( 289951 )  2025/05/10 07:07:51  
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自動車(画像:Pexels) 

 

 ガソリン代の節約を目的に、高価なハイブリッド車(HV)を購入する人が増えている。しかし、事はそう単純ではない。現実的な走行条件でのテストでは、すべてのHVが期待通りの燃費を達成するわけではない。 

 

 実際、オーストラリアでの調査によると、一部の車種では走行方法によって、 

 

「ガソリン車よりも燃費が悪化する」 

 

ことがわかっている。高価なHVを選んだにもかかわらず、燃費が悪いとなると、購入の目的が達成されないことになる。 

 

 オーストラリア自動車協会(AAA)のリアルワールドテストプログラムでは、オーストラリア国内の市街地、郊外、高速道路などの実際の走行条件で、八つの人気車種のHVと内燃機関車(ICE)を比較テストした。その結果、HV車の燃費には 

 

「車種ごとに大きな差がある」 

 

ことが明らかになった。 

 

オーストラリア(画像:Pexels) 

 

 テストに使用された8台のHVは、6台のハイブリッドEV(HEV)と2台のマイルドハイブリッドEV(MHEV)で、以下の車種が含まれている。 

 

・トヨタ・RAV4(HEV) 

・トヨタ・カローラ(HEV) 

・トヨタ・カムリ(HEV) 

・トヨタ・クルーガー(HEV) 

・GEM(中国長城汽車)・ジョリオン(HEV) 

・ホンダ・CR-V(HEV) 

・スバル・フォレスター(MHEV) 

・スズキ・スイフト(MHEV) 

 

HEVは従来型のHVで、エンジンとモーターを切り替えて走行する。一方、MHEVはモーターのみでは走行せず、エンジンを補助する形で燃費向上を目指している。 

 

 テスト結果では、トヨタのHEV4台(RAV4、カローラ、カムリ、クルーガー)は、同モデルのガソリン車と比較して優れた燃費性能を示した。市街地走行では、HEVカムリがICEカムリに対し50.2%の燃費削減を達成し、HEVカローラ(49.4%)、HEVクルーガー(44.4%)、RAV4(38.5%)も良好な結果となった。 

 

 ホンダ・CR-V(HEV)とスズキ・スイフト(MHEV)は、それぞれICEモデルに比べて24%と18%の燃料消費削減を実現した。 

 

 一方、GWM・ジョリオン(HEV)は、同ICEモデルと比較して16.5%の燃費削減にとどまり、実験室テストで観測された38%の削減率には届かなかった。ジョリオン(HEV)はICEモデルより約7000ドル(約100万円)高価であることも考慮すべき点である。 

 

 

オーストラリア(画像:Pexels) 

 

 スバル・フォレスター(MHEV)の総走行燃費は、約3000ドル(約43万円)安価な同ICEモデルより 

 

「2.8%」 

 

増加していた。燃費の悪化が既に問題となっていたのか、スバルはMHEVの生産を中止し、新型HEVフォレスターの受注を開始している。 

 

 新車の実際の燃費はカタログ値と異なることが多いため、購入前に実走行での燃費を把握することが重要である。 

 

 AAAのマイケル・ブラッドリー専務理事は、HVの価格がICEより高いことを踏まえ、この調査結果は厳しいものであると述べている。 

 

「当社のプログラムは、新車の実験室でのテスト結果が実際の性能とは大きく異なる可能性があることを示し続けており、コストを重視する顧客はお金を使う前に調査を知るべきです」 

 

とブラッドリー氏はコメントした。 

 

 走行方法も燃費に大きな影響を与える。HVは都市部では郊外の田舎道より燃費がよく、高速道路では燃費が悪化することがわかった。 

 

オーストラリア(画像:Pexels) 

 

 トヨタ・カムリ(HEV)は、市街地での燃料消費量を同ICEモデルに比べ50.2%削減したが、高速道路では削減率が13.4%にとどまった。 

 

 一方、GWM・ジョリオン(HEV)は、高速道路で同ICEモデルより燃料消費量が2.8%増加し、スバル・フォレスター(MHEV)は12.7%増えている。 

 

 AAAのクリス・ジョーンズ会長は、多くの消費者がHVの燃費特性に気づいていないと指摘する。 

 

「従来のHVは、基本的には非常に効率的な車だが、アイドリングストップを繰り返す交通状況に最適化されており、オーストラリアではほとんどの運転はアイドリングストップが行われています」 

 

と説明する。そのため、オーストラリアでもEVはガソリン消費削減に有効だが、 

 

「低速域での最適化が高速域での効率低下を招いているのです」 

 

と述べ、広大な国土を持つオーストラリアの郊外ではEVの利点があまり発揮されないと指摘する。そのため、オーストラリアの郊外のドライバーにとって、HVはプラグインハイブリッド車(PHV)や電気自動車(EV)ほど便利ではない可能性があるとジョーンズ会長は述べている。 

 

リポート「Do your homework before choosing a hybrid vehicle(ハイブリッド車を選ぶ前に下調べを)」(画像:オーストラリア自動車協会) 

 

 オーストラリア連邦自動車産業会議所によると、2025年の最初の3か月でオーストラリアのドライバーは4万7000台以上の新型HVを購入した。これにより、HVの新モデル販売は過去1年間で34%以上増加した。 

 

 HVの人気は高まっているが、今回の調査でHVに潜む意外な落とし穴が浮き彫りになった。 

 

 トヨタ・RAV4(HEV)やトヨタ・クルーガー(HEV)などの車両は高速道路でも良好な燃費を発揮する。しかし、長距離をノンストップで走ることが多いドライバーは、HVの高額な価格が本当に見合うのか、今回の調査結果やユーザーレポートを参照して慎重に判断するべきだ。 

 

仲田しんじ(研究論文ウォッチャー) 

 

 

 
 

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