( 277416 ) 2025/03/24 06:31:42 0 00 (※写真はイメージです/PIXTA)
マイホーム購入にあたって多くの人が申し込む「住宅ローン」。審査に落ちても基本的に銀行側は否決理由を教えてくれません。しかしなかには、不動産業者などが「ヒント」をくれることもあるようで……。本記事では、田川さん(仮名)の事例とともに、住宅ローン審査に関わる信用情報についてFP事務所MoneySmith代表の吉野裕一氏が解説します。※個人の特定を避けるため、事例の一部を改変しています。
現在、36歳の田川陽一さん(仮名)は同い年の妻・由香さん(仮名)と小学生の子ども2人の4人で地方で賃貸住宅に暮らしていました。陽一さんは大手企業に勤め、月収は70万円。妻の由香さんはパートタイムで事務職をしており、扶養内に収まるように働いています。子ども2人も大きくなり、現在の住まいも手狭に感じてきました。そこでマイホームの購入を検討していたところ、気に入った物件が見つかります。
見つけた物件は駅近くの高層階マンションの上層部、価格は諸費用込みで6,500万円です。購入を決めた田川さんは早速、住宅ローンに申し込みました。借入金は5,500万円、金利は変動金利で0.5%。借入期間は35年という条件で、団体信用保険はがんでも保証があり、適用金利の0.1%上乗せで加入できるというものです。借り入れ当初は月15万円の返済を検討していました。
一般的に住宅ローンの返済比率(年間の返済額を年収で割った割合)は20%〜25%が適切といわれます。田川さんの返済比率は約25%でしたが、妻もパートに出ているし、今後の昇給もあるだろうからと少し高めでも問題ないと思っていました。
ところが、仮審査を受けたあと、担当の行員から想像もしていなかった連絡が。
「今回は審査が通らず、申し訳ありません。住宅ローンの本審査はお断りします」
予想外の展開に電話口で言葉を失いました。
住宅ローンの借り入れの際に、金融機関によっては年収による返済比率の上限を設けています。
年収400万円未満であれば35%、400万円以上であれば40%と決められていることが多いようです。田川さんの場合は、前述したように返済比率は25%程度だったので問題ありませんが、銀行から問われている返済比率は、住宅ローンに限ったことではなく、ほかの借入金の返済額も含めた返済比率になります。
田川さんは仮審査を申し込んだときに、担当の行員にほかに借入金はないかと聞かれました。田川さんは、クレジットカードの返済や車のローンもありましたが、クレジットカードの返済は関係ないと思い、現在、車のローンが月に5万円あることを行員に告げたそうです。実際、現在使用しているクレジットカードにおける毎月の支払いの返済額そのものは住宅ローンの返済比率に影響しません。この点では田川さんに問題はありませんでした。一方で、クレジットカードの利用で分割払いやリボ払いがある場合、返済額に加算する必要があるため注意が必要です。
問題はないと思っていた田川さんは、行員にローンを断られた原因を尋ねましたが教えてもらうことはできませんでした。それならばと仲介していた不動産業者にしつこく食い下がったところ、遠回しなことをいわれたのです。
「リボ払いはなくてもですね……」
不動産業者の指摘によって思い当たることが…
不動産業者の指摘によって、田川さんはクレジットカードに関して別の心当たりを思いつきました。それはこれまでに何度か口座の残高不足でクレジットカードの引き落としがうまくできず、請求書が送られてきたあとに支払いをしていたことです。それは給与の振込口座とは別に、振込請求のために指定していた口座からの引き落としでした。請求書の期限内には支払いをしていたため、大した問題ではないと高を括っていましたが……。
うっかり支払いが遅れただけでも信用情報は傷つく
田川さんが懸念していたとおり、今回の審査に落ちた原因はクレジットカードの残高不足が影響したものと推測されます。
住宅ローンの審査では、勤めている企業や年収、勤続年数、年齢などが重視される傾向にあるとはいえ、それだけではありません。信用情報に事故情報が登録されることを俗に「ブラックリストに載る」といいます。ブラックリストに載るのは、延滞や返済不能になった場合と考える人は多いと思います。しかし、その認識は甘いです。
今回の田川さんのケースのように、支払い能力がありながらうっかり残高不足になっただけでも影響は出ます。借入金をするということは滞りなく返済ができるかどうかという側面も確認されるのです。単なるうっかりだから問題ないだろうとは思わず、期限内に支払いを行うよう気をつける必要があります。
この事故情報はずっと影響するのかというと、そうではなく、5年が過ぎれば情報は削除されます。今回の場合は、ほかに問題がなさそうだったので、支払いが数回遅れたことが信用情報に事故情報として登録されていたと思われます。
信用情報に事故情報が登録されているか確認することも可能で、日本信用情報機構(JICC)※に開示請求をすることができます。スマートフォンで申請することが可能で、スマートフォンが利用できない方は郵送での手続きとなり、1,000円〜1,300円の手数料が必要となります。
最近ではキャッシュレス決済が当たり前のようになってきて、利用する頻度も増えていると思います。自分の使った額を把握するように、クレジットカード会社のホームページやアプリなどを確認して、残高不足にならないように心がけることも大切です。
引落額が確定したときにメールでお知らせをするというサービスを行っているところも多いと思いますので、通知がきたときにも金額を把握する癖をつけておきたいですね。
<参考>
※ 株式会社日本信用情報機構
https://www.jicc.co.jp/
吉野 裕一
FP事務所MoneySmith
代表
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