( 290405 )  2025/05/12 06:10:37  
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霞が関の中央省庁からの人材流出が問題視されており、総務相は人材獲得のためにパワハラ防止の重要性を指摘。

政治家や知事によるパワハラが多発しており、行われた調査によると公務員の15.7%が過去3年間にパワハラを受けたという結果もある。

日本全体でハラスメント問題に取り組む必要がある。

上に立つ人が権力を抑制的に使うべきであり、パワハラを見過ごさない体制を整える必要がある。

総務省は職員の働きがいやキャリア形成をサポートするために様々な取り組みを行っている。

国民からのリスペクトを取り戻し、政策や哲学を提案できる環境を整えることが重要と考えられている。

(要約)

( 290407 )  2025/05/12 06:10:37  
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Photo by Yoshihisa Wada 

 

 霞が関の中央省庁からの人材流出が問題になっている。公務員の働き方改革のキーパーソンである村上誠一郎総務相は、人材獲得のための方策として、パワハラ防止の重要性を指摘した。日本が針路を誤らないために、どんな人材活用が必要なのか。特集『公務員の危機』の 

 

、村上総務相に、人材活用の秘訣や、長谷川岳参院議員が総務副大臣時代に行った官僚へのパワハラ、齋藤元彦兵庫県知事が公益通報者に圧力をかけた問題について聞いた。(ダイヤモンド編集部副編集長 千本木啓文) 

 

● 長谷川岳元総務副大臣や 兵庫県知事によるパワハラの本質とは 

 

 ――政治家や知事からのパワハラが多発しています。 

 

 政治家がなぜパワハラをしてしまうのか、私にはよく分からないのです。私の事務所の秘書たちは、みんな長く勤めてくれています。(秘書が度々)代わる先生も多いんだけど、うちは秘書が選挙に出るといった事情でもない限り辞めない。親分が甘いから居心地がいいのかもしれませんが(笑)。この商売は継続こそ力なりです。秘書がころころ変わっていたら支援者の名前も覚えられません。 

 

 ――国家公務員も県庁職員も、パワハラをする政治家に仕えるのは大変です。総務省は地方公務員のパワハラを調査したそうですね。 

 

 総務省として、きちんと調査しようということで、初めて「地方公共団体における各種ハラスメントに関する職員アンケート」を実施しました。実態を解明するとともに、ハラスメント対策を検討しています。 

 

 ――同アンケートによれば、有効回答数のうち、過去3年間にパワハラを受けた公務員は15.7%に上りました。調査結果をどう評価していますか。 

 

 ハラスメント対策は、職員への周知とハラスメントが起こりにくい職場環境の整備が必要です。いずれにしても総務省としてハラスメント対策に本腰を入れ始めたということです。 

 

 フジテレビでも(女性アナウンサーによる芸能人などへの接待などの)問題が起きました。テレビでは、視聴率を稼げる一部の芸能人や芸能事務所に出演してもらうことが重要だということになって、それが原因となってハラスメントが起きています。 

 

 メディア、役所に限らず、どの分野、どの地域でもハラスメントが起こっているので、日本全体の問題として取り組む必要があると考えています。 

 

 ――長谷川岳参院議員が総務副大臣時代に行った総務官僚に対するパワハラが昨年、明らかになりました。ダイヤモンド編集部も含め多くのメディアが報じましたが、総務省はハラスメントの通報窓口に届け出がなかったことを理由に積極的に解明しませんでした。前の大臣のときの話ですが。 

 

 

● 上に立つ人は、権力を抑制的に使うべきだ パワハラを「見て見ぬふり」をさせない体制を構築 

 

 私は、長谷川元副大臣の話は承知していないのですが、政治家、特に政務三役(大臣、副大臣、政務官)は、官僚の力をどうやって引き出すかを考える立場です。それなのに、パワハラをやって萎縮させてしまったとしたら、まともな意見や政策が出てくるのか、ということです。 

 

 最近は、上に立つ人の心構えというか、コモンセンスがなくなってきた気がします。選挙に出て、人の上に立とうという人間は、抑制的に権力を使わなければいけない。ギンギラギンに権力を行使したのでは、恐ろしがって誰も付いてきません。 

 

 ――政治家からのハラスメントを防御する側の役所としては、どう対応するべきでしょうか。 

 

 ハラスメントを見聞きした上司や部下が、通報するシステムが機能してしかるべきですが、残念ながらそうなっているとはいえないかもしれません。 

 

 ――見て見ぬふりをされてしまうケースが多いのでは。ダイヤモンド編集部は、ダイヤモンド・オンライン上で、公務員へのアンケートの回答を募集中ですが、これまでに届いている回答を見ると、役所内のハラスメントの通報窓口への信頼性は高くありません。 

 

 これは言いづらいんだけど、兵庫県の場合は、元県民局長(故人)からの公益通報を受けた県庁がきちんと対応できなかったといわれている。そうだとすれば、県庁として体制に不備があったといわれても仕方がないと思います。 

 

 ――その点について第三者委員会の報告書でも違法性を指摘されたのに、齋藤元彦兵庫県知事は責任を取りませんでした。 

 

 一般に、御身大切で、自分は巻き込まれなくないと言いだしたら、誰も物を言えなくなります。上に立つ者が「遠慮なく言ってこい」と言うしかない。わが省では、もし(パワハラなどが)起こったら直ちに上に知らせろ、大臣に言えと普段から伝えています。通報や告発をした人を徹底して守ることが大事です。 

 

● 総務省は、職員の働きがい キャリア形成をサポート 

 

 ――総務省では最近、職場の活性化のために何を変えましたか。 

 

 まず、局長以上に定期的に大臣室に集まってもらい、担当分野に限らず広い視点で、わが国の将来、今後の総務省の在り方について自由に意見を述べてもらっています。また、大臣レクのときなどにも、個別課題の深掘りをするためフリートーキングをするようにしています。このほか、各分野から覇気のある若手を集めて「チーム村上」という勉強会を開き、政策を練っています。大臣に直接、意見が具申でき、自分の提案が官邸の経済財政諮問会議に反映されるチャンスがある。これまで以上に、そういう形で政策立案に参加したり、大臣と対話したりすることを増やしていきたいと思います。 

 

 省内では、自分から提案しようという機運が高まっています。私がこういう(ざっくばらんな)性格だからということもありますが(笑)。 

 

 ――どのように人事の運用を改革していますか。 

 

 結構、努力しています。具体的には、次官級幹部自らが所信表明スピーチをして、総務省の意義や、職員に期待することを語っています。 

 

 また、各管理職が「働き方マネジメント宣言」をして、組織のミッション、働き方の方針を表明、共有しています。もう一つは、職員自身が自分のキャリアを積極的に考え、成長できるようにしています。例えば、省内の20ぐらいのポストへの人材配置を公募しています。異動を希望する若手職員が手を挙げて、適性を見て登用しています。 

 

 また、総務省から企業に転職した人材に、中途採用で戻ってきてもらっています。今後も、多様なキャリアを持つ人材に活躍してもらえるようにしていきます。 

 

 ――地方自治体も含め、優秀な人材を採用し、辞めないようにするにはどんな工夫が必要でしょうか(地方自治についての詳細は本特集の 

 

#5 

 

『「県庁も道州制も不要」発言の真意を村上総務相が激白、人口が半減する時代を見据え議論を本格化する』5月17日〈土〉配信予定)。 

 

 われわれの世代は、国民からリスペクトされて、天下国家を大所高所から議論できれば、給料が安くても構わない人が少なくありませんでした。 

 

 ところが今(公務員は)は、給料、待遇は悪く、リスペクトはされないというイメージで語られる印象です。これでは人材は来ません。だからこそ、皆が自由闊達に政策や哲学を提案できるようにすることが重要です(詳細は本特集の 

 

#3 

 

『村上総務相が語る、中央省庁の「忖度文化」を改める秘策とは?“国家中枢の危機”は政治が招いた』参照)。 

 

 大リーグ、ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手が、真美子夫人の出産に立ち会うため産休を取ったように、子育てと仕事を両立できるようにすることも欠かせません。男性の育休取得も大事です。多彩な人材が活躍できる環境づくりは、われわれ政治家の責務だと考えています。 

 

 Key Visual:SHIKI DESIGN OFFICE, Kanako Onda 

 

ダイヤモンド編集部/千本木啓文 

 

 

 
 

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