( 289891 )  2025/05/10 06:00:55  
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“令和の米騒動”出口はどこ? 

 

備蓄米の放出後も、高止まりが続くコメ価格。政府は備蓄米の入札に必要な“1年以内に買い戻す”という条件の緩和を検討していることが8日、分かりました。 

 

ただ、この“令和の米騒動”。消費者の需要に対し、生産者の供給が追いついていないのがそもそもの発端です。 

 

その背景にはコメ農家を取り巻く厳しい現実が…米騒動の出口はいったいどこにあるのか?本格的な田植えシーズンを前に、コメの供給量を増やすために何ができるのか?宇都宮大学農学部・助教の松平尚也さんとともに深掘りします。 

 

今年の新米が出ても“高止まり”続く可能性 

 

一部のJAは今秋に収穫するコメ概算金を発表しました。概算金とは米を集荷する際に、生産者に支払う前払い金で、その年のコメの小売価格に大きく影響します。 

 

JA全農にいがたは、一般的なコシヒカリ60キロあたり2万3000円と、昨年度から6000円引き上げる方針です。 

 

担当者は「農家が継続的に稲作ができる水準を目指した」と話しており、宇都宮大学農学部助教の松平さんは「小売価格は5キロ3500円以上と高止まりが続くのではないか」とみています。 

 

コシヒカリは暑さに弱い 

 

まもなく本格的な田植えシーズンを迎えます。 

「コシヒカリ」は、日本で主食用米として最も多く作られてきた品種ですが、暑さに弱く、高温によって米粒は白く濁ってしまいます。2022年度、新潟県産の1等米は80.3%でしたが、2023年度は猛暑の影響で4.3%まで落ち込みました。 

 

今年も暑い夏が続くとみられ、気象庁によると5月から7月の気温は全国的に平年より高い見通しです。 

 

注目集める“暑さに強い”コメ 

 

こうした課題の解決に向け、新潟大学などがコシヒカリ由来の暑さに強い新品種の開発研究を続けています。 

 

新潟大学農学部の山崎将紀教授は、この10年でコシヒカリと29品種をかけあわせ、3567パターンの組み合わせを作りました。 

 

中でも、有力候補は「RILX(リルエックス・仮名)」という品種です。同じ猛暑下で育てたコシヒカリよりも、粒の形が整っていて、白い濁りも少なかったといいます。 

 

山崎教授によると、さまざまな環境での栽培法や食味などのデータを集め、2~3年後には新品種として登録する見込みだということです。 

 

 

コメ需給の現状 

 

 なぜこんなに米の価格が高騰しているのでしょうか。かつては生産が需要を上回っていました。ところが、今やその需要量に生産量が追いついていません。 

 

水田の利用状況(2023年産) 

 

需要に供給を追いつかせるためには一体どうすればいいのでしょうか。 

 

2023年産の水田の利用状況をみると、主食用のコメに利用している水田は124万ヘクタール。ここから661万トンのコメが生産されています。 

 

国が推し進める減反政策で、大豆や麦などに転作している水田は28万8000ヘクタールあります。この水田で主食用米を生産すれば、新たに約153万トンのコメを作ることができます。需要量704万トンに対し、計814万トンの生産で、国内の需要を満たすことができるという計算になります。 

 

宇都宮大学農学部助教の松平尚也さん 

 

一方、日本のコメ作りをめぐっては2024年、農家の倒産・休廃業が過去最多の89件にのぼっています(東京商工リサーチ調べ)。担い手不足や深刻な燃費・肥料高、天候不順などが原因で、国内のコメ農家は厳しい状況にあります。 

 

松平さんは「主食用の米を作る農家への直接支払い(補助金)で安定供給を目指すべき」と指摘します。 

 

(松平さん) 

購買力、給料も上がってない状況で価格が高騰していますので、欧米でもやっている農家への直接支払いで、まずは安定供給を目指すべきだと思います。農家が安定して作れる生産環境と、消費者も安定して買える環境が必要になると思います。 

 

(『newsおかえり』2025年5月9日放送分より) 

 

 

 
 

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