( 282551 )  2025/04/13 04:47:02  
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スーパーの棚に並ぶコメ=東京都足立区で2025年1月20日、三浦研吾撮影 

 

 茨城県坂東市のふるさと納税で、約1万件の寄付に対する返礼品の米が送れない事態に陥っている。全国的な米の価格高騰と品不足で、想定を大幅に上回る寄付が寄せられたことが原因。県内の他の自治体でも同様のケースが発生しており、「令和の米騒動」が自治体の財政を支えるふるさと納税にも影を落としている。 

 

 在庫不足になっている返礼品は、坂東市内の農家が生産する「令和6(2024)年産冬眠米ハイブリッドとうごう3号5キロ」。7000円の寄付で新米5キロが送られる割安感と、真空パックで保存性が高いことで、24年8月に初めて返礼品に加えて以降、人気が集まった。 

 

 上限を設定せずに受け付けていたが、税控除期限の年末に申し込みが殺到。在庫不足に気づき25年1月7日に受け付けを中止したが、発送できたのは12月23日申し込み分までで、1月6日までの14日間に受け付けた寄付1万540件、7378万円分の米が送れなくなった。 

 

 23年度に市が受け付けたふるさと納税は約1億4303万円。このうち米は約773万円で5%程度に過ぎなかった。ところが24年度は「冬眠米」だけで約1億600万円の寄付が寄せられ、米71品目の8割以上を占めた。「冬眠米」のおかげで、24年度の寄付総額は約2億7000万円にと前年の約2倍にまで増えた。 

 

 市は寄付者に「申し込み多数で在庫不足になり、発送ができない状況」とメールなどで謝罪。代替品として25年秋の新米を送ることにした。キャンセルを希望する寄付者には返金する。 

 

 市は発送済み数や申込数、在庫数の一元的管理ができていなかったことと、上限を設定していなかったことなどが原因と分析。市担当者は「寄付をしてくださった方々に心からおわびする」と話し、再発防止に取り組むとしている。ふるさと納税の仲介サイトには「あり得ないずさんな在庫管理にあきれた」「米の需要殺到は分かっていたはず。初めから注文を受けないでほしかった」などと苦情が寄せられている。 

 

 ◇他の自治体でも発送できず 

 

 龍ケ崎市でも、仲介サイトを通じて3月8~10日に寄付の申し込みがあった991件、約1900万円分について、米の在庫不足で発送できなくなった。対象となったのは、市と河内町が共同で出品した10キロ(寄付額2万円)と5キロ(同1万1000円)。河内町の農家が栽培した米で、農家と自治体、ポータルサイト運営者が協議した上で「月20~30件程度の受注が可能」と判断し掲載を始めた。ところが、農家側が受注個数の設定をし忘れ、制限なく受注できる状態となっており、市も気付かなかった。 

 

 市担当者は取材に「ネットでのアクセスが増える週末であることに加え、米不足が取り沙汰される中で申し込み自体が殺到し、わずかな日数で受注オーバーとなってしまった」と説明。寄付者には謝罪した。 

 

 守谷市でも、12月30~31日に申し込まれた220件、約1103万円分の寄付に対して、米が用意できなくなった。市によると、当初は米を取り扱う事業者に確保してもらっていたが、年末に寄付が殺到し「確保できない」と断られたという。25年産の新米や、ビールなど別の返礼品に変更してもらったが、寄付自体のキャンセルも8件あった。利根町でも、27件、約300万円分の寄付に対して米が確保できなかった。うち2件で返金した。 

 

 米が送れない自治体が相次いだ一方、供給可能な量をしっかり管理していた自治体もある。県南のある自治体職員は「主食である米を扱っているからこそ、慎重に対応すべきだと感じている」と語った。【堀井泰孝、鈴木美穂、酒造唯】 

 

 

 
 

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