いたくはなります。カップルとか女性同士、学生と思しき男性同士など、さまざまな組み合わせでやっているのを見ますが、混んでいるときは配慮してほしいですよね」(Bさん) 

 

 横並び派の言い分も聞いてみよう。IT企業に勤務する20代女性・Cさんは、向かい合うのは「面接みたいでどうも好きになれない」と語る。 

 

「向き合って座るのは、かしこまっている感じがして緊張する。その点、横並びは気楽です。学校で隣の人と席をくっつける感覚に似ているかもしれません。距離が近いので、スマホで写真や動画を一緒に見やすいし、話し声が小さくて済むし、聞き取りやすいのもメリット。片側がソファでもう一方が椅子のとき、2人ともソファ側でゆったり座れますし」(Cさん) 

 

 2人で4席を使う横並びは、「席の独占」という指摘もあるが、Cさんは「気にしたことがなかった」と驚いた様子で語る。 

 

「確かに何度か、他の客から視線を感じたことがありましたが、そういうことだったんですね……。くっつけるタイプの席でも、もとから4人掛けのテーブル席でも隣同士で座っていて、ごく当たり前のことだと思っていました。でも、そもそも1人で2人分の席を利用する人もいるんだから、それと同じじゃないですか?」(Bさん) 

 

 

 店側はどのように感じているのだろうか。カフェやファミレスで勤務経験があり、現在も飲食店で働く50代女性・Dさんは、横並びする人の属性の変化を指摘する。 

 

「以前は横並びといえば、親御さんがお子さんをお世話するためという目的が多かったように思います。近年は友人、カップル・夫婦など関係性を問わず、横並びをする方たちがいます。隣同士のほうが話しやすいようですし、話をしないまでも、一緒にパソコンやタブレットを並べて仕事や勉強をするケースもよく見かけます。あと、多いのは自撮りをする人たちでしょうか。同じ側にいた方が撮影しやすいのでしょう。“絶対に横並び派”もいて、対面2人掛けの席を案内したら、『隣同士で座れないならいいです』と断られたことが何度かあります」(Dさん) 

 

 横並び派が密かに増えつつあるなか、「店員の案内も大切になってきた」とDさんは言う。 

 

「通常時は特に影響はありませんが、やはり困るのは混雑時です。本来なら座れる方が座れないことになりかねません。お客様から、『あそこの席空けられると思うんですけど……』と言われて、テーブルを空けていただくようお声がけをしたこともあります。たくさん空席があっても店員が『こちらにどうぞ』と座席を案内するのは、後々のトラブルを生まないためなんです」(Cさん) 

 

 混雑状況や店側のルールに気を配り、それぞれが柔軟に対応したいものだ。 

 

 

 
 

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