( 275216 )  2025/03/16 06:02:13  
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candy candy/shutterstock.com 

 

2024年12月25日の厚生労働大臣の会見で、生活保護の「生活扶助」に対する特例加算を増額する方向性が示されました。 

 

生活保護受給者にとっては、受給額の増額につながる見直しです。 

 

本記事では、生活保護の「生活扶助」の引上げについて解説します。 

 

生活保護制度の概要や引き上げによる影響などについても紹介しますので、新年度に向けて確認しておきましょう。 

 

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最初に、生活保護制度と生活扶助、特例加算の概要について解説します。 

 

●生活保護制度とは 

生活保護制度は、生活困窮者に対し必要な保護を行い、日本国憲法第25条で定められた「健康で文化的な最低限度の生活」を保障するものです。 

 

申請によって、世帯単位で最低限度の生活維持のための給付金(以下「保護費」)を国が支給します。 

 

保護費の金額は次の通り計算します。 

 

 ・保護費=世帯単位の最低生活費-世帯収入 

最低生活費は、居住地や世帯人員の人数・年齢などにより、厚生労働大臣が定める基準で計算します。 

 

具体的には、次の8つの扶助額を計算し、その合計金額から収入を差し引いた額が世帯の保護費として支給されます。 

 

 ・生活扶助:日常生活費 

 ・住宅扶助:家賃 

 ・医療扶助:医療費 

 ・介護扶助:介護サービス費 

 ・出産扶助:出産費用 

 ・教育扶助:義務教育費 

 ・生業扶助:就労支援費 

 ・葬祭扶助:葬祭費用 

また、世帯収入は年金や各種手当(児童手当など)、親戚からの援助などを含めて計算します。 

 

●生活扶助とは 

生活扶助とは、次の日常生活に必要な費用を賄うために支給する生活保護費のひとつです。 

 

 ・食費 

 ・被服費 

 ・光熱費 

 ・その他、日常生活に必要な費用 

生活扶助の金額(生活扶助基準額)は、居住地や世帯人員の人数・年齢などにより計算します。 

 

また、世帯人員の特性(障害の有無)や家庭状況(児童の有無や母子家庭)に応じて加算もあります。 

 

●特例加算とは 

2023年10月に生活保護基準が改定され、臨時的・特例的な対応として生活扶助の特例加算が設けられました。 

 

新型コロナウイルス感染症や物価上昇などによる生活への影響を考慮したものです。特例加算額は、世帯人員1人当たり月額1000円です。 

 

特例加算は2025年3月31日までの限定措置で、2025年4月1日以降については社会・経済の情勢に応じて改めて検討されることとされました。 

 

ここまでは、生活保護制度と生活扶助の概要、最低生活費の計算方法などについて解説してきました。 

 

次章では、2025年4月に実施予定の生活扶助基準額の引上げについて解説します。 

 

 

2025年4月の生活扶助基準額の引上げ内容と、その影響について解説します。 

 

●引上げは1人当たり月額500円 

2025年度の社会保障関係費が議論されていますが、生活保護制度については2025年4月に次の対応が実施される予定です。 

 

 ・2025年度と2026年度の2年間の臨時的・特例的な対応として、「特例加算を月額1500円」とする 

 ・加算を行ってもなお従前の基準額から減額となる世帯は、従前の基準額を保障する 

2024年度までの特例加算は1000円であるため、生活扶助基準額は月額500円の引上げとなります。 

 

特例加算は世帯人員1人当たり500円アップとなり、世帯で見ると3人家族なら1か月1500円、4人家族なら2000円増額されることになります。 

 

●生活扶助基準額の引上げによる影響 

2024年12月11日、日本弁護士連合会では生活保護費に関して「物価高騰を踏まえた大幅引上げを求める会長声明」を発表しました。 

 

同声明では、物価上昇による生活保護者への影響などについて次の通り述べています。 

 

 ・消費者物価指数は2020年以降連続して上昇し、2020年を100とした2024年10月の消費者物価指数は109.5%(光熱・水道費は111.1%、食料費は120.4%) 

 ・低所得者の家計に占める割合の高い光熱・水道や食料にかかる費用の著しい高騰が、生活保護利用世帯の家計を直撃している 

 ・日本弁護士連合会の「全国一斉生活保護ホットライン」には、「保護費が低すぎて生活できない」などの相談が多数寄せられている。 

 ・同じように物価高騰に直面する諸外国の公的扶助基準(直近2年間)は、ドイツは12%(2023年)、韓国は7%(2023年)、14%(2024年)、スウェーデンは8.7%(2023年)、8.9%(2024年)と大幅に引上げている。 

2025年4月の生活扶助基準額の引上げは世帯人員1人当たり月500円と少額で、物価高騰が続く中、生活保護者の生活水準は低下せざるを得ない状況と言えるでしょう。 

 

 

2025年4月の生活扶助基準額は、世帯人員1人当たり月500円引上げられる予定です。 

 

具体的には、2023年10月から支給されている月額1000円の特例加算が1500円にアップします。 

 

ただし、引上げ幅は少額で物価の上昇で生活保護者の生活は更に厳しくなることが予想されます。 

 

国の財政状況が厳しい中で保護費の増額を模索するとともに、生活保護者が自立するための効果的な支援策が必要となるでしょう。 

 

 ・厚生労働省「生活保護制度」 

 ・厚生労働省「福岡大臣会見概要(財務大臣折衝後)」 

 ・日本弁護士連合会「来年度の生活保護基準引下げを見送り、物価高騰を踏まえた大幅引上げを求める会長声明」 

 

西岡 秀泰 

 

 

 
 

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