( 277651 ) 2025/03/25 06:05:14 0 00 2024年12月末にオープンした「阿蘇くまもと空港店」。空港内を移動する人の目を引く(記者撮影)
「こんなところにチョコザップが!」
これから飛行機に搭乗するのだろうか。キャリーケースを引いて歩く家族連れの女性が思わず声を上げていた。
「阿蘇くまもと空港」の旅客ターミナルビルに直結している商業棟の1階。飲食店などが並ぶ一角にRIZAPグループ(ライザップ)の低価格ジム「chocoZAP(チョコザップ)」の店舗がある。2024年12月25日にオープンした。
台湾の半導体受託製造最大手TSMCが熊本に進出するなどし、空港利用者の増加が見込まれることから出店した。チョコザップ初の空港出店は新たな取り組みとして各種メディアで取り上げられた。
今なお話題を振りまく一方で、チョコザップの出店スピードは急激に落ちている。2024年10〜12月の出店数は78店舗と、前年同期比で6割減となる。年間でも2023年度の904店舗に対し、2024年度は400店舗台へと減っている。
■「服装自由」で差別化したが…
チョコザップは、月額2980円(税別)という低価格と、2年半で1782店舗という急速な出店で注目を集めた。会員数は130万人超を有するまでになったが、思わぬ”2つの誤算”が生じてしまった。
「当初計画では想定しきれていなかった、追加のランニングコストが膨らんだ」。ライザップの瀬戸健社長は、昨年前半までのチョコザップを振り返ってそう話す。
チョコザップは服装自由で靴の履き替えが不要など、気軽に利用できる。ジム初心者に受け入れられたのは狙い通りだったが、ここで1つ目の誤算が生じた。
普段着のような服から出る繊維くずの量は、スポーツウェアより多い。繊維くずは静電気でランニングマシンの走行ベルトに付着し内部で詰まって、マシンの故障や不具合の一因になった。
靴底が削れて出るちりの量も一般的なジムより多い。チョコザップではビジネスシューズで利用する会員もいる。トレーニングシューズより靴底が硬く摩擦で削れやすい。
2つ目の誤算が、追加コストの発生だ。エアコンやトイレなどの設備メンテナンス頻度が想定をはるかに超えた。エアコン故障などは緊急を要するため、割り増し費用を払って修理した。猛暑となった昨年夏はエアコン修理に月1億円を投じたという。
フィットネスマシンの故障対応では、二度手間、三度手間が生じていた。無人店であるチョコザップでは、会員から故障の情報が寄せられるが、情報の精度にはばらつきがある。運営スタッフが現地に行っても、最適な部品や修理するスキルを持ち合わせていないといったことが起きていた。
■無駄を減らして肉体改造
これらの問題を受けて、チョコザップは大量出店と広告を抑制し、コスト構造の見直しを図っている。補充が追いつかなかったドリンクバーサービスは終了し、年間3億〜4億円のコスト削減を見込む。店舗備品を自社配送することも試行中だ。
フィットネスマシンの故障対応では、自社開発の故障しにくいマシンの導入を進めている。全店舗のマシン総台数に対する故障と不具合のあるマシン台数の割合は、昨年11月時点では6.1%だったのが足元では1%を下回っている。
「いろんな要因が重なっているとはいえ、無駄がすごくあった」と瀬戸社長は自省する。2025年度も出店と広告は抑制する見込みだが、コスト構造の改善により、チョコザップ事業は黒字化が見込まれている。理想のあるべき姿にチョコザップを肉体改造できるのか。まさに今が分水嶺だ。
本記事はダイジェスト版です。詳報記事(有料会員限定)は「東洋経済オンライン」のサイトでご覧いただけます。瀬戸健社長主催の「あるべき姿会議」の目的や、「チョコザップ事業の評価」を語る社外取締役インタビューなどを取り上げています。
緒方 欽一 :東洋経済 記者
|
![]() |