( 292497 ) 2025/05/20 07:57:20 0 00 都内のガソリンスタンドで(酒巻俊介撮影)
ガソリン購入の負担を減らすための新たな定額補助制度が、22日に始まる。ガソリン1リットル当たり10円を補助し、足元の価格水準では現行制度よりも家計負担が和らぐ。ただ、巨額の財政負担を伴う補助金の「出口」は遠のく格好だ。石破茂政権は物価高対策と主張するものの、夏の参院選を見据えた人気取りに過ぎないという冷ややかな見方も多い。
政府は現在、レギュラーガソリンが1リットル当たり185円の基準価格を超えないよう、翌週の店頭価格を予測しながら補助金を支給している。
新制度では基準価格を廃止。補助金が支給される22日から1週間後の29日の全国平均店頭価格が、前週より5円下がるよう補助額を調整する。その後は買い控えを防ぐため、毎週段階的に補助を追加し、仮に補助なしの店頭価格が現在の水準で推移すれば6月26日以降に補助額が10円となる。価格が上昇した場合は、10円に達する時期が早まる。
ただ補助金は石油元売り各社に支給するため、ガソリンスタンドでは当面、新制度の補助金が支給される前に仕入れた在庫が販売される。新たな補助金が価格に反映されるまでには2~3週間かかるとみられる。
終了時期はガソリン税の暫定税率に関する議論に左右されるため、現時点で未定。補助の財源となる基金の残高は約1兆円に上り、単純計算では来年3月末ごろまで支援を継続できる。
ガソリン補助金は、原油価格の高騰に対する激変緩和対策として2022年1月にスタートした。一時的な措置で終わるはずだったが、ロシアのウクライナ侵略を受けた物価高騰などにより、延長が続いている。
政府支出はすでに8兆円を超える。補助金は化石燃料であるガソリンの使用を促す効果があるため脱炭素の取り組みに逆行するとの指摘もある。昨年11月に閣議決定した総合経済対策では、「出口に向けて段階的に対応する」と明記した。
足元ではトランプ米大統領の関税政策に伴う世界経済の減速懸念や、産油国の増産計画などで、原油価格は下落傾向にある。ガソリン価格は4月17~23日と5月15~21日に基準価格の185円を下回り、補助額がゼロになった。こうした状況から、政府内では「出口戦略にかじを切る好機」(関係者)との声も多い。
だが、石破政権は支援の継続を決めた。参院選に向けて家計支援をアピールしたい思惑も透け、バラマキ批判が根強い。政権には、費用対効果の議論を尽くした政策展開が求められる。(織田淳嗣)
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