( 277541 )  2025/03/25 03:59:27  
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福岡地方裁判所 

 

 福岡市の大型商業施設で2020年、客の女性(当時21歳)が当時15歳だった男(19)(殺人罪などで服役中)に刺殺された事件を巡り、遺族が男とその母親に約7800万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、福岡地裁は24日、男に約5400万円の賠償を命じた。上田洋幸裁判長は男の賠償責任は認めたが、男の母親については監督義務違反を認めず、請求を棄却した。 

 

 刑事事件の確定判決によると、事件当時15歳だった男は20年8月、商業施設で面識のない女性の後をつけ、女子トイレで、女性の首などを包丁で何度も刺して殺害するなどした。殺人罪などに問われた男に対し、福岡地裁は22年7月、懲役10年以上15年以下の不定期刑を言い渡し、その後確定した。 

 

 男は小学3年の頃から他の児童らへの暴行などの問題行動を繰り返し、児童自立支援施設や病院を転々とし、少年院に入った。20年8月に仮退院することになったが、母親から身元引き受けを拒まれた。更生保護施設に入ったものの1日で抜け出し、その翌日に事件を起こしていた。 

 

 女性の遺族は23年3月に提訴。訴訟では、男の母親について、原告側は「保護司らと十分に連携をとらなかったり、仮退院後の受け入れを拒否したりしなければ、今回の殺人事件のようなことは回避できた可能性が高い。他人に危害を加える危険性も予見できた」として監督義務違反があったと主張。これに対し、母親側は男が長期間、児童自立支援施設などに入所していたことを踏まえ、「予見できず、指導、監督は施設によって行われており、監督義務違反もなかった」と反論していた。一方、男は、事件を起こしたことについて認めた上で損害額などについて争った。 

 

 この日の判決では、男について完全責任能力があるとして賠償責任を認めたが、母親については「危害を加えるとの予見は困難で、監督義務違反があったとは認められない」と述べた。 

 

 事件を巡っては、女性の母親は少年院が適切な矯正教育を怠ったなどとして、今回の訴訟とは別に国に損害賠償を求める訴訟も23年3月に起こしている。 

 

 

 
 

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