( 291922 )  2025/05/18 05:22:39  
00

男性が女性にAEDを使う際に気をつけるべき点は(イメージ) 

 

 救命道具AEDの普及が進んでいるものの、「男性が女性に使用したら訴えられるのでは?」とその使用を躊躇する人もいるという。本当に罪に問われる可能性があるのか。実際の法律相談に回答する形で弁護士の竹下正己氏が解説する。 

 

【質問】 

 驚きました。男性が救命道具のAEDを女性に使用した場合、あとで強制わいせつ罪として訴えられることもあるとか。胸をはだけないとパッドを装着できませんし、女性には恥ずかしい状態なのは理解しています。しかし、命を救うための行為です。それでも強制わいせつ罪で訴えられてしまうのでしょうか。 

 

【回答】 

 強制わいせつは、不同意わいせつに改正されました。不同意わいせつは暴行や心身の障害など、いくつかの行為や事由で、不同意の意思をもったり、他に表明や拒否、それらをできないことに乗じ、わいせつな行為をすることでも成立します。そして、事由の一つの睡眠、その他の意識が明瞭でない状態にさせること、又はその状態にあることに乗じることも含まれます。 

 

 AED使用を必要とするときは、大抵は意識を失っている状態ですから、電極パッドを装着するため、女性の胸をはだければ外形的には性的羞恥心を害する行為で、わいせつ行為の可能性がないとはいえません。しかし、医療関係者が行なえば正当な業務行為ですし、そもそも法的に保護しなければならない性的羞恥心を侵害しているとはいえず、わいせつ行為にはなりません。意識を失った人に遭遇した一般人が、救急車の到着を待たずに救命のため、AEDを使用した場合も同様の目的であるのにもかかわらず、わいせつ行為になるというのは不合理です。 

 

 現在、条例でAED普及を推進する自治体が少なくありません。例えば県民に対し、「要救助者を発見した場合は、相互扶助の精神に則り、自ら率先してAEDの使用及び、心肺蘇生法の実施に努める」ことを求め、AEDの使用による事故について救護者に訴訟が提起された場合の支援を定め、使用を奨励している県もあります。 

 

 安心してください。緊急でやむを得ないAED使用により、罪に問われることはないのです。躊躇なく行なうべき。ただし、使用マニュアルに従った適切な装着が、わいせつ否定の前提ですから、不必要な接触は避けましょう。また、意識を失った女性が誤解する恐れも。なので、周囲に人がいれば適切な使用だったことを証言してもらう配慮も必要となります。 

 

【プロフィール】 

竹下正己(たけした・まさみ)/1946年大阪生まれ。東京大学法学部卒業。1971年弁護士登録。 

 

※週刊ポスト2025年5月23日号 

 

 

 
 

IMAGE