( 290427 ) 2025/05/12 06:34:44 0 00 美容室ならではの客からの“無茶ぶり”もある
現在さまざまな業界で社会問題となっている、カスタマーハラスメント(以下カスハラ)。サービス利用者からの暴言や無理難題への対応といった迷惑行為を指し、東京都が、2025年4月1日に全国初の「カスタマーハラスメント防止条例」を施行するなど、行政の取り組みも本格化しつつある。パーソル総合研究所が2024年6月に発表した調査結果によると、カスハラを受けやすい職種は、福祉、宿泊サービス、受付・秘書業などの“顧客との距離が近い職”。他方、最もカスハラを経験する機会が少ないのは理美容師との結果が出ているが、“無茶ぶり”がないわけではない。迷惑客に遭遇した美容師たちのリアルな嘆きの声を集めた。
神奈川県にある店舗に勤める美容師・Aさん(30代女性)は、「気持ちよく帰って欲しいので、リクエストには基本的に対応する」というが、それでも「勘弁してほしい」という利用客のエピソードを明かす。
「ある女性のお客さんで、シャンプーの際、こちらが髪を濡らした後で『自分が普段使っているシャンプーを持ってきているので、それを使ってほしい』と言い出した人がいたんです。『アレルギーがあるので、これじゃないと肌を傷める』ということでした。もちろん、持ち込みをOKにしている美容室もあると思うのですが、うちではそのようなサービスはしていない。もう髪を濡らしてしまっていたこともあって特別に対応しましたが、事前に確認してほしかった……」(Aさん)
持ち込みシャンプーによる洗髪について、“今回だけ”だと念押しをしたが、厄介事はその後にも待ち受けていた。
「会計の時、その女性が『シャンプーは持参だからお会計は安くなりますよね?』と言うんです。そういう話ではないですし、仮に安くしてもシャンプーは液体にかかるお金ではなくて、メインは髪を洗うというサービスに対するお金。店長に、料金は本来価格で対処してもらいつつ、やんわりと“シャンプーの持ち込みがOKかどうか”は事前に確認したほうがよいことをお伝えしました」(前同)
都内美容室勤務のBさん(30代女性)は、「なるべくリクエストに応えても、最終的にお客さんの理想通りにならないこともある」と、美容師ならではの難しさを語る。
「多いのは、モデルやタレントさんの写真を持ってきて、『こんな感じに』と言うケースです。もちろんわかりやすい例ですから、持参自体は歓迎なのですが、そうはいっても顔や頭の形、髪の量や質によって、同じような髪型でも印象は全く変わってきます。
それをご説明したうえで、その方が何を理想とするのかをヒアリングし、髪型をご相談させていただくのですが、頑張ってリクエスト通りにしたつもりでも、どこか違和感があるのか、『あのタレントさんと同じにしてって言いましたよね?』と不機嫌になられることも。“あなたの顔はあのタレントさんじゃないんですよ!”……と喉元まで出かかりました」
Bさんは、「美容師の経験値もありますし、いくらこちらが“こっちのほうがいい”と思った髪型でも、お客様が気に入らなかったらダメ。コミュニケーションが大切にはなりますが、理想通りの髪型になっているかどうかは、何年やっても不安」と言う。そんなBさんは、「髪型」以外で罵倒されたことがある。
「髪が傷んでいて、枝毛が多いロングヘアーの女性だったのですが、髪の長さはそれほど変えないまま、枝毛を全部切ってくれというお願いをされました。毛先を整える等はできますが、限られた時間の中で枝毛に対してそこまで作業することはできません。もちろん努力はしましたが、最終的には『まだ残っている。プロなのにこんなこともできないのか!』と捨て台詞を言ってお帰りになりました」(Bさん)
都心の美容室に勤めるCさん(20代女性)は美容師免許を取得し、下積みを経てカットを任されるようになったばかり。美容室のなかにはサービスの一環として子供を預かるところもあるが、Cさんの美容室では特別な対応はしていない。そうしたなかで、Cさんは「一日子供の面倒を見ていたことがある」と苦笑いをする。
「子育て中でも髪は伸びますし、お子様のカットも承るので、カット目的での親子来店はありがたいです。でも、この間は幼稚園ぐらいの男の子を連れてきて、『うちの子の面倒を見ておいて』と言われてしまい……。託児サービスを併設している美容室ならいいのですが、私たちの店にはそんな人手はありません。先にそうお伝えすると、『子連れに優しくないお店って口コミに書くけどいい?』と脅迫めいたことを言うんです。
その人はカットに加えてブリーチとカラーリングのお客さんだったので、施術に3時間ぐらいかかる。その間ずっと、私が相手をしていました。YouTubeを見せておけばいいと言っても、美容室にはハサミなど危険な物もたくさんあるので、目が離せなくて。
その子がまた走り回る系の男子で、子供としてはかわいいのですが、正直うちのお店の雰囲気のなかでは、他のお客さんが眉をひそめる瞬間もあって……。子連れの場合、まずは美容室に連れていっていいか確認すること、美容室では静かにできる子供であることが前提かなあと思います」(Cさん)
自分が求めることが、その美容室のサービスの一つとなっているかどうかは、事前に確認しておきたいものだ。
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