( 289801 )  2025/05/10 04:20:37  
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入館まで3時間待ちとなっていたアメリカパビリオン 

 

 ゴールデンウイーク期間中の5月4日、朝から快晴の大阪・関西万博を訪れた。会場全体はそれほど混雑した様子ではないが、いくつかの人気パビリオンには長蛇の列ができていた。 

 

 アメリカパビリオンでは、予約がない人は「3時間待ち」という表示。中には並ぶことすらできない「受付制限中」というプラカードを掲げるパビリオンもある。 

 

 人気パビリオンの一つであるフランスパビリオンのスタッフに聞くと、こう話した。 

 

「ここのパビリオンは予約が必要ですが、フードコートなどは関係なく入れます。ゴールデンウイークはすごい人出になって、多いと1日20万人くらい来るんじゃないかと上の人から聞いていたのですが、そこまでは混雑していないという感じもある」 

 

 地下鉄夢洲駅前の東ゲートから午後3時ころに入場した奈良県の女性に聞くと、 

「行列はありましたが、30分もかからずに入れました。もっと混んでいると覚悟してきたので拍子抜けですよ」 

 と笑っていた。 

 

■GWの1日来場者は最高でも約13万人 

 

 万博協会が想定した万博の来場者数は2820万人。開催日数184日で割ると、1日あたり15万人以上の来場が必要となる。過去の万博でも開会当初の来場者は少ない傾向があったとはいえ、大阪府・市が中心となって設置した「2025大阪・関西万博 交通円滑化推進会議」の資料を見ると、ゴールデンウイーク期間は1日あたり17万人ほどの人出を見込んでいたことがわかる。 

 

 万博協会によると、実際のゴールデンウイーク期間中の来場者数は次のような推移だった。 

 

 4月29日:約9万8千人、30日:約10万1千人、5月1日:約10万6千人、2日:約10万5千人、3日:約12万1千人、4日:約13万1千人、5日:約12万1千人、6日:約7万4千人(速報値含む)。 

 

 17万人どころか、1日平均の想定である15万人に達した日すら1日もなかったことがわかる。しかも、この来場者数には、「水増し」という指摘が出ている。 

 

 万博協会は5月3日、来場者が200万人を突破したと発表したが、この来場者数はスタッフや報道機関などAD証というパスで入場する関係者を含めた数字だ。AD証を使った入場者は1日あたり平均で約1万8千人いる。関係者数を差し引いて、一般来場者数だけで数えると、200万人突破は5月6日だった。 

 

 

■「水増しとの声が出るのは仕方ない」 

 

「AD証で入場する関係者数もカウントして、水増しのような発表をしているとネットで疑念の声が出ているのも仕方ない」 

 

 こう話すのは、万博会場で会った大阪府関係者のAさん。 

 

「府庁でも、関係者数を入れた数字で、100万人、200万人を超えたと区切りのいい数字で喜んでいますが、大丈夫なのかと首をかしげている職員がかなりいます」(Aさん) 

 

 なぜ、AD証で入場した関係者を入れてカウントしているのか。万博誘致にかかわる経済産業省の幹部に取材すると、こう打ち明けた。 

 

「2820万人、1日あたり15万人という想定が高すぎたのではないかと痛感する。万博を誘致するには、それくらいの数字を出さないと当時はダメだったのでしょうが、日がたつにつれ、重くのしかかってくる」 

 

 2820万人という想定来場者数は、日本政府が2017年9月に博覧会国際事務局(BIE)に提出した25年万博の提案書に書かれていた。日本はこの提案書をもとにプレゼンを行い、18年11月にあったBIE総会の投票でロシアとアゼルバイジャンを破り、万博開催を決めている。その後、19年にBIEに提出した登録申請書にも2820万人という来場者数見込みは記載されている。 

 

 では、この2820万人には、AD証で入場する関係者は含まれるのか。 

 

■万博協会と担当大臣で食い違い 

 

 万博協会は想定来場者数の2820万人には、スタッフや報道機関などAD証で入場する関係者を含めるという見解を明らかにしている。 

 

 だが、4月25日の記者会見で伊東良孝万博担当大臣は、2820万人にAD証で入場する関係者数が含まれるのかと聞かれ、こう答えた。 

 

「BIEに登録申請書を提出した当時は、関係者を含むのか、含まないのかといった精緻な議論はされていなかった。一方で、博覧会協会で運営費などの議論をする際には、2820万人はチケット購入者が前提で考えてきた」 

 

 万博協会の見解と異なり、チケットを購入した一般入場者数だけで2820万人という前提だったというのだ。 

 

 

■例外的なドバイ万博を前例にした 

 

 また、伊東大臣は、なぜ関係者数を入れた来場者数で発表するのかという質問には、こう答えた。 

 

「直近のドバイ万博の例にならい、BIEとの議論も踏まえ、チケットによる入場者に加え、関係者の数を足し合わせた数を来場者として公表している」 

 

 ドバイ万博の「前例」にならったというのだが、ドバイ万博は例外的な万博だった。コロナ禍と重なって1年遅れで開催し、集客に苦労したため、入場料を割り引いたり無料券を配布したりと来場者数を増やす施策をあれこれとって、2400万人超の来場者数を達成した。その背景に、ドバイ政府が入場料収入よりも、国威発揚のために来場者数の目標達成を重視した事情があると指摘されている。日本の万博が、ドバイにならう必要があるのだろうか。 

 

 万博協会の副会長でもある大阪府の吉村洋文知事は、関係者数を入れた公表が水増しではないかとの指摘について、こう否定している。 

 

「一般入場者が何人、AD証が何人と内訳を示して公表しているので水増しにはならない。なぜそんなことをしているのかといえば、ドバイの万博でAD証の対象の方も含めて発表している。趣旨として万博はみんなで作り上げていくものなので、AD証などの人も含めている」 

 

■「入場者を多くカウントできることを優先」 

 

 開幕前から万博会場に10回以上訪れているという維新の大阪府内の地方議員Bさんは、 

「万博の成否には、維新のメンツと将来がかかっている」 

 と話す。大阪への万博誘致を提唱し、推し進めてきたのは維新だ。 

 

「万博がうまくいけば、維新がやった、功績だとなる。その条件が入場者数と黒字になるかどうかの2つ。6月に東京都議選、夏には参議院選挙が予定される中で、入場者数が目標に達しなさそうだ、赤字になるのではとニュースになると、選挙にも影響する。万博は日本の国が誘致しているが、世間的には万博イコール維新です。まずはAD証を含めてでも、入場者数を多めにカウントできることを優先したと聞いている」 

 

 

■「万博を政治利用しまくっている」 

 

 吉村知事は維新の代表でもある。Bさんはこう続ける。 

 

「そりゃ、吉村さんも水増しなんて認めたら選挙に影響しますから、そう言うしかなかったのでしょう。維新の幹部からは『万博を売り込め』と徹底して言われています。ゴールデンウイークは地元でイベントも多く、学校の校長先生などを見かければ必ず、『子どもは無料招待なので学校単位で万博へ』とPRしています。維新が議会で優勢な自治体の学校が、万博に学校単位で行ってくれている割合が高いのも事実。地元の人を引率してすでに何度か万博に来ている維新の議員もけっこういます。今後、入場者数が伸びないなら、無料招待が高齢者などに拡大される可能性もあるそうです。万博の成功が、入場者数と黒字にかかっているので、なりふりかまわずってところではないでしょうか」 

 

 事実、維新のある国会議員と4月に万博で会ったときは、地元の支援者を連れて万博を案内していた。 

 

「ガイドさんですね」 

 と声をかけると、この議員は、 

「いや、いろいろとあります。仕方がない。選挙も近いしね……」 

 と苦笑していた。 

 

 まるで万博が「政治利用」されているようにも映るが、Bさんは言う。 

 

「政治利用? 万博を公約にしていたようなものですから、利用しまくっている。しょうがないですよ。維新が選挙に勝つには、今は万博の成功しかネタがないのですから」 

 

(編集部・今西憲之) 

 

今西憲之 

 

 

 
 

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