( 279931 ) 2025/04/03 05:11:11 0 00 財務省解体デモの様子
霞が関の財務省前に始まり、名古屋、大阪の財務局前など全国に広がった抗議行動。いったい誰がどんな目的で来ているのか。現地を取材した。
「財務省、解体!」
「消費税をぶっこわーす!」
そんな叫び声が東京・霞が関の財務省の前にこだましたのは3月14日のこと。SNSを通じた呼びかけのもと、財務省の解体や減税などを訴えるデモ活動が行われたのだ。庁舎前には1000人を超す人が押し寄せ、デモに便乗して街宣に来ていた「NHKから国民を守る党」党首の立花孝志氏(57歳)がナタを持った男に襲われるなど、現場は一時騒然となった。
全国紙政治部デスクが説明する。
「財務省への批判の声が高まったのは昨年11月。国民民主党が主張する『年収103万円の壁』引き上げを実施した場合、7兆円以上税収が減るとの試算を政府が公表し、難色を示しました。するとSNS上で怒りの声があがり、税制を担う財務省に批判の矛先が向かったのです」
1000人規模の抗議行動に政府も反応した。石破茂総理は国会でデモについて問われ、「等閑視(無視、軽視)すべきではない」と答えている。
ここまで発展した「財務省解体デモ」とはいったいどのようなものなのか。本誌記者は3月21日にもデモが開催されるとの情報をもとに、実際に現地で取材した。
東京メトロ霞ケ関駅で電車を降り、財務省の正門前に出るA13番出口の階段を登っていると、「財務省っ解体! 財務省っ解体!」と叫ぶシュプレヒコールが聞こえてくる。地上へ出ると、まだ夕方の17時半にもかかわらず、100人近くの人が集まっていた。
ひと目で、それまで見てきたデモとは明らかに様子が違うことがわかった。たとえば、労働組合から動員された組合員がそれぞれの組織ののぼり旗を掲げ、みんなで声をあわせてシュプレヒコールをするデモなどは馴染み深い。
しかしこの日は、のぼり旗は一本も見られなかった。代わりに一部の参加者がプラカードを持って参加している。
「罪務省解体!」「天下りをやめろ!」などと油性マジックで段ボールに書きつけた、いかにもお手製のものが多い。
シュプレヒコールも一部声を合わせている人はいるが、各々が拡声器を手に、「ふざけんじゃねー!」「明日からやめろ、コラっ!」などと好き勝手に叫んでいる。
男女比はほぼ半々で、年齢もバラバラだ。早速、参加者に話を聞いてみた。
初めて参加したという都内在住の介護職員の水谷洋介氏(仮名・46歳)は、氷河期世代ど真ん中の苦しみを語る。
「自分は高校を出て、正社員にはなれたんですけど、超ブラックな会社で心身ともに疲弊して、辞めてしまいました」
その後、数十社の面接を受けるもあえなく撃沈。非正規で働く日々が続き、結婚のチャンスにも恵まれなかった。
「結局、30代後半で介護職に就きました。人手不足で40歳近くても正社員になれたので。若いうちは、自分の努力が足りないからと納得していたんですけど、経済アナリストの森永卓郎さんの動画を見ているうちに、政治にも責任があったんじゃないかと思い始めた。
初任給が30万円超えとか、就職内定率が過去最高みたいなニュースを見ると、ふざけるなって怒りの気持ちが込み上げてくる。給料は手取りで二十数万円ほどです」
参加は2回目だと語るのは、都内で事務職を務める峰田直子さん(仮名・32歳)。
「毎月の給与明細を見て、これだけ頑張っているのにこんなに税金で持っていかれるんだって、生きる意欲が削がれます。毎日決まったルーチンの事務作業で、職場でもみんなハラスメントとか気にして会話も言葉を選んでいる感じで、すごく息苦しい。土日休みですが、ずっとベッドに横になってスマホで動画を見ています。私の存在理由って何だろうと思いますよ。
日本にもトランプやイーロン・マスクのような破壊者が出てきて、ゼロから日本を作り直してほしい」
相原章介さん(仮名・73歳)は自宅の茨城県つくば市から1時間半かけて駆けつけたという。相原さんが政治に目覚めたのは、元駐ウクライナ大使でノンフィクション作家の馬渕睦夫氏のユーチューブを見たことがきっかけだった。
「米国の歴代の民主党政権の大統領はディープステート(闇の政府)の手先で、世界中で人殺しをしてきたわけでしょ。トランプが大統領に就任して世界を大改革しようとしている。いま安倍晋三さんが生きていれば本当に日本は良くなったのになあと残念でしょうがないですよ」
フリーランスの高橋杏奈さん(仮名・42歳)は、確定申告を済ませたばかりだが、怒りが収まらない。
「あまりにも頭にくるので、この3年はわざと確定申告をしてなかったんですよ。督促が来たので、さすがに払ったんですけど高すぎますよ!」
デモは19時半まで続いたが、時間が経つごとに人は増えていき、最終的に200人ほどになった。スタッフらしき男性によると、「立花さんの事件で参加者が減ってしまった。でも4月29日は大々的にやりますから」とのこと。
「週刊現代」2025年4月5・12日合併号より
週刊現代(講談社・月曜・金曜発売)
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