( 281051 )  2025/04/07 06:18:33  
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数年前のコロナ禍の影響もあってか、新車の納車が思うように進んでいない。よメーカー各社は抽選販売を行うようになってきたが、どんな狙いがあるのだろうか? 

 

 トヨタの販売店から「最近の新型車は、お客様に販売できる台数が需要に対して極端に少ない」という話が聞かれる。そのために納期が遅延したり、受注を停止している。受注の停止はトヨタに限ったことではなく、スズキ・ジムニーに追加された5ドアボディのノマドも現時点では購入できない。ホンダ・シビックタイプRも受注を停止している。 

 

 直近ではトヨタ・クラウンエステートが2025年3月13日に発売されたが、早々に受注の停止が始まった。3月下旬に問い合わせると、大半の販売会社で以下のような話が聞かれた。 

 

 「クラウンエステートのハイブリッドは、受注台数が販売店に割り当てられた上限台数に達して、受注活動を停止した。プラグインハイブリッドなら受注が可能で、約4カ月で納車できるが、これも上限台数に近付いている」 

 

 地域によっては「ハイブリッド、プラグインハイブリッドとも、クラウンエステートの全車が受注を停止している。再開する時期は不明」という返答もあった。 

 

 定額制カーリースのKINTOでは、クラウンエステート ハイブリッドの契約を継続しており3〜6カ月で納車されるが、リース期間を満了したら車両を返却せねばならない。KINTOはユーザーが所有権を手に入れられる購入とは異なる。リースだから走行距離やドレスアップなどに関する制約も多く、それに反する使い方をすると、契約期間を終えて車両を返却する時に出費が生じるから注意したい。 

 

 そして販売会社によっては、クラウンエステートの商談ができるユーザーを抽選で決めていた。販売店では以下のように説明した。 

 

 「クラウンエステートを購入したいお客様には、(2025年の)3月13日から16日までに来店していただき、商談申込書に記入をお願いした。その上で抽選を行って商談を実施した」 

 

 商談できるユーザーを抽選で決める方法は、今までにもいくつかのメーカーが採用してきた。これらのうち、インターネットで申し込みを行って商談するユーザーを抽選で決める方式は、さまざまな混乱を招いている。インターネットの申し込みは気軽に行えるためだ。転売を目的に業者が申し込むケースも少なくなかった。 

 

 その点でクラウンエステートは、購入希望者が販売店に出向き、商談申込書に記入している。販売店に出向くと手間が掛かり、店舗のスタッフと話もする。購入の意思が曖昧なユーザーを省く効果が得られる。また中古車業者などがトヨタの販売店を訪れると、知り合いがいるかも知れず具合が悪い。その点でユーザーが来店して、商談申込書に記入する方式なら、ある程度は転売などの抑止効果が期待できるだろう。 

 

 販売店によると「抽選で決めるのは、あくまでも商談の申し込みに限られる。その後の商談により、購入されなかったり、ディーラーローンの審査に通らないこともある。商談を開始したあとの流れは、通常と変わらない」という。 

 

 それにしても最近のクルマの売られ方は、メーカーを問わず良心的ではない。納期が著しく遅延して、受注を停止したり、仮に購入できても転売しない趣旨の誓約書にサインをさせられたりするからだ。 

 

 メーカーが商品を発売する以上、正確な需要を予測して、十分な生産を行うのは当然だ。そうなれば納期の遅延、受注の停止、転売や中古車価格の高騰なども生じない。数年前まではコロナ禍の影響で仕方のない面もあったが、今ではこのいい訳も通用しない。 

 

渡辺陽一郎 

 

 

 
 

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