( 280311 )  2025/04/04 07:07:08  
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「インナー」と呼ばれる自民党税制調査会の顧問も兼ねる森山裕・自民党幹事長(時事通信フォト) 

 

「10万円商品券問題」などで石破茂・首相への批判が日に日に高まっているにもかかわらず、なぜか野党による政権打倒の動きは鈍い。実は、石破政権を守ろうとしているのは野田佳彦・代表率いる立憲民主党ではないか──永田町ではそんな声まであがり始めた。 

 

「石破総理が首の皮一枚でつながっているのは、野党、とくに立憲民主党が守っているからです」 

 

 そう指摘するのは自民党内の“石破おろし”の急先鋒である西田昌司・参院議員だ。 

 

「あんなに商品券の問題を国会で追及しているのに、不信任案を出そうとしない。異常でしょう。立憲民主党には石破総理のままのほうが参院選を戦いやすいという計算はあるでしょうが、狙いはそれだけではない。 

 

 立憲民主は年金改革法案を早く国会に提出せよと主張していて、あの法案には年金増税につながる改革が盛り込まれている。財務省がやろうとしているのは、社会保障費の負担引き上げであり、さらに増税もする。立憲民主党は“ザイム真理教”だからね。立憲全体とは言わないが、野田代表をはじめ立憲の主流派は財務省と同じ考えなのでしょう。財務省や石破政権、野田立憲まで年金財源に消費増税を想定しているのだとすれば、日本を貧乏にするだけの政策としか言いようがありません」 

 

 今回の年金改革法案は、いわば野田政権の社会保障と税の一体改革を補完する性格がある。財務官僚は野田氏の協力を織り込んだ言い方をする。 

 

「社会保障制度の安定は野田さんのライフワーク。年金や医療など社会保障制度の維持のために『第2の社会保障と税の一体改革』を行なって消費税引き上げによる安定財源確保が必要だと考えているはずだ。参院選後の年金改革法案の審議は望むところでしょう」 

 

 年金財源のための消費増税や自民・立憲との連携の動きを財務省に問うと「承知しておりません」(広報室)とするのみ。 

 

 野田氏の見解を求めると、文書でこう回答した。 

 

「人口減少や高齢化に直面する中、財政健全化と社会保障制度の安定を実現することは、今を生きる政治家に課せられた極めて重要な課題だと考えております。年金制度改革法案に対する党の考えは、提出された法案を踏まえ、検討して参ります」 

 

 そのうえで消費税引き上げについて、「再三申し上げていますが、消費税率の引き上げを行うと発言したことはなく、ご指摘はフェイクニュースそのものです。事実に基づく報道をお願いします」と反論した。 

 

 

 だが、石破政権は野田氏に“ラブコール”を送っている。 

 

 自民党の社会保障改革の責任者が森山裕・自民党幹事長だ。「インナー」と呼ばれる自民党税制調査会の顧問を兼ね、「財務省と極めて近い」(自民党ベテラン)とされる人物である。 

 

 政権の大黒柱でもある森山氏は、去る3月8日、自民党青年部・青年局・女性局合同の全国大会の挨拶でこう言及した。 

 

「消費税の歴史を考えてみますと、消費税と社会保障の一体改革というのは、平成24年、民主党政権、野田総理の時に自民党、公明党と民主党が一緒になって国の予算の大部分を国債に頼っていては社会保障そのものが危うくなるのではないか。ここは3党でしっかり方針を決めるということで、当時5%であった消費税を8%、10%に上げていくというタイムスケジュールを決めたじゃありませんか。私はこれを提案された当時の民主党の野田代表は、立派な方だなと今も思っています」 

 

 そう持ち上げたうえで、「苦しい時も国民の皆さんにしっかりと現状を訴えて、ご理解を求めていく努力をしなければいけない」と訴えた。 

 

 財務省にとって都合がいいのは、「石破総理、森山氏、野田氏は社会保障改革には安定財源が必要という考え方や、政治家は不人気な政策でも必要であれば国民を説得してやらなければならないという信念が共通している」(財務官僚)からだ。 

 

 厚労省中堅官僚もこう言う。 

 

「野田政権の社会保障と税の一体改革の時は、野党だった自民党が先に消費税10%を公約に掲げ、与党の民主党がそれに乗る形で3党合意がまとまった。財務省は今回も参院選後に立憲の野田代表のほうから、かつての一体改革の内容を踏まえて財源を消費税で賄う提案をさせる根回しをしているのでしょう。少数与党の石破総理にとっても、立憲を引き込むことができるなら大歓迎です」 

 

 もちろん、石破政権が参院選までもつかという問題はある。 

 

 自民党の西田昌司・参院議員は「総理の資格のない人物が、商品券のスキャンダルを抱えてもいる。そんな石破総理の下で参院選を戦うわけにはいかない。予算が成立すれば速やかに総裁選を行なうべき」と石破おろしに走る構えだ。党内では高市早苗氏、茂木敏充氏、小林鷹之氏らの総裁候補がポスト石破に向けて動き出している。 

 

 それに対して森山幹事長は「いま総裁選をやるべきじゃない」として石破おろしを牽制するなど暗闘が始まっているが、いずれにしても夏の参院選に負ければ石破首相の続投は難しい。 

 

 だが、たとえ総理が代わっても少数政権。待ったなしの年金改革には野党の協力が必要になる。「弱い政権」に野党と組んで増税をやらせるのが財務省の手法であり、参院選で自民党が勝っても負けても増税計画が進むという国民にとっての最悪シナリオが出来上がりつつあるのだ。 

 

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 関連記事《石破政権と立憲民主で進める“財務省の思惑通り”の「年金大増税」シナリオ 立憲民主・野田佳彦代表が内閣不信任案を提出しない“隠された意図”【全文公開】》では、財務省の思惑に乗って年金大増税を実現するために、石破政権を守ろうとする立憲民主党の動きや、それについての野田佳彦代表の見解などを詳報している。 

 

※週刊ポスト2025年4月11日号 

 

 

 
 

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