( 284316 ) 2025/04/19 07:16:48 0 00 スーパーの精米売り場=川崎市中原区
農林水産省が備蓄米の流通状況を取りまとめており、週内にも公表する。販売先や数量について、落札事業者や流通事業者に報告を求めており、3月中旬に落札された放出第1回目の約15万トンについて、行方が明らかになる。流通先は飲食店や大手小売が主になっているとみられ、中小スーパーの担当者や専門家からは、「店頭価格の引き下げ効果は感じられない」と落胆の声が上がっている。
「今後、市販価格が5キロ4000円を切るのは相当難しいだろう」
コメ問屋を祖業とし、食品流通やスーパー事業などを手掛ける荒井商事(神奈川県平塚市)の卸担当者は、こう話す。
「問屋に尋ねても、備蓄米はどこにもないといわれる。市場ではほとんどが飲食店用と聞いている。スーパーで入荷できるのは大手だけ」という。同社が運営する川崎市のスーパーでは、新潟産のブランド米などが5キロ4000円台後半から5000円台で、茨城県産コシヒカリが5キロ3980円で販売されていた。店長は「コメは卵、牛乳、パンと並ぶ『白モノ』で目玉商品。何とか頑張っている」といい「顧客からは味のよい単一米を求める声が強い」と話す。
備蓄米放出によって、消費者は単に安い備蓄米を手に入れることではなく、コメ全体の価格が下がることを求めている。キヤノングローバル戦略研究所の山下一仁上席研究員は「価格は需要と供給で決まる。備蓄米を放出しただけでは価格は下がらない」と分析する。
■JA全農が94%を落札
3月中に実施された2回の入札で、21万2132トンのうち、全国農業協同組合連合会(JA全農)が約94%にあたる19万9270トンを落札している。山下氏は「米価を維持したいと考えているJA全農は、市場への供給に消極的」と批判する。JA全農が一般家庭向けへの供給を小出しにすれば、値下げ効果は期待できない。
JA全農が落札をほぼ独占している背景には、備蓄米は政府が原則1年以内に売り渡した業者から同じ量を買い戻す制度がある。今年の新米の収穫量が見通せない中、一定量を確保する義務を負うことがハードルとなっている。山下氏は「入札の仕組みを改めないと米価は下がらない」と指摘する。
■味の低下も懸念
今後、さらに懸念されるのが放出される備蓄米の品質低下だ。政府の備蓄米は直近の十数年は91万トンの在庫量を維持してきた。毎年20万トン前後を買い入れ、約5年分を保管している。
令和6年産は、1回目の放出でほぼ出尽くした。2回目と3回目の放出は5年産米。政府は夏までの継続的な放出を計画している。今後はさらに古い備蓄米が出回ることになり、確実に味は落ちる。
今年の新米は放出した分の買い戻しにも充てられる。消費者が味の劣る備蓄米を避ければ、更なる品薄が懸念される。あるコメの流通事業者は「備蓄米は借金みたいなもの。奇跡的な豊作にならない限り、今の状況は続く」と肩を落とした。(高木克聡)
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