( 289909 )  2025/05/10 06:24:31  
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17週連続で上昇しているコメの価格の背景の1つに、農家の減少による「コメ不足」がある。

山形県のある農家は、農協に頼らず自ら販路を広げた結果、億を超える売り上げを記録している。

彼らは農協に対する不満から直売を始め、自らのコメの価値を高める取り組みをしている。

また、生産者と消費者の間に多くの業者が介在することや、国の政策にも課題があると指摘されている。

米農家は、将来を見据えた改革が必要であるとしている。

(要約)

( 289911 )  2025/05/10 06:24:31  
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17週連続で上がるコメの価格。背景の一つに、農家の減少による「コメ不足」があるとされています。農協に頼らず、自ら販路を広げ、“億超え”の売り上げがある山形県の農家は、今の状況をどのようにみているのでしょうか。 

 

■農協に頼らず→“直売”で億越え 

 

都内の老舗料亭「なだ万」。コメを土鍋で炊きあげるなど、こだわり抜いた日本料理を提供しています。欠かせないコメは農家から直接仕入れています。 

 

なだ万 高輪プライム 鈴木晴智 調理長 

「27、8年前になるかと思うんですけど、黒澤さんのお米と出会いました。その時に本当にこんなうまい米があるのかって。ふっくらでモチモチ感があるのが特徴。うまみ・甘みが強いので、使い勝手の良いお米だなと思ってます」 

 

東京から250キロ余りの山形県・南陽市にある、なだ万の仕入先「黒澤ファーム」。東京ドーム約6個分の田んぼで、農薬を極力使わずコメを栽培しています。重機を使って田んぼの周囲に壁をつくる「あぜぬり」に追われていました。 

 

黒澤ファーム 黒澤信彦 代表取締役 

「夢のような世界が去年から始まっている。米の値段が上がって足りないということは作れば勝手に売れる」 

 

こう話す黒澤さんは、460年以上続く農家の21代目。今の売り上げは“億”を超えています。転機となったのは30年前の“決断”でした。 

 

黒澤ファーム 黒澤信彦 代表取締役 

「農協出荷を止めようと思って直売を始めた。うちの父は農協の理事をやっていて(コメは)『全量農協へ』というシールを貼りながら、息子はそれをやめた」 

 

農協に頼らず、自ら販売することにしたのです。 

 

農家は米を農協など集荷業者に出荷し、卸売業者、スーパーなど小売業者を経て消費者に渡るのが一般的です。 

 

農家は米を刈り取る前に、農協から概算金を受け取れるため、収支の見通しが立てやすく、生産に専念できるといった利点があります。 

 

しかし、黒沢さんは不満がありました。 

 

黒澤信彦 代表取締役 

「自分がいくら美味しいお米をつくろうと頑張っても、農協に出荷したら80点の米でも60点の米でも全部同じ倉庫に入る。最低でも1キロ500円で売りたかった」 

 

 

ーー農協だといくら? 

 

黒澤信彦 代表取締役 

「当時は1キロ、200円か230円位。玄米価格で」 

 

自分の米は2倍の価値があると見込み、東京で飛び込み営業を重ねましたが、当初は相手にされなかったといいます。 

 

黒澤信彦 代表取締役 

「東京って日本の人口の1割も集まっているんだから、一軒一軒ピンポンすれば勝手に売れると思った。そんな感じで東京行ったら(家の)鍵は開かないし、「セールスお断り」だし「猛犬に注意」だし」 

 

ただ、口コミなどで評判が広まり、今や約1000の個人・約30法人の顧客を抱えるまでになりました。 

 

黒澤信彦 代表取締役 

「“毎年楽しみにしている”というお客様と巡り合うことができたので本当に幸せ。だから農協に出荷していたら、そういう幸せ感は味わえなかった」 

 

■「ペーパーマージンで価格高騰」稼ぐ農家が見たコメ不足 

 

黒澤信彦 代表取締役 

「もう商品がなくなったので、sold outでございます」 

 

2025年秋の収穫分は既に売り切れ。1キロ800円〜1000円程度と高めですが、17週連続で値上がりしているスーパーの平均販売価格と大きな差はなくなってきています。 

 

なぜこうした事態が起きているのか。黒沢さんは、生産者と消費者の間に複数の業者が絡む流通を要因の一つに挙げます。 

 

黒澤信彦 代表取締役 

「一つのお米に3枚か4枚ぐらい伝票がつく。お米を流通している人たちはちゃんと利益を出して儲かっている。でも末端の農家は、本当に大変な思いをしてきた。ペーパーマージンがなくなれば、もっと消費者は美味しいお米を安く、買えるようになってくるんじゃないか」 

 

■“稼げる農業”へ政策転換を 

 

さらに問題視するのは、国の政策です。国は地域ごとに生産量を割り振る「減反政策」を廃止しましたが、今も毎年、生産する量の目安を示すなど、減反は事実上続いていると指摘されています。 

 

黒沢さんは、目安として示された量を国内に回し、目安を超えた分の一部はシンガポールや香港、アメリカに輸出しています。 

 

 

黒澤信彦 代表取締役 

「おにぎり屋さんの隣にスターバックスがあるんですけど、スタバよりもおにぎりの方が人が並んでいる。アメリカ行くと、おにぎり1個800円ぐらいする。1個800円のおにぎりだったら、純国産のお米を持っていっても(採算が)合う。もう減反とか生産調整してる場合じゃない」 

 

米農家の後継者不足は進んでいますが、長男・拓真さんは家業を継ぐ決断をしました。 

 

長男 黒澤拓真さん 

「私の父は稼げる農業というのを実践してくれていたので、それをかっこいいと思いながら、自分もそんな仕事をしてみたいなと」 

 

黒澤信彦 代表取締役 

「農業者がなぜこんなに減ったのか、儲からないから後継者が育たなかった。国は政策を転換してもらうきっかけに、今回のコメがなれば、これから稲作農業を目指す若い後継者にも、今までより夢の持てる、希望の持てる農業になるんじゃないか」 

 

備蓄米の放出に限らず、将来を見据えた改革が必要だと感じています。 

 

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