( 284451 ) 2025/04/20 04:57:53 0 00 赤澤亮正経済再生担当相
日本時間の17日朝、ホワイトハウスでベッセント財務長官、アメリカ通商代表部のグリア代表との閣僚交渉を行った赤澤亮正経済再生担当相(64)。その赤澤氏には、以前から”ある問題”が指摘されていて……。
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東京・永田町にある首相官邸の4階大会議室。官邸の中でも使用頻度の高いこの部屋では、過去、緊急災害対策本部会議なども行われてきた。大阪・関西万博の開会式を翌日に控えた4月11日、石破首相はそこで「米国の関税措置に関する総合対策本部」を開催。林芳正官房長官(64)及び赤澤氏を両脇に侍らせて、「総合対策タスクフォース」の立ち上げを宣言したのである。石破氏は席上、
「米国との交渉や国内産業に対する必要な対策に取り組むオールジャパンの組織・体制を構築いたします」
と見得を切った。実際、各省庁の次官級から課長級まで粒ぞろいの総勢37名が総合対策本部の事務局を担っているという。だが、総力を結集してこの難局に当たる「タスクフォース」の前に、早くも暗雲が垂れ込めていることは知られていない。特に今、ある人物の振る舞いが問題視されているというが、それは後に詳述するとして、まずは今までのトランプ関税に関する動きを押さえておこう。
トランプ大統領が相互関税を発表したのは4月3日(日本時間)のことだった。
「トランプ氏の発表を受けて、5日、米国はすべての国や地域に対して関税を一律で10%引き上げました。石破氏は7日、トランプ氏と電話会談を行ったものの、担当閣僚間の協議継続を確認するのが精いっぱいでした」(国際部デスク)
9日午後1時、米国は貿易赤字の大きさをもとに、日本を含む約60の国や地域を対象に相互関税を発動。日本は10%と合わせて計24%の関税が課されることになった。この日の東京株式市場は大幅に下落したが、なによりもダメージを受けたのが米国市場だった。
「米株・米ドルに加え、米国債券まで売られる異例のトリプル安になりました。特に、安全資産のはずの米国債が売られたのは市場関係者に衝撃を与えた。結局、トランプ氏は相互関税発動からわずか13時間後、追加した相互関税分について、中国を除く国・地域では90日間の猶予期間を設けるとの表明に追い込まれたのです」(同)
日本も14%分について約3カ月の猶予が与えられたことになる。もっとも、米中間の貿易摩擦は激化しており、世界の金融市場の動向は予断を許さない状況だ。日本製の自動車や鉄鋼などへの25%の関税も取り払われてはおらず、トランプ政権との交渉が日本の経済界の命運を握っている状況に変わりはない。
日米交渉で米国側の交渉担当者、スコット・ベッセント財務長官(62)らと対峙するのが先に触れた赤澤氏だ。米政権内からは「赤澤? Who? (誰? )」との声も聞こえてくるというが、
「自民党内では、茂木敏充前幹事長(69)や加藤勝信財務相(69)などを推す声が上がっていました」
とは、さる自民党関係者。
「特に茂木氏は、経済再生相として第1次トランプ政権との日米貿易交渉を担った経験があり、適任だとみられていたわけです」(同)
ならば、なぜ赤澤氏が選ばれたのか。
「赤澤氏が自ら米国との交渉窓口に名乗りを上げたと聞いています。石破首相も唯一と言っていい側近ですからやりやすいと考えたのでしょう。ただ、赤澤氏は旧運輸省時代に日米航空交渉を担当したくらいで、外交交渉の経験はほとんどありません」(同)
赤澤氏は東大法学部卒業後、旧運輸省を経て2005年の郵政選挙で初当選した。石破氏と同じ地元、鳥取県選出で、過去には氏の派閥・旧水月会に所属。氏が自民党総裁選で敗れ続けた結果、同期の稲田朋美元防衛相(66)らに出世レースで水をあけられ、ポストに執着するようになったという。
「20年の総裁選で石破氏が敗れた後、赤澤氏は“石破のせいで冷や飯ばかり。おかげで閣僚になれない”と憤まんやる方ない様子で、石破氏から距離を置いた時期もあった。昨年の総裁選では選対事務総長として石破氏を支え、論功行賞で当選7回にして初の閣僚ポストの座を射止めたのです」(前出の自民党関係者)
政治部デスクが言う。
「昨年の総裁選の際、石破選対のトップは選対本部長の岩屋毅外相(67)でした。赤澤氏はNo.2の事務総長なので、現場の記者たちは世論調査の数字などを先に岩屋氏に報告していたんです。そしたらそれを知った赤澤氏が記者らに電話してきて、“なんで岩屋が先なんだ。教えるなら俺だろう”と、怒鳴ったと聞きました」
実際、赤澤氏の“パワハラ体質”はかねて有名だった。氏をよく知る地元政界関係者が明かす。
「赤澤さんはよくも悪くも真面目なんです。例えば支援者が赤澤さんになにか要望したとしましょう。するとその日のうちに、赤澤さんは自身の秘書に“すぐ対応して”と連絡を寄越すそうです。深夜のびっくりするような時間にメールが届くとも聞いています」
赤澤氏は冒頭で紹介した総合対策タスクフォースの共同議長を、林氏と共に務める。その対策本部でも弊害が出始めているという。
「赤澤氏本人は米コーネル大でMBAを取得しているだけあって、英語もできて能力自体が低いわけではありません。ですが、総合対策本部の事務方に細かい注文をつけるのでスタッフらが疲弊し、彼らのやる気をそいでいます」(前出の自民党関係者)
赤澤氏は、部下の業務に干渉する、マイクロマネジメントを平然と行う人物のようなのだ。加えて、
「赤澤氏は訪米時の“お土産”を高圧的に農水省に要求して、森山裕幹事長(80)らからも不興を買っています」(同)
氏が交渉窓口で大丈夫かと心配になるが、肝心の石破首相にも周囲からは不安の声が上がっている。
政府関係者が打ち明ける。
「スタッフは石破首相に、“TPPの各加盟国と共に、米国に対抗措置を取るのも一つの手では”などの提案をしています。でも首相が“TPPはしょせん、安倍案件だ”と、亡き安倍晋三元首相へのライバル心をむき出しにして、そうした案を一顧だにしない。すっかりまわりもしらけてしまって、今の政府内には何か新しく物事を提案するような雰囲気はありません」
こんな調子では、日米交渉の難局など到底乗り切れまいが、石破氏には向き合わねばならないもう一つの大テーマがある。物価高と相互関税を背景にした国民生活を巡る経済対策だ。
政治ジャーナリストの青山和弘氏が言う。
「経済対策として政府与党内で持ち上がっているのが、現金給付案と消費税の引き下げ案です。夏の参院選前に自民党と連立を組む公明党も、現金給付に加えて来年4月からの軽減税率の引き下げを求める可能性が十分にある。ただし、自民党内では消費税の引き下げ案への抵抗感は強いですね」
そこで党No.2の森山幹事長に直接聞くと、
「そもそも消費税が何に使われているかということが大事です。地方自治体の地方交付税や社会保障の財源になっているのですから、消費税を減らすなら今後その財源をどうするのか、考えてからじゃないとえらいことになりますよ。消費税をなくせと主張する政党もありますけど、社会保障を切り下げてしまっていいのかという話です」
消費税減税には否定的なのだ。一方、野党の日本維新の会・前原誠司共同代表(62)の見解は異なる。“軽減税率で8%になっている食料品の消費税を2年間の時限的措置で0%に引き下げる”ことを提案。さらに、
「私たちは現金給付案には反対です。それが経済対策として効果があればもちろん賛成しますが、過去に行われた現金給付を検証してみると実に7割が貯蓄に回っていて、あまり効果がない。それに参院選前に配るというのは、買収行為のように見えはしませんか」
少数与党を率いる石破氏が、経済対策のための補正予算を今国会内で成立させるには野党の協力が不可欠だ。が、さりとて森山氏らの意見もむげにはできまい。
「週刊新潮」2025年4月24日号 掲載
新潮社
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