( 280646 ) 2025/04/06 03:34:38 0 00 取材に応じた姉妹の母親。民事訴訟を起こすにあたり、膨大な書類と向き合ったという
福井県内の女児3人にキスをしたなどとして、昨年3月に強制わいせつ罪で懲役2年の実刑判決を受けた元消防署長の受刑者(77)に対し、被害を受けた女児が人格権や性的自由が侵害されたとして、損害賠償を求める訴訟を地裁に提訴した。母親の一人が読売新聞の取材に応じ、「娘たちは深く傷ついた。将来に影響を与えてしまわないか」と胸の内を明かした。(北條七彩)
判決によると、受刑者は2022年5~9月、女児3人が13歳未満と知りながら、自宅敷地内でキスしたり、体を触ったりした。
受刑者は自宅敷地内でサクランボ、ブルーベリーなどを栽培し、収穫体験で子どもたちを受け入れていた。被害を受けた3人のうち2人は姉妹で、21年から両親とともに受刑者宅で体験を楽しんでいた。母親も「面倒見が良く、自然を愛している人」と信頼していた。
それだけに、2人から被害を訴えるSOSがあった時の衝撃は大きかった。
22年5月、サクランボ狩りの最中、当時9歳の妹が「(受刑者から)チューされた」と明かした。母親が受刑者に問いただすと、「孫をかわいがる感覚だった」と説明したという。厳重に注意し、もやもやした気持ちは残ったが、せっかく体験を楽しんでいるから、と交流は続けることにした。
それからわずか2か月後。ブルーベリー狩りの際に、今度は当時11歳の姉が、人目に付かない場所で抱きつかれ、キスをされた。報告してきた姉は、明らかに動揺していた。父親とともに厳しく追及すると、受刑者は一言「ごめん」とつぶやいたという。
すぐにでも帰りたかったが、姉が「自分のせい」と自責の念をもってしまいかねない。体験終了までは何事もなかったかのようにふるまった。
その後、姉は「自分がされたのが、良いことなのか悪いことなのかわからない」と、心的外傷後ストレス障害(PTSD)に悩まされた。眠れない日が続き、目の下には濃いクマができた。学校を休むことが増え、成績は下がった。家族で外出することを怖がるようになり、家族の思い出の場所も「覚えていない」と言うようになった。「死にたい」と自宅の屋根に上ったこともあった。
刑事裁判で受刑者の刑が確定してようやく、姉は心身の状態が安定してきたという。しかし「家族の楽しい思い出が、全てつらい記憶で塗り替えられてしまったようだ。見ていて本当につらかったし、今もずっとつらい」。母親は声を詰まらせた。
何より、これから思春期を迎える娘たちの人間関係や恋愛に影を落とさないかが不安だという。「幸せに感じるはずのスキンシップを、気持ち悪いものとして捉えてしまわないだろうか。これ以上こんな思いをする人が増えないでほしい」
子を責めず受け止めて…武蔵野大・藤森名誉教授 子どもが性被害に遭ったことを訴えたとき、保護者や周りの大人はどう対応するべきか。武蔵野大の藤森和美名誉教授(臨床心理学)に聞いた。
――対応のポイントは。
「『なんで言わなかったの』『逃げられたでしょ』と感情的になると子どもは罪悪感を強めてしまいます。まずは『よく伝えてくれたね』『怖かったね』と受け止め、被害について詳しく聞き出そうとすることは記憶の汚染につながるため、避けてください」
――被害を言葉にできない子どもが出すサインは。
「寝付きが悪くなる、頭痛や腹痛を訴える、ゲームなどの非現実世界に没頭する、などさまざまです。異変に気づいたら、怒るのではなく『何かあった?』と聞いてあげてください」
――性被害に遭わないため日頃からできることは。
「水着で隠れる体の『プライベートゾーン』や、口、胸などを他人に触らせないように教えることです。親しい大人でも、信用しきらないことも重要です」
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