( 281496 ) 2025/04/09 05:32:15 0 00 電動化や提携戦略を担ってきたナンバー2が不適切行為で辞任(写真:梅谷秀司)
4月7日19時に1枚のリリースが開示されると、東京都港区南青山にあるホンダ本社に激震が走った。
「代表執行役の異動(辞任)に関するお知らせ」と題するリリースの冒頭では「当社は、取締役 代表執行役副社長 青山 真二から辞任届が提出され、これを受理しました」と説明。「異動(辞任)の理由」には、青山氏が業務時間外における懇親会の場で不適切行為を行ったとの訴えを受けていることが発覚したと記されていた。
当該事案は警察から告訴状を受理されていることをホンダが通告され発覚した。監査委員会主導で調査や処分案の策定を進めた結果、取締役会での処分を決定する予定だったが、同日に青山氏が辞任届を提出した。
ホンダは「被害者のプライバシーを守るため詳細は差し控える」として事案の内容については明らかにしていない。青山氏は事実関係について認めており、「反省している」と述べているという。
■電動化や提携戦略を担ってきたナンバー2
「この大変な時に、まさかこのようなことが起こるとは……」とホンダの中堅社員は言葉を詰まらせる。
1986年に入社した青山氏は二輪事業本部長など二輪事業を中心にキャリアを歩んできた。近年は四輪事業の本丸である北米統括会社やアメリカ子会社のトップ、四輪事業本部長などを歴任。2023年4月には副社長に就任し、三部敏宏社長に次ぐナンバー2としてホンダの電動化や提携戦略の策定に携わるなど経営の中枢を担ってきた。
ホンダのもう1人の副社長である貝原典也氏が人事などの管理部門や品質、購買を中心に所管していたのに対し、青山氏は営業や地域戦略、財務など経営でも肝となる領域を所管。日産自動車との経営統合に関わる協議にも中心メンバーとして関わっていた。
日産との経営統合は一旦は破談となったものの、EV(電気自動車)やソフトウェアでの協業は継続して議論している。何よりホンダ単独で成長戦略を描くのが難しいという現実は変わっていない。
加えて、トランプ関税が自動車産業を揺さぶっている。ホンダは日本からの輸出台数は少ないものの、アメリカで販売する車の約4割をメキシコとカナダから輸入している。過去に例を見ない厳しい事業環境の中、ホンダはキーパーソンの1人を失ってしまった。
サプライヤーにも動揺は広がっている。「突然で一体何が起こったのか。トランプ関税や電動化への対応もある。青山氏に代わる人材は早々見つかるものではない」。あるホンダ系部品メーカーの幹部は驚きながらそう嘆く。
■ホンダのブランドにも傷
フジテレビジョン問題もあって、これまで以上に企業のコンプライアンス違反に対する社会の目は厳しくなっている。不祥事への対応を誤れば、企業のブランド価値が毀損されかねない。
ホンダは「経営をリードし、人権尊重・コンプライアンス遵守を率先垂範すべき立場の者が、これらに反したとの訴えを受けるに至ったことは大変遺憾です。かかる行為によりご不快の念をおかけしたこと、および全てのステークホルダーの皆様に多大なご迷惑・ご心配をおかけしますことを深くお詫び申し上げます」とのコメントを発表。当該事案を受けて三部敏宏社長は、月額報酬の20%を2カ月間自主返納する。
ホンダは技術畑出身者が社長に就き、営業畑出身者が副社長となって経営全般で支える体制を創業当時から構築してきた。想定外の辞任は三部体制にも大きな痛手となりそうだ。
「東洋経済オンライン」では、特集「ホンダ・日産 空中分解」で、ホンダと日産自動車の経営統合破談や今後の両社の生き残り策、台湾ホンハイの動きなどをリポートしています。
横山 隼也 :東洋経済 記者
|
![]() |