( 286866 )  2025/04/29 03:23:36  
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予期せぬ批判ポストの殺到に、国民民主党を率いる玉木雄一郎代表も頭が痛そうだ(写真:時事) 

 

 「いろんな報道があるが、私が公党の幹事長として決めて発表することがすべてだ」。国民民主党の榛葉賀津也幹事長は4月25日の会見で、少しいら立った様子でこう述べた。 

 

 4月9日、日本維新の会を離党した足立康史・前衆院議員が次期参議院選挙で大阪府選挙区から出馬するとの報道が出た。「20日に大阪駅前で行われる街頭演説会で披露される」と具体的な内容だったが、SNSでは賛否両論が大いに飛び交った。「連合(日本労働組合総連合会)が強く反対している」との話もあり、国民民主党は最終的に同選挙区での足立氏の擁立を断念した。 

 

 ただ、問題は足立氏だけにとどまらなかった。昨年の衆議院選挙以降、高い国民人気を集めてきた同党に対して、ここに来て「 

 

」「 

 

」といったハッシュタグのついたSNSのポスト(投稿)が相次いでいるのだ。 

 

■足立氏よりも強い拒否反応があった候補者 

 

 22日には菅野(旧・山尾)志桜里・元衆院議員が比例区から出馬と報じられたが、こちらへのSNSの反応はさらにすさまじかった。賛成するポストが極めて少なく、ほとんどが強い拒絶だった。 

 

 原因は「不倫問題」だ。2017年に蓮舫氏に代わって民進党代表に就任した前原誠司氏は、目玉人事として菅野氏を幹事長に抜擢しようとした。しかし、弁護士の倉持麟太郎氏との不倫関係を報じた“文春砲”でその人事は吹き飛び、菅野氏は民進党を離党した。 

 

 問題はそれだけでは終わらなかった。民進党の動揺をチャンスとみた安倍晋三首相(当時)は衆院解散に打って出たことで、民進党の分裂が決定的になる一因となった。 

 

 当時の菅野氏の言動には得手勝手ぶりも目立った。離党会見では、準備していた書面を読み上げるのみで、記者からの質問を無視して立ち去った。そもそも民進党を離党する会見を、民進党控室で行うことが異例だった。 

 

 菅野氏は衆院選で辛勝した後に立憲民主党に入った。だが、2020年3月には新型コロナウイルス感染症対策の特別措置法に「国会の承認」が入らなかったからとして、「立憲民主党には立憲主義がない」と啖呵(たんか)を切って離党した。 

 

 6月には嬉々として国民民主党に入党したものの、当選同期の玉木雄一郎代表以外のメンバーとの間には微妙な空気が存在した。 

 

■見切り発車を党本部が制御できず 

 

 菅野氏の比例出馬報道と同じ日には、同党の平岩征樹衆院議員が女性問題を告白。既婚者であることを隠し、偽名を使って女性と交際していた平岩氏には、翌23日に無期限の党員資格停止処分が決まった。 

 

 

 同じ不倫問題でも、発覚から処分まで22日間をかけて「役職停止3カ月」が決まった玉木氏とは“悪質性”が異なるということだろう。しかし、多くの有権者はそうした区別をしていない。「菅野」「玉木」「平岩」と不倫問題を抱えた3人を並べ立て、「不倫まみれ」「二度と投票することはない」などと非難するポストが多かった。 

 

 榛葉氏は3月7日の幹事長会見で、昨年の東京都知事選に出馬した蓮舫氏の国政復帰の噂を受け、往年の特撮番組「帰ってきたウルトラマン」をもじって「帰ってくるのはウルトラマンと蓮舫さん」と揶揄した。 

 

 一方、4月25日の会見では「蓮舫さんは国政には戻らない旨を発言。惜敗して捲土重来で国政を目指している人とは違う」と弁明した。2021年の衆院選では出馬を断念し、2024年の衆院選にも出なかった菅野氏についての言及を避けた形だ。 

 

 また、足立氏が4月16日付で支持者に向けて準備した「挨拶文」に「玉木雄一郎代表と榛葉賀津也幹事長から出馬することを勧められた」と記載していたことについて、榛葉氏は「前のめりになったり、慎重になったり、いろんなことがある」と述べた。要するに、「見切り発車を党本部が制御できなかった」ということだろう。 

 

 23日には、国民民主党が須藤元気・前参院議員と薬師寺道代・元参院議員を比例区で擁立する方針であることが報じられた。須藤氏は2019年の参院選で立憲民主党から比例区で出馬し、7万3787票を獲得して当選。翌年にはれいわ新選組の山本太郎氏に傾倒して消費税減税を主張し、同党を離党している。 

 

 薬師寺氏は2010年の参院選でみんなの党の公認を得て愛知県選挙区で当選。同党の解党後に自民党に入り、2019年の参院選で広島県選挙区の「自民党の2人目の候補」として名前が挙がった。紆余曲折を経て、2024年の衆院選では九州ブロックの28位で擁立されたが落選した。 

 

 久留米市出身の薬師寺氏は、自民党最高顧問の麻生太郎元首相に近く、「国民民主党とのリエゾン(橋渡し役)」として使われている可能性がある。麻生氏は「玉木はいいねえ」と言ったとされ、衆院で与党が過半数を割った今、「国民民主党を入れた大連立の構想者」の1人とされる。 

 

 石破茂首相を嫌悪する麻生氏は、昨年の自民党総裁選でも「反石破」を貫いた。次期参院選でも危機感を募らす自民党において、「自民党を救う」という名目で倒閣に動いても不思議はない。そして、その“足がかり”を国民民主党に作ろうとするのなら……。 

 

 

■“バブル”で終わらせないために何が必要か 

 

 冒頭で述べたように、榛葉幹事長が牽制しているにもかかわらず、さまざまな臆測が乱れ飛ぶ背景には、急速な党勢の伸びに対して候補者選定能力が追いついていないという国民民主党の問題がある。 

 

 昨年の衆院選では比例区で擁立した候補者の数が足りず、東海ブロックで2議席、北関東ブロックで1議席を他党に譲ることになった。次期参院選ではそういうことがないようにまずは数をそろえたいのだろうが、“国民民主党バブル”に乗っかろうとする輩がいることも事実だ。 

 

 昨年の衆院選での躍進を“バブル”で終わらせないためにも、「対決より解決」をスローガンとする国民民主党は「国益より党益」になってはいけない。国民の期待に対して、同党は真摯に応えようとしているのか。 

 

安積 明子 :ジャーナリスト 

 

 

 
 

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