( 292662 )  2025/05/21 04:39:50  
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石破茂首相との面会を終え、記者の質問に答える江藤拓農相(中央)=首相官邸で2025年5月19日午後6時40分、平田明浩撮影 

 

 「コメを買ったことはない」などと発言した江藤拓農相が辞任する見通しとなった。昨年10月に発足した石破茂内閣の閣僚が不祥事で辞任するのは初めて。「少数与党」で野党の要求に押される形となり、夏に参院選を控える石破政権にとっては大きな打撃となる。 

 

 石破茂首相は20日朝、首相官邸で記者団に「コメ価格の高騰に対してきちんとした答えを出すことが農相の今の仕事だ」と述べ、続投させる意向を改めて表明。江藤氏も閣議後記者会見で続投に意欲を示していた。 

 

 失言が表面化した19日の段階では、政権は楽観していた。立憲民主党と日本維新の会の幹部が農相不信任決議案提出の可能性に言及したものの、国民民主党の玉木雄一郎代表は「やるべき仕事で結果を出してもらいたい」と否定的な考えを示していたからだ。衆院では野党が多数を占めるが、足並みがそろわなければ不信任案は可決されない。 

 

 ところが、20日になると、立憲の野田佳彦代表が「国民感情を逆なでする発言で、その任にあらずだ」と批判のトーンを強め、国民民主からも「庶民感覚、生産者の思いが分からない農相は即刻辞めるべきだ」(榛葉賀津也幹事長)との声が上がるようになった。 

 

 20日午後には立憲、国民民主など野党5党の国対委員長が会談し、江藤氏や首相が退任を判断しない場合、農相不信任案の提出も検討することを確認し、足並みをそろえた。これにより、不信任決議案が提出されれば可決される可能性が高まった。 

 

 石破内閣での閣僚辞任は、昨年10月の衆院選で落選した小里泰弘農相(当時)、牧原秀樹法相(同)に続き3人目だが、今回の政治的な意味は大きい。野党からの事実上の「辞任勧告」に、江藤氏は追い込まれた形となった。 

 

 江藤氏に対しては「更迭すれば、コメ政策に空白が生じてしまう」(自民党幹部)として職務を全うすべきだとの意見の一方で、自発的な辞任を促す声が与党内から上がっていた。自民の閣僚経験者は「あの発言で続投するのは無理だ。耐えられない」との見方を示し、与党幹部は「首相は早く手を打って江藤氏をクビにしたほうがいい」と話した。 

 

 第1次安倍晋三政権下の2007年には事務所費問題で赤城徳彦農相(当時)、農業共済組合の補助金不正受給問題で遠藤武彦農相(同)がそれぞれ辞任。第2次安倍政権下の15年には西川公也農相(同)が献金問題で辞任しており、「農相は鬼門だ」(ベテラン議員)との声も漏れる。 

 

 コメ価格の安定に向けて、政府備蓄米の放出など対策が続く中での農相の辞任は与党にとっては痛手だ。17、18両日の毎日新聞の世論調査で、石破内閣の支持率は22%と過去最低を更新。コメ高騰への効果的な対策が打てないことに加え、社会保障の財源確保を理由に消費減税に慎重な姿勢を示す首相に対する不満が表れた形で、反転攻勢の兆しは見えない。参院選での目玉政策も見えず、「過半数維持は絶望的だ」(自民参院議員)との声も漏れる。 

 

 首相は安易な減税論にくみしない「責任政党」をアピールするが、立憲など野党は政権「無策」批判を強めている。 

 

 野党は農相不信任決議案の提出検討では足並みをそろえたが、6月の国会会期末に向けて内閣不信任案提出の是非が焦点となる。与野党の攻防が更に激しくなりそうだ。【池田直、内田帆ノ佳】 

 

 

 
 

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