( 277924 )  2025/03/26 06:46:26  
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2025年3月9日に帝国データバンクが発表した調査によると、日本の経済状況は大事な従業員の退職による「従業員退職型」の倒産が過去最多に達している。

特にIT産業などのサービス業界では人手不足が深刻で、従業員を維持できずに倒産するケースが増加している。

この問題は、待遇改善を求める声や賃上げの要求が高まり、中小企業が対応に苦しむことから生じている。

今後、「賃上げ難倒産」が増加する可能性も指摘されており、企業は労働環境改善や会社制度見直しなどで従業員の要望に応える姿勢が重要とされている。

(要約)

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日本経済の先行きは?(写真はイメージ) 

 

「大事な従業員に辞められちゃった......。もう会社やっていけない!」 

 

 こんな「従業員退職型」の倒産が過去最多に達していることが、帝国データバンクが2025年3月9日に発表した調査「『従業員退職型』の倒産動向」でわかった。 

 

 特に最先端のIT産業などサービス業界に多い。いったい、どういうわけか。調査担当者に聞いた。 

 

■「待遇改善をしないことへのリスク」が高まる 

 

 人手不足が深刻となるなか、従業員を自社につなぎとめることができずに、経営破たんするケースが急増している。2024年に判明した人手不足倒産342件のうち、従業員や経営幹部などの退職が直接・間接的に起因した「従業員退職型」の倒産が87件判明した【図表1】。 

 

 多くの産業で人手不足感がピークに達した2019年(71件)を上回り、集計可能な2013年以降で最多を大幅更新した。業種別にみると、最も多いのが「サービス業」(31件)で全体の35.6%を占めた【図表2】。特に多いのがソフトウェア開発などIT産業のほか、人材派遣会社、美容室、老人福祉施設など、いずれも人材の定着率が他産業に比べて低い業種。 

 

 次に多いのが「建設業」(18件)で、設計者や施工監理者など、業務遂行に不可欠な資格を持つ従業員が退職したため、事業運営が困難になった企業が目立つ。また、「製造業」や「運輸・通信業」でも初めて年間10件を超えた。工場作業員やドライバーの退職で事業がままならなくなったケースが相次いだ。 

 

 帝国データバンクではこう分析している。 

 

「長期化する物価上昇に苦慮する従業員から賃上げを求める声が強まっている。しかし、収益力が乏しく『無い袖は振れない』中小企業も多く、賃上げに対する対応の二極化が進んでいる。待遇改善に消極的な経営に嫌気がさした役員や従業員が退職するなど、『待遇改善をしないことへのリスク』が中小企業を中心に高まっている。 

   

  転職市場を通じて賃上げによって良い人材を高給で囲う動きが広がるなか、満足に賃上げされないことを理由に従業員が辞めて経営が行き詰まる『賃上げ難倒産』が、2025年に増加する可能性が高まっている」 

 

 

 J‐CASTニュースBiz編集部は、調査を担当した帝国データバンク情報統括部の飯島大介さんに話を聞いた。 

 

――初歩的な疑問で恐縮ですが、従業員退職型倒産を「従業員や経営幹部の退職に起因する倒産」とありますが、普通の人手不足倒産や、よくある後継者難倒産とはどこが違うのでしょうか。 

 

飯島大介さん 通常の人手不足倒産とは異なり、「社内のキーマン」が退職したことで会社経営そのものが行き詰った事例になります。営業全般をつかさどっていた人物や、技術面・スキキル面でほかの人間に代替ができない人物の退職などを指しています。 

   

  たとえば、建設業でいえば、一級建築士とか一級施工管理技士といった国家資格を持つ人間がいないと、工事そのものができなくなります。自動車整備業でも一級整備士の資格をもつ従業員に辞められたり、IT業界のソフトウェア開発業でも多くの資格を持つ優秀なシステムエンジニアに辞められたりすると、仕事の受注が難しくなります。 

 

――なるほど、そういうキーパーソンがいなくなると、普通の従業員に退職されるより厳しいですね。サービス業が5年ぶりに最多となったとありますが、ズバリその理由は何でしょうか。 

 

飯島大介さん 「現状の待遇に不満を抱えていた」ケースが多かったとみられます。賃上げ要求や労働環境の改善といった要望が経営陣と折り合わないなかで、独立をしたり、あるいは他社からの引き抜きで職を辞したりするケースが多いと聞かれます。 

   

  サービス業では、スキルさえあれば比較的「独立がしやすい」ことも、退職型倒産が増えた要因ではないかと思います。たとえば、IT業界では優秀なシステムエンジニアは高待遇で求められているし、1人でも独立できます。 

   

  美容業界も同様です。スキルの高い美容師や固定客の多い美容師ほど、より良い待遇を得るために独立して自分の店を持ちたいという独立志向が高く、店側からすれば売り上げの見込める美容師に辞められると経営がピンチに陥ります。 

 

――従業員退職型倒産は今後も増えるでしょうか。また、倒産を防ぐには問題を抱える企業はどういう対策を行うことが重要ですか。 

 

飯島大介さん 中小企業でも賃上げの動きが加速するなかで、従業員の要求に(応えたくても)応えられない企業では、今後従業員の退職がトリガーとなって市場から淘汰されるケースが増える可能性があります。 

   

  従業員からの要求には、賃上げのほかにも労働環境の改善や会社制度の見直しといったものもあり、労使双方で歩み寄る、そして会社の課題解決についてともに考えるといった姿勢を持つことが重要かもしれません。 

 

(J‐CASTニュースBiz編集部 福田和郎) 

 

 

 
 

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