( 279701 )  2025/04/02 05:47:04  
00

財務省と野田佳彦・立憲民主党代表は「目指す方向が一致している」との指摘も(時事通信フォト) 

 

「10万円商品券問題」などで石破茂・首相への批判が日に日に高まっているにもかかわらず、なぜか野党による政権打倒の動きは鈍い。実は、石破政権を守ろうとしているのは野田佳彦・代表率いる立憲民主党ではないか──永田町ではそんな声まであがり始めている。 

 

「石破総理が首の皮一枚でつながっているのは、野党、とくに立憲民主党が守っているからです」 

 

 そう指摘するのは自民党内の“石破おろし”の急先鋒である西田昌司・参院議員だ。 

 

「あんなに商品券の問題を国会で追及しているのに、不信任案を出そうとしない。異常でしょう。立憲民主党には石破総理のままのほうが参院選を戦いやすいという計算はあるでしょうが、狙いはそれだけではない。 

 

 立憲民主は年金改革法案を早く国会に提出せよと主張していて、あの法案には年金増税につながる改革が盛り込まれている。財務省がやろうとしているのは、社会保障費の負担引き上げであり、さらに増税もする。立憲民主党は“ザイム真理教”だからね。立憲全体とは言わないが、野田代表をはじめ立憲の主流派は財務省と同じ考えなのでしょう。財務省や石破政権、野田立憲まで年金財源に消費増税を想定しているのだとすれば、日本を貧乏にするだけの政策としか言いようがありません」 

 

 その年金改革法案をめぐる対応も一見、与野党アベコベに見える。 

 

 年金改革法案は政府が「重要広範議案」に指定した重要法案だが、3月19日の自民党厚労部会では「出したら参院選に負ける」「小手先の改革」(河野太郎・元外相)と国会提出先送りを求める声が噴出。逆に立憲民主党はじめ野党側は「早く国会に出せ」と迫っている。 

 

 だが、表面的な対立とは逆に、与野党は審議を「参院選後」に先送りするとの方針で一致しているという。国会対応に追われる厚労省の中堅官僚が舞台裏を打ち明ける。 

 

「5年に一度の年金の財政検証の後に改正案を出すのは決まっているから、年金局はスケジュール通りに進めたいと官邸に進言している。その一方で、今回の改正案は現役サラリーマンの保険料が上がり、遺族年金の給付抑制などでは女性が割りを食う内容なので、自民党は参院選前には国会に出したくない。野党も口では早く出せと言うが、自分たちが改正案を出させておいて反対すれば矛盾になる。本音は与野党とも改正案の審議は参院選後だという暗黙の了解があるわけです」 

 

 そうした国会談合を根回ししているとみられるのが財務省だ。 

 

 今回の年金改革案には将来の増税につながる重要な内容が盛り込まれている。政治ジャーナリスト・宮崎信行氏が語る。 

 

「厚生年金の積立金の一部を使って基礎年金の底上げを図るというものです。これは年金受給者にとっては概ねプラスになるが、基礎年金の財源の半分は国庫負担だから、底上げすれば国庫負担が増える。その財源をどうするかが決まっていない。財務省や厚労省には消費税で賄わねばならないという意見があり、消費税率13%への引き上げという案も内々に検討されていると伝わっている。 

 

 実は、この基礎年金の国庫負担増を消費税引き上げで賄う仕組みをつくったのが野田政権の社会保障と税の一体改革で、野田氏は責任ある政治のためには増税も必要という持論がある。財務省と野田氏は阿吽の呼吸で目指す方向が一致しているとみていい」 

 

 かつて野田政権が民主・自民・公明の3党合意で成立させた「社会保障と税の一体改革」の柱は、消費税率を5%から10%に引き上げ、増収分をすべて年金・医療・介護に充てて安定財源をつくるという内容だった。 

 

 その後、安倍政権が消費税の増収分の一部を子育て支援に充てると使途を変更したうえ、少子高齢化の進展で年金の財源が足りなくなり、基礎年金の支給水準の維持が難しくなってきた。 

 

 

 そうした現状を野田氏はこう嘆いている。 

 

「人口減や高齢化が進む日本の社会保障制度を支えるのが、消費税です。その基本的な考え方は、いまも間違っていないと信じています。3党が合意して法律が通った以上は、税率を8%、10%としっかり2回引き上げて、安定した社会保障制度と財政の健全化が進んでいくと期待したのですが、コロナ禍もあって財政規律は大きく緩んでしまいました」(2023年9月29日付朝日新聞インタビュー) 

 

 今回の年金改革法案は、いわば野田政権の社会保障と税の一体改革を補完する性格があるのだ。財務官僚は野田氏の協力を織り込んだ言い方をする。 

 

「社会保障制度の安定は野田さんのライフワーク。年金や医療など社会保障制度の維持のために『第2の社会保障と税の一体改革』を行なって消費税引き上げによる安定財源確保が必要だと考えているはずだ。参院選後の年金改革法案の審議は望むところでしょう」 

 

 年金財源のための消費増税や自民・立憲との連携の動きを財務省に問うと「承知しておりません」(広報室)とするのみ。 

 

 野田氏の見解を求めると、文書でこう回答した。 

 

「人口減少や高齢化に直面する中、財政健全化と社会保障制度の安定を実現することは、今を生きる政治家に課せられた極めて重要な課題だと考えております。年金制度改革法案に対する党の考えは、提出された法案を踏まえ、検討して参ります」 

 

 そのうえで消費税引き上げについて、「再三申し上げていますが、消費税率の引き上げを行うと発言したことはなく、ご指摘はフェイクニュースそのものです。事実に基づく報道をお願いします」と反論した。 

 

 * * * 

 関連記事《石破政権と立憲民主で進める“財務省の思惑通り”の「年金大増税」シナリオ 立憲民主・野田佳彦代表が内閣不信任案を提出しない“隠された意図”【全文公開】》では、財務省の思惑に乗って年金大増税を実現するために、石破政権を守ろうとする立憲民主党の動きや、逆に石破政権が野田氏に“ラブコール”を送っている実情について詳報している。 

 

※週刊ポスト2025年4月11日号 

 

 

 
 

IMAGE