( 278536 )  2025/03/29 03:10:50  
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斎藤知事(左)と高見議員(右) 

 

パワハラを認めながらも自らへの処分はしようとしない斎藤元彦兵庫県知事。だが兵庫県では、そんな行政トップ以外にも、問題行動が明らかになったにも関わらず政治責任を取らない政治家が目立つ。いずれも昨年11月の出直し知事選で斎藤氏の“応援団”だった面々だ。  

 

「私としては、間違ったことは一切していないという認識は変わりません。今後も議員としての職を全うしていく所存です」  

 

3月26日に自身のXにそんなポストをしたのは姫路市の高見千咲市議(30)だ。姫路市議会はこの日、高見氏の辞職勧告決議案を可決した。まだ市議1期目の高見氏が退場を突きつけられたのは、SNSの投稿が問題視されたためだ。 

 

「高見氏は昨年11月の知事選で『私は(斎藤陣営の)選対本部の人間』と主張した人物です。昨年11月以降、病気などを理由に市議会本会議をずっと欠席していながら、斎藤知事に都合が悪い発言をする人をSNSで批判してきました」(地元記者) 

 

知事選では「斎藤知事を応援する」と言って立候補した立花孝志NHK党党首らが「疑惑は嘘で、斎藤知事はハメられた」と主張した。 

 

その“黒幕”として名指しされた県議会調査特別委員会(百条委)のメンバーだった竹内英明元県議(享年50)は、SNSなどで猛烈な誹謗中傷を浴びる中で議員を辞職した後、今年1月18日に急逝した。自死とみられている。 

 

その直後、立花氏は「竹内氏は逮捕される予定だったようです」と主張し、この発言もSNSで広まった。しかし兵庫県警の村井紀之本部長は1月20日に県議会で「全くの事実無根。明白な虚偽」と述べ、立花氏の主張の拡散を止めようとした。 

 

これを知った高見氏が同じ日の夜に、「そもそも、兵庫県警の内部では知事選において、特定候補(斎藤知事ではない)の応援をするように通達されていたと聞いたんですけど」と、Xにポストしたことが辞職勧告決議の引き金になった。  

 

放置できないとみた県警は高見氏が当時所属していた自民党県連にポストの削除や訂正を要請。すると高見氏は1月25日に「認めるわけないやろwすぎて話にならない。否定してるからって、事実じゃないってことにはなりません〜」と県警を非難するポストで返したのだ。 

 

「高見氏は昨年11月には『完全犯罪で人コロすには5000万円あったらいけるらしい。これ皆覚えといて』とポストするなど奇行が目立っていましたが、さすがに市議会もだまっていられなくなり、高見氏に対する政治倫理審査会を設けました。ただ、有力者がバックにいるとささやかれる高見氏に議会が厳しい姿勢を示せるのか、疑問視する声もありました」(地元政界関係者) 

 

だが、弁明の場に体調不良を理由に現れなかった高見氏に対し、政倫審では「以前から一般市民をストーカーとする投稿を繰り返すなど倫理観が欠落した投稿で社会に不安感を与えてきた」「自分自身を正当化して自己満足に陥っている」「問題行動は挙げればキリがない」などと厳しい意見が続出した。 

 

「結局、委員8人の全員一致で、高見氏の行為は政治倫理条例に違反し、政治的・道義的に重大な責任があるため辞職勧告が相当だとする報告が3月7日にまとめられました」(地元記者) 

 

 高見氏は反発し「審査は委員たちの個人的な主観で進められ、事実関係は全く審査されていないため厳重に抗議します」との意見書を議会に送ったが相手にされず、辞職勧告決議が通ることになった。もっとも決議に法的拘束力はない。 

 

「高見氏は辞めないと言っているので騒動は終わりません」と政界関係者はため息をつく。 

 

 

“辞めない議員”は他にもいる。 

 

「県議会百条委で副委員長を務めた元維新の岸口実県議です。知事選のさなかに岸口氏は、知事失脚を図った黒幕として竹内さんらの名を記した怪文書を、自分や維新の強力な支援者と目されるX氏の仲介で立花氏に渡し、これが立花氏の主張のもとになりました」(県議会関係者) 

 

今年2月に立花氏が怪文書は岸口氏からもらったと暴露すると、岸口氏は初めは否定したが、「私から渡したと言われても申し開きできない」と言い方を変えた。 

 

さらに立花氏と会った理由については、「理由がない。軽率だったとしか申し上げようがない」と説明を拒んでいる。 

 

「岸口氏が文書を渡したことを最初否定したため、同席したX氏の存在が注目されることになりました。岸口氏はまずいと思い慌てて自分に責任があると言い始めたように見えます。いずれにしても岸口氏は、疑惑解明に努力した竹内元県議らを裏で攻撃していました。発覚して百条委の副委員長を辞任しましたが、責任をとったとは言えません」(県議) 

 

兵庫維新の会は問題を受け岸口氏を除名処分にした。「維新の議員は選挙に出馬する際、『除名されれば議員を辞職する』との誓約書を出しますが、岸口氏は除名処分を受けながら『支持者に続けろと言われた』と言って議員辞職を拒んでいます」(地元記者) 

 

兵庫維新の会は他にも、百条委の秘密会で隠れて録音した音声データを立花氏に提供した増山誠県議と、立花氏に情報提供を申し出た白井孝明県議に離党勧告処分を出している。 

 

すると離党した増山、白井両氏は岸口氏とともに3人で県議会に新会派「躍動の会」をつくり、さらに同名の地域政党を立ち上げた。 

 

「躍動の会は斎藤氏を応援するとし、次の県議選で仲間を増やしたいとしています。3月30日告示の赤穂市議選にも候補者を立てる見通しです。なんとも理解ができないのですが、この3人は兵庫維新の会の処分を受けて離党したはずなのに、今も日本維新の会のホームぺージには党所属議員として紹介されています。 

 

一方、県議会は岸口氏らの行為を調べる調査会を設置しました。県警も、岸口、増山氏の行為は威力業務妨害にあたる可能性もあるとみて関心をもっています」(政界関係者) 

 

高見氏や岸口氏らが応援する斎藤知事は、県の第三者調査委員会が11のパワハラ言動を指摘したことを「受け入れる」と述べ、認めた。だが責任を取る姿勢はない。 

 

3月26日の記者会見でも斎藤知事は「しっかり襟を正して、再発防止策を含めてしっかりやっていくということが、私の責任の果たし方だという風に考えています」と答え、辞職どころか自分には一切処分を行なわないことを明言した。 

 

知事から県議、市議まで。兵庫県内の議会の混乱は続きそうだ。 

 

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取材・文/集英社オンライン編集部ニュース班 

 

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