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インタビューに応じる国民民主党の玉木雄一郎代表【時事通信社】 

 

 夏の参院選で躍進しそうな政党といえば、最近の世論調査からみて国民民主党が一番手だろう。もし衆院に続き、参院でも自民、公明の与党が過半数を割った場合、石破茂首相は退陣を余儀なくされる。その場合、連立与党の組み換えや、国民民主の玉木雄一郎代表を首相にかつぐ「玉木首相論」さえ永田町では取り沙汰されている。果たして、自民は政権維持のため玉木氏を取り込もうとするのか。野党陣営は政権交代を目指し、どこまで結束できるか。内閣不信任案の可決に伴う衆参ダブル選挙の可能性も決して消えたわけではない。玉木氏に国民民主の今後の対応や胸中を聞いてみた。(聞き手=時事通信解説委員・村田純一、政治部・木田茜) 

 

新「国民民主党」の結党大会で撮影に応じる所属議員たち=2020年9月15日、東京都千代田区【時事通信社】 

 

 時事通信の月例世論調査によると、2020年9月、立憲民主党に加わらずに15人で結党した新国民民主党の支持率は毎月1%前後で、「視力検査のような数字」(玉木氏)がずっと続いていた。支持率0%を記録したこともあった(21年9月)。しかし、石破政権発足後、衆院選を経て支持率は急上昇。25年に入って、国民民主は野党第1党・立憲民主党の支持率を4カ月連続で上回った。まずは支持率上昇の感想や要因を聞いた。 

 

 「時事の調査が(支持率)ゼロだったんで、頑張ろうと思ったんですよ」。笑いながら答えた玉木氏は、次のように続けた。 

 

 「結党以来同じことを言っているんですよ。世の中のちょっとしたきっかけで、支持率は低い時も高い時もある。今の高い支持率は低くなるかもしれないし、低い支持率は高くなるかもしれない。でも正直、しんどかったですよね。(旧国民民主党の解党により)多くの人が大きな政党・立憲民主党に行く中で、私たちは政策・理念をしっかり守る政党をつくろうと15人で国民民主党を立ち上げた。そうは言っても、ずっと鳴かず飛ばずだった」 

 

 旧国民民主党は18年5月、旧民進党に旧希望の党が合流して62人で発足。その後、立憲民主党が規模を拡大し、同党に加わらなかった15人が20年9月、新たな国民民主党を結党し、玉木氏が代表に就いた。 

 

「24年衆院選を機に、『見つけてくれた人が増えた』というのが正直な印象。何か新しい政策、武器を見つけたから強くなったんじゃない。アーティストと一緒で、同じ曲を同じ順番で歌っていたんですけど、選挙の時にはメディアもある程度、公平に報道してくれますから、こういう政党があるんだなと、みんなの目の前に触れる機会が増えて、その結果、知っていただき、『いいこと言ってるじゃん』ということで支持が広がってきたと思う。 

  平時に小さい野党の支持は増えない。ただ、選挙が勝負なんですよ。選挙の時にいかに多くの人にアピールできるかという意味では、選挙を重ねるしかない。国民民主の比例代表得票数はちょっとずつ増えてきた。259万票(21年衆院選)、316万票(22年参院選)、617万票(24年衆院選)と。 

 大型選挙ごとに2割ずつ増やしていこうというのは、前原誠司さん(現日本維新の会共同代表)と争った国民民主党の代表選挙の時から掲げた中期戦略。早く600万票を取れる政党になれば、公明党、共産党並みの政党になれるので、日本の政治の中でも中核的な役割を果たせる。まずは600万票を比例で取れるような政党にしようと明確に掲げてました。想定より早く実現しました」 

 

 

 「それを実現した要素が二つあって、(『手取りを増やす』などと)選挙で同じことを言ってきたから目立ったということもあるけど、それ以外にまず、若者世代、現役世代にターゲティングした(狙いを定めた)ということ。 

 でも、これは賭けでした。はっきり言って。やっぱり人口の多い高齢者と、投票率の高い高齢者を相手にしなければ選挙は勝てない、というのが今までのセオリーだった。与党だろうが野党だろうが、自民党も公明党も、立憲民主党もある意味、高齢者重視の政策をやってきた。 

 例えば、与党はよく給付金を配る政策をやるが、住民税非課税世帯の4分の3は高齢者ですから。一方で立憲民主党も紙の保険証を残すような政策を出し、どっちもある種、シルバー民主主義を体現した政党ですよね。 

 そこで、私はいつも『世代会計』という言葉を演説で使っているんですけど、若い人は今のままだと非常に厳しい制度にさらされているというか、特に若い人の税負担と社会保険料負担で、(高齢者ら)みんなを支えることになっているんで。賃上げしたって、税と保険料が多かったら、手取りは増えないんですよ。その意味で、むしろ税金を払っている人、現役世代にターゲッティングしたというのが一つ」 

 

インタビューに応じる国民民主党の玉木雄一郎代表【時事通信社】 

 

 「もう一つは、やっぱりSNSですよね。よく、『玉木さん、SNSうまいですね』と言われるけど、そうじゃなくて。小さな政党になったので、既存メディアが全く取り上げてくれなくなったわけですよ。その時に背に腹は代えられなくて、当時の走りだったユーチューブあるいはX(旧ツイッター)に飛びついたというのが実態で。ただ結果として、SNSをはじめとしたメディアの重要性が高まる中で、先行したメリットを生かせたという感じですね」 

 

玉木氏の動画チャンネルは、政局や政策などの解説が分かりやすいと評判が良く、アーカイブも多数残っている。他の政治家に比べ、視聴回数や登録者数が圧倒的に多いことでも知られている。 

 

 「私もよく新人議員に言うんですけど、選挙になったからといって、急に(動画)アカウントを設けて、業者に頼んだようなカッコいい動画を上げても全く意味がない。ふだんから日常活動や日常風景を上げて、それがあるきっかけでヒットしたら、それを全部見てくれるようになる。アーティストと一緒で、TikTok(ティックトック)で当たったら、『こんないい曲も書いているんだ』と思われ、売れていくんですよ。政治家なんで、役所や役人と同じことを言っても意味はないから、多少発言は踏み込みますけど、一定の政策的な整合性、特に経済政策については裏を取るように、そこは注意して全体像として矛盾がないようにつくってあるんですね」 

 

 

インタビューに応じる国民民主党の玉木雄一郎代表【時事通信社】 

 

  国民民主党は「消費税5%」への引き下げを政府に求めているが、それはなぜか。物価高や「トランプ関税」を受けて、与野党を問わず、消費減税を求める声が高まっているが、「参院選目当て」との批判もある。 

 

 「『参院選目当て』というのは、極めて心外で、消費税一律5%、賃金上昇率が物価上昇プラス2%になるまで、というのは21年衆院選の時に1回掲げている政策なんですよ。みんな、きのうきょう思い出したようにいろんな新しいことを言ってますけど、われわれも4、5年前から同じことを言い続けているんです。あとは、社会の状況が、条件を満たすか満たさないかの話で、去年の衆院選でも掲げていました」 

 

 「最近言わなかったのは、春闘の結果、少なくとも大企業は2年連続で賃上げ率が5%を超えた。今は物価上昇率3%ぐらいで、賃金上昇率が5%を連続して超えるようになってきたら、さすがに減税して経済を刺激する必要もないだろうと。やり過ぎると、インフレになっちゃうんで。経済状況が消費税減税を必要としないような状況に回復しているなと見えてきたので、減税の主張は一時やめていたんです。ただ、トランプ米大統領による相互関税により、世界が大恐慌になる可能性があると言われている状況の中では、再び賃金上昇率が低下して、中小企業の賃金上昇率が5%未満になる可能性が高くなってきた。だから、いま一度その条件を満たさないのであれば、消費税の一律減税という当初の政策をもう1回検討する必要があるだろうと…」 

 

 「参院選目当てというより、トランプ関税で景気の先行き、特に賃金上昇率が低下する傾向が見えたので、再び言っているだけです。なぜ一律かというと、複数税率を前提にすると、インボイス(適格請求書)が絶対に要るんです。インボイスは中小企業、小規模事業者にすごい負担をかけていますから。われわれは、インボイスはなくてもいいと訴えてきたし、下げるなら一律。これまで言ってきたことを引き続き言っているだけです」 

 

消費税をいったん引き下げたら、次の引き上げは難しくなるとの懸念もある。 

 

 「もしそういう心配をするんだったら、まずやるべき法改正は、消費税の税率の変更を政令でできるようにしたらいいんですよ。例えば、電気代の変更は、すべての家計に負担を求めているにもかかわらず、省令でできるんです。税率の変更を常に国会にかけるから大もめするので…。財政民主主義の観点でどうかという議論があるんですが、上げたり下げたりする成功、失敗は選挙で問えばいいから、与えられた期間の中での消費税の上げ下げは、政省令レベルで変更できるように法改正すべきだ。英国はそうなっている。政府の機動的判断でできる。(日本では)消費税も政治的なトラウマになっていて、上げると内閣が吹っ飛ぶようなことをしてきたので、なかなか上げ下げできないんですよ」 

 

 

 夏の参院選対応での野党共闘はなかなか難しい状況になりつつある。国民民主党の目標は、改選議席(4議席)の4倍増の16議席を獲得し、非改選の5議席と合わせて計21議席とすることだ。東京、神奈川、千葉、埼玉、福岡など複数区で候補を擁立。32の1人区では、野党候補が今のところ一本化している選挙区もあれば、福井、滋賀、奈良のように立民、国民両党の候補者が競合する選挙区もある。国民民主は今後、参院選にどう臨もうとしているのか。 

 

 「次の参院選は、日本の政治を変える選挙にしたいと思っていますから。われわれとしては、変革の旗手として、国民民主党を選んでいただきたいと思っているし、時事通信も含め各社の世論調査で野党トップの支持を得ているということは、自民党の石破政権に代わってどの政党を選ぶのかという時に、最初に選ばれるのがわれわれになっているということであれば、公党として、その選択肢を国民に示す責任も出てきているのかなと、最近強く自覚しています。 

 だから、まだ空白区もあり、まずそこをしっかり埋めていくということ。全国にできるだけ幅広く、選挙区でも国民民主の受け皿をつくっていくのが、今の民意に応えるわが党としての責任の果たし方だと思っています」 

 

 以下、やりとりを続ける。 

 

 ―32ある1人区で、候補者を立てられるところは立てるということか。 

 

 「立てます。立てます。できるだけ立てます」 

 

 ―全部の選挙区に立てるぐらいの勢いがあるのでは。 

 

 「全部立てるぐらいの勢いでやらないと。いい候補者がいるかいないかにもよるが、ここはだめ、ここはいいとか言っていたら、候補者はなかなか集まりにくいので」 

 

 ―立民側から具体的な共闘の呼び掛けは。 

 

 「呼び掛けはありません。衆院選が終わってから、(立民代表の)野田佳彦さんとは一言も話していません」(注=4月24日現在) 

 

 ―本当ですか。 

 

 「いや、ほんと、ほんと。立憲民主党はうちとどうこうするより、党内をまとめる方が大変なんじゃないですか。われわれは、比例代表1000万票を目指したいですね。複数区は基本的に全部候補者を立てる。1人区もできるだけ立てる。東京は2人擁立したので、二つ取りにいきたいと思います」 

 

 

 
 

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