( 292457 )  2025/05/20 07:11:57  
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朝イチの抽選で勝負が決まる?(イメージ。Getty Images) 

 

 人気パチンコホールの開店前にしばしば行われているのが、入店順番を決めるための抽選だ。勝利を目指すユーザーにとってこの抽選こそが最重要と言われ、パチンコホールの一日の中でもっとも殺気立つ瞬間でもある。パチンコ・パチスロ事情に詳しいジャーナリストの藤井夏樹氏が説明する。 

 

「パチンコホールに朝から並ぶユーザーは、プロというわけではないものの、パチンコ・パチスロで勝つための努力をする“レベルが高いユーザー”が多い。特に朝イチから並んでいるユーザーが狙うのはパチスロです。パチスロの場合、高設定台をできるだけ長い時間打つことができれば、その分だけ勝つ可能性が高くなりますからね。 

 

そして多くのユーザーが、それぞれどの台に高設定が入るかを予想しており、できるだけ早く入店することで、ライバルを差し置いて狙いの台を確保しようとする。ゆえに朝イチの抽選で勝負が決まると言っても過言ではないんです」 

 

 パチンコ・パチスロユーザーたちが気合を入れる朝の抽選では、しばしばトラブルが発生することも多い。 

 

「人気YouTuberや人気パチンコ・パチスロライターらが来店するイベントの日には、普段より多くのユーザーが朝からホールに集まり、混乱することもあります。ホール側が『朝○時より前は敷地内に入れません』と告知していても、それを無視して人が集まってしまうトラブルもよくある。ルールを破って集まった人たちだけで抽選の予定人数を超えてしまい、ルールを守った人が抽選を受けられなかった例もありました。当然ホール側が上手くコントロールすればいい話ですが、ユーザーも殺気立っていて、難しい部分もあるようです」(藤井氏) 

 

 都内に住む自営業のAさん(40代男性)は、朝の抽選時に客同士がつかみ合いをするトラブルを目撃したことがあるという。 

 

「抽選番号順に並んでいたとき、私の3人前に並んでいた若い男性のところに友人と思われる人が、後から来たんです。友人と思しき人はホールが開店すると、その男性と会話しながら、横入り状態で入店しかけました。すると、その後ろに並んでいた男性が横入りした人の肩をグイッと引っ張り、『横入りすんなよ』『何だお前!』といった言い合いからつかみ合いになってしまいました」 

 

 朝の行列で殴り合いが始まり、その場は大混乱。数人の店員がやってきて2人の男性を制止する事態に発展したが、Aさんは、「でも、その騒動のドサクサの中で、入店しようとするお客さんは1人もいなかった。トラブルを起こすのは、本当に一部の人なんですよね」と振り返る。 

 

 

 入店前に長い時間並ぶなかで悲劇を目撃したのは、神奈川県に住む会社員・Bさん(50代男性)だ。 

 

「以前ある大規模ホールの大きなイベントがあった時、500~600人ぐらいの人が朝から集まって抽選を受けていたんです。私は50番台という早い番号を引いて、高設定台に座れるんじゃないかとそわそわしていたら、私の前に並んでいた若い男性が、何やらずっとモジモジしている。その様子から、トイレに行きたいのかなと思って心配していたら、ちょっと嫌な匂いがしてきたんですよ。思わずその男性のお尻の部分を見たら、何やらシミが……どうやら漏らしてしまったみたいでした」 

 

 パチンコホールにおける朝の行列のルールは店によってさまざまだが、一旦並んだ後、列から外れたら最後尾に並び直さなければならないというルールのホールもある。 

 

「おそらくその男性は結構早い番号を引けたんでしょう。トイレに行って最後尾に並び直すのがイヤだったんでしょうね。結局、その男性はそのまま入店し、台を確保してすぐに店員さんに事情を話して、トイレに駆け込んでいましたよ」(Bさん) 

 

 最近は、事前にスマホアプリで入店順番の抽選を行い、朝の混乱を軽減するホールも多い。また、別人に抽選をさせる不正行為などを防ぐため、抽選機で抽選する際に、抽選した人物の顔写真を撮影し、抽選番号と一緒にプリントアウトするケースもある。 

 

 かつてよくあった、抽選箱に入れられた番号くじを引くという方法では不正行為が横行していたという。東京都に住む会社員Cさん(40代男性)が、過去に目撃した不正行為を述懐する。 

 

「20年ほど前の話ですが、毎日パチスロに高設定を入れる優良店があって、そこの朝の抽選ではいろいろな事件がありました。抽選箱に入っているくじを引くスタイルでしたが、抽選が終わった後、そのくじの取引をする客がいるんです。早い番号のくじを買い取っている人もいたし、抽選を引くだけの“引き子”を引き連れて、早い番号を手に入れようとする軍団もいました。そういう取引をするのは一部の常連たちで、部外者である私が早い番号を引いたとしても、取引を持ちかけられることはなかったですけどね」 

 

 アナログな抽選方法では「くじを偽造する」というシンプルな不正も行われていたという。 

 

「引いたくじは入店時に店側に回収されるんですが、くじを引いて入店しなければそのくじは手元に残る。その残ったくじを参考にして、早い番号のくじを偽造していた人がいたようです。といっても偽造したくじを使えば同じ番号の人とダブってしまうため、偽造だとすぐにバレそうなものですが、当時の店員はそこまで細かくチェックしているわけでなかったみたいで、上手いこと誤魔化せていたんでしょうね」(Cさん) 

 

 昨今はホール側が対策をしっかりするようになり、抽選時の不正を働くことは難しくなっている。前出の藤井氏が話す。 

 

「まず、抽選時のトラブルなどがあったら、SNSなどでホール側の不祥事として拡散されてしまう可能性がある。また不正が見逃されたというようなことがあれば、ホールのイメージが一気に悪くなってしまいます。そういったリスクもあるので、不正への取り締まりも厳しいし、一部の軍団だけが優遇されないような配慮もなされています。 

 

 ただ、日頃から抽選を行っているホールはちゃんとしているんですが、通常営業時は抽選をせずに“並び順入店”で、イベント時だけに多くの人が集まると抽選をしているようなホールの場合、たくさんの人数に対応することに慣れておらず、結果的に不手際が発生したり、不正を許したりしてしまうこともある。だからといって抽選が不公平というのはあってはならないことですから、どんなホールでも公平に抽選できるようなシステムやルールが必要だと思います」 

 

 多くのユーザーが必死になる朝の抽選。今日もどこかで、入店順番をめぐる人間模様が展開されているのだろう。 

 

 

 
 

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