( 285181 )  2025/04/23 03:23:43  
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大阪・関西万博の開会式であいさつする吉村洋文大阪知事 

 

「万博がこけたら、維新もこける、終わってしまう。いま、2人寄れば、そんな話で持ち切りですよ」 

 

 こう話すのは、日本維新の会の国会議員、A氏だ。 

 

 4月13日に大阪・関西万博が開幕したが、初日から問題山積だった。 

 

 13日は午後から雨風が強い悪天候となったが、万博の目玉である木造建築の「大屋根リング」を含め、会場内には雨風を防ぐ場所が少なく、あちこちで悲鳴があがった。傘や雨合羽は売り切れ。パビリオンや飲食店には入場を待つ人たちが雨に濡れながら長い行列をつくった。とりわけ問題になったのは、会場への入退場。入場は電子チケットのコードをかざす方式だったが、インターネットがつながりにくく、長い行列ができた。午後になると嵐のような天候に帰宅する人が続出したが、一方で午後に来場してくる人もいる。大動脈の地下鉄夢洲(ゆめしま)駅では、来る人、帰る人がぶつかり合う形になり、地下鉄に乗ろうとしても1時間以上かかる時間帯もあった。 

 

「どうなってるねん。並ばない万博やないのか」 

 

 と食って掛かる来場者もいたし、SNSでは、〈 

 

。 

 

 4月16日、維新の代表で、国際博覧会協会の副会長でもある大阪府の吉村洋文知事は記者会見で万博について、 

 

「万博会場には初日から3日続けて足を運んでいるが、多くの方が笑顔で楽しんでいただいている」 

 

 と言ったものの、初日に噴出した問題については厳しく受け止めているようで、改善の必要性を明言した。 

 

「初日は、午後から嵐のような荒天で、横殴りの雨と非常に強い風。ブルーインパルスの飛行が悪天候で中止になる状態でした。入場退場のオペレーションについては、雑踏事故防止のために一定制限をしたことで混雑が生じた。安全対策のためと聞いている。始まったところなので、できるだけ平準化のオペレーションをしていき、スムーズな入場を実現するように改善を重ねていくことが重要だと思っています」 

 

 初日の惨状が響いたのか、朝日新聞社が4月19、20日に実施した世論調査では、大阪・関西万博に、「行きたい」が32%で、「そうは思わない」65%の半数以下だった。 

 

 

■カジノとの相乗効果で万博誘致を訴えた維新 

 

 万博の誘致を推し進めたのは維新だ。2014年、維新の創立者で当時大阪府知事だった松井一郎氏らが、1970年の大阪万博に次ぐ、大阪で2度目の万博誘致促進を打ち出した。会場候補地に夢洲を「私案」としてあげたのも松井氏だった。夢洲にはカジノを含む統合型リゾート(IR)の誘致も進めており、松井氏は当時、「IRと万博がともに実現すれば、相乗効果が見込まれる」と訴えていた。 

 

 だが、夢洲は海上に浮かぶ廃棄物の埋め立て処分場だった場所。このため、万博会場の工事中に地中からメタンガスが出てガス爆発を起こし、四方が海に囲まれているため強風が吹きつけ、地盤の排水が悪く雨が降るとため池のようになるなど、様々な問題が噴出する一因になっている。 

 

 維新が強力に推進し、政府に認めさせ、誘致を実現した大阪・関西万博だけに、万博の失敗は維新にはねかえってくる。とりわけ今後大きな問題となりかねないのが、万博の収支だ。赤字になったときにどこが負担するかは決まっていないが、税金で補填する可能性が出てくるため、批判が高まるのは間違いない。 

 

■前売り券販売は目標の7割足らず 

 

 万博の来場者は、開幕初日に15万人の人出が見込まれていたが、悪天候のため一般入場者(関係者除く)は11万9千人だった。2日目は5万1000人、3日目は4万6000人で、初日の半分にも達しなかった。日本国際博覧会協会(万博協会)が想定する来場者数は2820万人。開催日数184日で計算すると、1日あたりの入場者数は15万人ほどが必要となるので、遠く及ばない。 

 

 これまでの万博では、来場者は会期が進むにつれて増える傾向があったが、夢洲は海に囲まれて交通アクセスが制約され、週末や祝日に1日あたり数十万人もの人が来場する“大入り”を想定できていない。来場者が次第に増えてきても、受け入れ態勢が取れない可能性がある。 

 

 1160億円を見込む万博の運営費の大半は入場料収入で賄うことになっているが、万博協会の4月21日の発表によると、前売り券販売数は約970万枚。目標としていた1400万枚の7割にも達しなかった。 

 

 吉村知事は開幕前、入場券販売の「損益分岐点は1800万枚」と言い、「クリアできると思っている」と言ってきたが、21日の記者会見では、次のように少しトーンダウンした。 

 

「損益分岐点がすべてではない。万博にはもっと大きな意義があると思っていますが、損益分岐点1800万枚は、目標にして進めていかなければならない」 

 

 

■「万博が赤字なら政局になりかねない」 

 

 維新の公約は「身を切る改革」だけに、冒頭のA氏は、「万博の赤字は公約違反になる」と苦い表情だ。 

 

「維新は選挙で万博の開催と成功を公約のように掲げてきたが、初日に限れば万博は大失敗でした。維新内部でも、大阪選出議員と大阪以外の議員との間では、万博について温度差がかなりある。『万博に失敗すれば大阪のせいだ』という議員もいる。維新の支持は失速しているが、万博が盛り上がらないと、さらにダメになりそうな空気がある」(A氏) 

 

 自民党衆院議員のB氏は、4月12日にあった開会式のため万博会場を訪れ、こんな感想をもったという。 

 

「正直、魅力があまりないなと思った。リングの展望はなかなかだが、これが万博の目玉かという感じだ。日本館も『何、これ?』『しょぼいな』という議員の声が多く聞かれた。目標の2820万人はとうてい無理だろうし、地下鉄駅が一つだけで、1日に50万人、100万人といった来場は無理でしょう。当然、赤字になった時のことは気になった。国として誘致しているが、これで赤字が出たとき国で負担するとなれば、ちょっと国民の理解は得られないなと。維新さん、大阪府などに頑張ってもらうしかない」 

 

 開会式には石破茂首相も訪れ、公式キャラクター「ミャクミャク」と握手し、笑顔で記念撮影にも応じていた。B氏はこう話す。 

 

「石破首相も万博が赤字なら、別の政局になりかねない。いまは少数与党なので、新年度予算案も、維新の協力でなんとか可決した。赤字になって維新への批判が高まり、党内で政局となって分裂するようなことになれば、与党としても対応が大変だ。赤字になったら国としても知らん顔はできない。入場者は少なくてもいいから、チケットが売れて、万博が黒字になってほしいと祈るような気持ちですよ」 

 

(編集部・今西憲之) 

 

今西憲之 

 

 

 
 

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