( 287796 )  2025/05/02 06:15:00  
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トランプ米政権が日本の非関税障壁とする自動車の安全基準は、ほとんどが国連協定で定めた国際基準に基づく。唯一の多国間による相互承認協定のもと、加盟国からすれば自動車が無関税の日本は「輸出しやすい国」だが、未加入の米国にとっては不満の矛先となった。独自ローカル基準の米国から主流派の日本が変更を迫られている。 

 

■61カ国・地域が採用 

 

「国際的なルールに沿っている国からすれば、日本は車を売りやすくて仕方がない国だ」。米側の指摘に対し、国土交通省の担当者は反論した。 

 

トランプ氏は、歩行者の頭部が車体にぶつかる事故を想定した日本の試験について「車のボンネットの6メートル上からボウリングの球を落とし、車体がへこんだら輸入不合格となる」と非関税障壁の例に挙げてきた。試験では球状のダミーを使うことからそう揶揄(やゆ)したとされるが、実際は車体がへこまなかったら試験はおおむね不合格となる。 

 

これらの試験方法や安全基準は、国連の「1958年協定」に加盟する日本や欧州など61の国・地域が採用。加盟国間で輸出入する場合、共通の基準項目で新たに認証を得る必要がない。 

 

国交省が定める乗用車の安全基準は全47項目中43項目が国際基準。残り4項目は道路事情の違いなどを理由に国際基準自体が定められていない。 

 

一方、米国は独自基準「FMVSS」(連邦自動車安全基準)を採用。自動車基準認証国際化研究センターによると、日本との主な違いは「歩行者保護」を目的とした基準がなく、前出のダミーを使った衝突試験は義務付けられていない。逆に厳しい基準もある。衝突時にドライバーがシートベルトを未着用でも、負傷の度合いが軽くなるような措置を求められる。 

 

■米ではメーカーが認証 

 

米国が多くの国と最も異なるのが、試験・認証を政府ではなくメーカーが担うことだ。同センターの笠井高樹研究部長は「『訴訟の国』である米国では、不具合があればリコールされ、メーカーの責任で膨大な賠償金を支払う。だからメーカーが自己認証する」と説明。政府間で認可を相互承認する1958年協定に加盟できない理由だ。 

 

日本が基準緩和を交渉カードにするのは、基準が強化されている世界の潮流に逆らうことになるため、簡単ではなさそうだ。(福田涼太郎) 

 

 

 
 

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