( 276611 )  2025/03/21 06:02:32  
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投げ銭の沼から抜け出せない人たちも(イメージ) 

 

 3月11日、動画配信中の20代女性配信者が東京・高田馬場の路上で刺殺された事件。逮捕された40代の男は「月に10万円ほど投げ銭をした」と供述しており、改めて「投げ銭」という存在に注目が集まっている。 

 

 投げ銭とは、ライブ配信の視聴者がオンライン上で配信者に金銭やギフトを送る行為。代表的な例はYouTubeの「スーパーチャット」で、視聴者が設定した金額とコメントを配信者に送ることが可能だ。こうした投げ銭は、配信者に感謝や応援を伝えられる反面、視聴者が多額の金額を投じ続けるという危うさも潜んでいる。 

 

 SNSや大手質問投稿サイトなどで、「投げ銭がやめられない」という投稿が散見されることからも、決して珍しいことではないうえに、問題の深刻さを自覚する人も多いことがうかがえるが、それではなぜお金を“投げ”、さらにはやめられなくなるのか。実際に“投げ銭の沼”にハマった男性たちの声を追った。 

 

「女性に頼られるのがうれしいから」と口を開いたのは、メーカー勤務の30代男性・Aさん(埼玉県在住)だ。収入は、ひと月の手取りで17万円。「“ガチ恋”ってわけではないです」と言いつつ、複数の推しへの投げ銭の合計額が20万円ほどにもなる月もあるという。「僕は推しには甘いんです」と頬を緩める。 

 

「推しが困っている時、誰よりも僕が助けたい。投げ銭を始めたのは、彼女が“今月はお金が厳しい”と言っていたので、『○○を買うときの足しにしてね』という感じで、“○○代”としてお金を投げたのが始まりです。少額でもすごく喜んで僕の名前も呼んでくれたのがうれしくて、僕のお金が役に立つなら……と、どんどん額が膨らんだ感じです」 

 

 自分の生活費が圧迫されるようになったAさんは、最近、副業に勤しむようになったという。 

 

「“投げ銭代”を稼ぐため、今はフードデリバリーの副業をしています。推しにはいいものを食べてほしいんです」(Aさん) 

 

 

 支援や期待の気持ちを抱く人もいれば、投げ銭が「苦痛になっている」人もいる。「最初は彼女の存在が希望でしたが、今はただただ苦痛の原因になっています」と胸中を明かすのは、一昨年IT企業を退職し、今は実家暮らしの40代男性・Bさん(千葉県在住)だ。 

 

 Bさんが配信者やVTuberに投げ銭するようになったきっかけは、「ぽっかり心の隙間が空いたから」だという。 

 

「3年ほど前、離婚したうえに会社も退職し、転職先も決まらないという人生のどん底に陥りました。実家に戻り、引きこもりのような生活を送っているとき、唯一の安らぎで癒しが推しでした。最初は“感謝”のつもりで、お金を投げていました。でも、どんどん自分でこの額では、『彼女は満足してくれない』『見捨てられる』と勝手に思い込んでしまい、月15万円くらい使ったことがあります」 

 

 実家とはいえ、定職に就いていないため、資金は限られている。Bさんは「親のクレジットカードに手を出したことがあります」と振り返る。 

 

「いつしか配信が生活の一部になり、投げ銭も欠かせないものになりました。というのも、配信で投げ銭する人がいると、イライラするんです。俺のほうが彼女を支えていて、だから俺のほうが感謝されてしかるべきだという気持ち。我慢できずに親のカードを使ってしまった時は、親にバレて、めちゃくちゃ怒られました」(Bさん) 

 

 これまで、計280万円あった貯金をすべて投げ銭に費やしたBさん。現在は日雇いのアルバイトをしてはせっせと投げ銭をする生活だという。当然、「配信者のことが大好き」で愛ゆえの行動かと思いきや、意外にも「推しのことが好きなのかわかりません」と語る。それでも投げ銭を繰り返してしまう理由として、Bさんは、「視聴者側の承認欲求なのかも」と自己分析する。 

 

「アイドルにこちらの存在を認識してもらうのはなかなか難しいけど、配信者なら身近。キャバクラのようなリアルのお店に行く勇気はないけど、画面越しで愛でる分にはハードルが低いし、お金を投げれば確実に認識してもらえる。 

 

 ただ、だんだん『本当に推しのことが好きなのかな?』と自問自答するようになってきたのも事実で……。だって、推しの何が好きかと言われたら、顔とか声ぐらいしかないわけです。不安になるたびに投げ銭をして、自らの存在を認めてもらうことで、安心感を得ている気がします」(Bさん) 

 

 推しへの応援は自らの活力につながる側面がある一方で、依存しすぎるとマイナスの影響を及ぼしかねない。投げ銭をする場合は、くれぐれも自分の収入の範囲内で無理なく行うことを考えるべきだろう。 

 

 

 
 

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