( 276241 ) 2025/03/20 04:01:21 0 00 武岡隆文氏(安芸高田市議会のYouTubeより)
【全2回(前編/後編)の前編】
1月、地域政党「再生の道」を旗揚げした石丸伸二氏(42)。政策を掲げぬ特異な方針を示しつつ、参院選を視野に入れると大見得を切る。一方、彼に舌鋒鋭く批判され憔悴(しょうすい)した市議は死去し、今年、その妻が自死を遂げていた。一体、何があったのか――。
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石丸氏を一躍有名たらしめた発言の一つに「恥を知れ! 恥を」というものがある。
「これは、彼が広島県安芸高田市の市長だった2022年6月、市議の武岡隆文氏(66)=当時=が議場で居眠りしていた件を念頭に、議会で発したセリフです。市議会を旧態依然たる抵抗勢力と見なしていた彼は、テレビドラマのヒーローよろしく、たびたびこうした過激な言葉で市議らに批判を浴びせていた。結果、ネットで耳目を集めることに成功。昨夏の東京都知事選に打って出るに至ったのです」(全国紙記者)
石丸氏は都知事選でSNSを駆使し、一大ブームを巻き起こす。165万超もの得票は蓮舫氏をしのぎ、小池百合子氏に次ぐ2位。来たる6月の東京都議選では、自ら率いる地域政党「再生の道」から最大60人の候補者を擁立するもくろみという。
「SNS選挙の寵児としての勢いはなお健在。今月も意気揚々とネットメディアに出演しています。“日本や世界の根本的な問題に新しい視点を提供”するとうたう動画メディア『ReHacQ』の企画ではドバイに赴き、満面の笑みでスカイダイビングに挑む様子を披露している」(同)
だが一方で、著名人に教育関連の話を聞くユーチューブチャンネル「トマホークTomahawk」に出演した際の発言が物議を醸してもいる。
「動画の公開日は3月2日。そこで石丸氏は、武岡氏の居眠りを批判した理由について“これを許してはいけないから、どう始末してやろうかと思い、うまく使うことにした”と述べ、出演者と一緒に笑い飛ばしたのです。ただ、思い返せば武岡氏は、石丸氏のターゲットとなったことで誹謗中傷にさらされた上、すでに亡くなった人。彼は故人に向けて“始末”という言葉を使い、議場での一件を“うまく”利用したと得意気に語ったわけです」(前出の記者)
最初に石丸氏が武岡氏への指摘に及んだのは、安芸高田市長に就任して間もない20年9月のこと。自身のSNSに〈本日午前、議会の一般質問が行われている中、いびきをかいて、ゆうに30分は居眠りをする議員が1名〉と書き込んだのだ。
「これに武岡氏は、居眠りの原因について“睡眠時無呼吸症候群で軽い脳梗塞になっていたため”と弁明し、診断書のコピーを石丸氏に提出しました。しかし、彼は書類を一顧だにせず、その後も繰り返し武岡氏を名指しで指弾。説明責任を問い続けたのです」(前出の記者)
生前の武岡氏を知る安芸高田市議は、
「武岡さんへの誹謗中傷が激化したのは、22年6月に石丸氏が“恥を知れ!”と発言してからのことです」
と、振り返る。
「石丸氏の執拗(しつよう)な追及を受け、武岡さんはその月の末に会見を開きます。冒頭、世間を騒がせたことに対しておわびを述べましたが、改めて謝罪を求められると、これを断りました。“なぜ、病気なのに謝らなくてはいけないのか”という解せぬ思いがあったからでしょう」(前出の市議)
だが、会見でのこのやりとりは、半月ほど前の石丸氏の「恥を知れ!」発言とともに取り上げられることになり、ネットで拡散していった。
「以降、武岡さんの自宅にはひっきりなしに嫌がらせの電話がかかってきたり、注文していない品々が着払いで届いたりするようになりました。だから、彼は自宅に防犯カメラを取り付け、外出先からも訪問者の姿をスマホで確認していた。毎日、おびえながら過ごしていたのです。留守番電話に“殺すぞ”というメッセージが残されていたこともあったそうです」(同)
武岡氏は日に日に顔色が悪くなっていったという。
「精神的に追い詰められ、酒を飲むとすぐに吐くようになりました。だんだんと食事ももどすようになり、23年の秋くらいには“食道が狭くなって飲み込むことが難しい”と言っていた。その年末に救急車で運ばれた後、入退院を繰り返し、年が明けて1月30日、68歳で亡くなったのです」(前出の市議)
そして今年、後を追うように武岡氏の妻が自ら命を絶った、という情報が。安芸高田市の武岡夫妻の住まいを訪ねたところ、
「ええ。何が原因でそのようなことをしたのかは、分かりませんが……」
と、実家に帰っていたご子息が実母の死について語ってくれた。
「警察の方いわく、亡くなったのは1月26日の夜だろうと。翌日、母が仕事に来ず心配した職場の方が自宅に出向いたことで発覚し、警察から私に連絡がありました」(同)
後編【「父の葬儀を執り行った頃から、母に異変が」 石丸伸二氏に“恥を知れ”と批判された市議の妻が自死… 息子が明かす「死の前日に送られてきたLINE」とは】では、武岡夫妻のご子息が明かした、死の直前の母親の“異変”について報じる。
「週刊新潮」2025年3月20日号 掲載
新潮社
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