( 289686 ) 2025/05/09 06:51:57 0 00 決算発表するトヨタ自動車の佐藤恒治社長(8日、東京都中央区で)=米山要撮影
トヨタ自動車は8日、2026年3月期連結決算(国際会計基準)の業績予想を発表した。最終利益は前期比34・9%減の3兆1000億円になる見通しだ。世界販売は好調に推移すると見込むが、トランプ米政権の関税措置や円高が業績を押し下げる。他の自動車大手にも高関税の影響が広がる可能性があり、経済への打撃が懸念される。
売上高にあたる営業収益は1・0%増の48兆5000億円を見込む。ハイブリッド車(HV)の好調な売れ行きを背景に、世界販売台数は約13万台増の1040万台とした。
一方、本業のもうけを示す営業利益は20・8%減の3兆8000億円と予想。関税の影響は4、5月の2か月分だけで1800億円の減益要因となると見積もる。6月以降の影響は織り込まなかった。政府は自動車への25%の関税撤廃などを求めて米側と交渉を進めるが、高関税が続けば収益はさらに圧迫される。
為替の円高は通期で7450億円の減益要因となる。26年3月期の為替レートは1ドル=145円と、前期の同153円より8円の円高・ドル安を想定。トヨタは対ドルで1円円高が進むと利益が500億円削られる。対ユーロでも円高が進んでおり、影響額が膨らむ。
資源価格の高騰や、次世代車に欠かせないソフトウェア開発への投資も重荷になる。佐藤恒治社長は記者会見で「足元では通商関係をはじめ、自動車産業の環境が大きく変化している」と警戒感を示した。
製造業の復活を掲げるトランプ政権は自動車メーカーに対し、米国内での生産を求める。日本の自動車大手の一部も生産を移管する方針を示すが、雇用や技術継承を重視するトヨタは国内生産について「300万台」体制を維持する構えを示してきた。
佐藤社長は「国内生産を守っていくことはものづくり産業で非常に重要。揺るがずに守っていきたい」と強調した。一方で「中長期的には現地の顧客に適した商品を現地で開発し、現地で生産していく」とも述べ、将来的に一段の現地化を進める考えも示唆した。
併せて発表した25年3月期の連結決算は、円安の影響や値上げの効果により営業収益が6・5%増の48兆367億円と過去最高を更新した。ただ営業利益は10・4%減の4兆7955億円、最終利益は3・6%減の4兆7650億円と、2年ぶりの減益となった。電気自動車(EV)など将来に向けた先行投資がかさんだ。
トヨタ自動車の決算記者会見での佐藤恒治社長、宮崎洋一副社長と記者団の主なやりとりは次の通り。
――米国の関税政策への対応は。
佐藤氏 短期、中長期でやることは変わってくる。(日本から)米国への輸出分は年約50万台。短期的には仕向け地の調整も考えていくべきだと思う。中長期的には現地に適した商品を現地で開発し、現地で生産する形をしっかり取っていく。
――国内で年300万台の生産体制は維持するのか。
佐藤氏 揺るがずに守っていきたい。サプライチェーン(供給網)を守りながら取り組み、輸出することで外貨を稼ぐ。国内生産を守っていくことは、ものづくり産業にとって非常に重要だ。
――関税負担を車両価格に転嫁する考えはないか。
宮崎氏 的確なタイミングで対応していきたいが、短期で関税があるから値上げをするという場当たり的な対応はとらない。
――豊田自動織機による株式の非公開化の検討など、グループ企業のあり方をどう考えているか。
佐藤氏 グループ全体でどのようにフォーメーションを組んでいくかが非常に問われる。それぞれが強みを持ち、何を引っ張るかが大事だ。豊田織機は源流企業で、重要な企業であることは変わりない。
――2026年に年150万台とする電気自動車(EV)の世界販売計画は見直すのか。
佐藤氏 各地域でEVの実需が見えてきている。数字は見直しをかけていく。
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