( 279676 )  2025/04/02 05:18:12  
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農水省が発表した最新のコメの平均価格は12週連続の値上がりとなり、備蓄米放出後の効果はみられませんでした。そんな中、「令和の百姓一揆」と題したデモ活動が都内で行われ、コメ農家らが窮状を訴えました。 

 

■「先々を心配して、在庫を積み上げていった結果ではないか」 

 

3月31日、最新のコメの価格が発表されました。 

 

17日から23日にスーパーで販売された5キロあたりの平均価格は4197円と、12週連続の値上がりとなり、去年の2倍以上という高値が続いています。 

 

価格の安定に向け、政府はこれまで2回、合わせて21万トンの備蓄米を放出。 

 

初回の入札分は店頭に並び始めていて、次回以降の調査でどのように反映されるか注目されます。 

 

価格高騰の背景に、一部業者の抱え込みがあるとする農水省は31日、コメの在庫状況に関する調査結果を公表しました。 

 

江藤拓 農水大臣 

「生産者、卸売業者、小売や中食・外食の事業者が先々を心配して、この秋までの必要であろうお米を確保しようという動きをされて、それぞれ少しずつ先回りして在庫を積み上げていった結果ではないか」 

 

調査では、今年1月末の時点で、「農家や卸売業者などが持つコメの在庫が前年より19万トン多かった」と指摘。 

 

さらに、「農家が農協などを通さず、直接販売する量が増えている」として、農水省は「従来の調達ルートにお米が来ていない。その目詰まりによって不足感が生じている」などと説明しています。 

 

■コメ農家「時給10円」 

 

ただ、農家の認識は違うようです。 

 

30日、「令和の百姓一揆」と銘打ち、都心で農家たちによるデモが行われました。 

 

デモに参加した新潟県のコメ農家・堀井さんに話を聞きました。 

 

新潟・長岡市のコメ農家 堀井修さん(75) 

「米価が上がっている、百姓が儲けているというようなことを言っているけど、百姓から出ていく60キロは2万円」 

 

コメの売り渡し価格は5キロにすると約1700円で、4000円を超える店頭平均価格の半値以下だといいます。 

 

 

堀井修さん 

「今まで30年も米価は上がってないわけ。とてもじゃないですよ。後継者なんかやらせられねよ。時給10円だぜ、考えられる?」 

 

2022年の国の統計によると、コメ農家の1年間の収入から経費などを差し引いた所得は平均1万円、時給換算で10円となります。 

 

堀井さんは、コメ高騰の問題を機に、農家の窮状を知ってほしいと話します。 

 

堀井修さん 

「後継者がいない、我々みたいに年寄りだけになる。そうすると、あと10年も経つと作る人がいなくなる。農家の皆さんの生活を守ること、消費者の方もそれに安心してコメを食べてもらう、これが大事ですよ」 

 

■ヨーロッパでは農家に支援金も 

 

小川彩佳キャスター: 

備蓄米が放出されましたが、コメの価格は下がっていません。 

 

TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん: 

(備蓄米放出を)21万トンと限定しているので、「しばらく蓄えていたらまた上がるのでは」と。 

 

一方で、相当量を出すと、コメの価格が急落して農家が困るという構図があります。自民党からすると農家は自分たちの仲間です。なので、あまり下げたくない心理もありますよね。 

 

小川キャスター: 

農水大臣は、さらなる対応を躊躇なく行っていきたいというふうには言っていますが、どのくらいの価格を想定しているのでしょうか。 

 

TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん: 

少なくとも4000円を切って、3700円や3600円あたりに落ち着けばいいのかなというのが本音だと思います。それでも、去年に比べると倍以上ですよね。 

 

藤森祥平キャスター: 

一方、農家の皆さんは、これでもコメの値段はまだ安いと、深刻な訴えをしています。 

 

ヨーロッパでは食料の安定供給のために、EUが農家に支援金を払って価格を維持する政策を行ってきました。 

 

それにより、食料自給率の向上や農村の振興というメリットがあります。 

 

ただ、市場の価格は高くなり、消費者にとって苦しくなります。さらに財政負担も続いていくことになります。 

 

 

TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん: 

コメ農家は、どんどん高齢化が進んでいて、後継者不足がとても深刻です。 

 

コメというのは、作るだけではなく、周りの環境を保全したり、水の問題もあったり、コミュニティを維持したり、社会的に非常に役立っているわけです。もう少しコメ農家に対して、国が支援をしていくことを考えてもいいと思います。 

 

どちらかと言えば、ヨーロッパは支援型、アメリカは市場原理型、日本はその中間でやってきています。もう少しヨーロッパ並みに、国土保全などのために支援をしていく必要があると思います。 

 

日本の食料自給率は38%しかなく、いくら防衛費を増やしても国を守りきれない実態です。少なくても自給率を5割か6割くらいに高めていく努力をするのは国の責務だと思います。 

 

小川キャスター: 

その支援を行っていく方向に向かっていくのでしょうか。 

 

TBSスペシャルコメンテーター 星浩さん: 

あまり向かっていないんです。 

 

財政の事情もあったり、農業にだけお金を払うわけにいかないということがありますが、政策を転換する時期だと思います。 

 

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<プロフィール> 

星 浩さん 

TBSスペシャルコメンテーター 

1955年生まれ 福島県出身 

政治記者歴30年 

 

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