( 294772 ) 2025/05/29 04:08:38 0 00 小泉進次郎農水相
昨年の総選挙後に選挙対策委員長を辞して以来、鳴りを潜めていた小泉進次郎氏(44)が農林水産大臣として表舞台に復帰した。連日、備蓄米は「5キロ2000円」とアピールするが、専門家からは厳しい指摘が……。
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小泉農水相は、着任の2日後の5月23日、NHKの「ニュースウオッチ9」に冒頭から出演。
「政府の新たな随意契約による備蓄米は5キロで2000円。2000円台ではなく2000円、こういった価格で売り渡しをしていきたい」
と述べ、店頭に並べる備蓄米の価格を現在のコメ流通価格の半額程度に設定する方針を強調した。
前任の江藤拓農水相(64)は「コメは買ったことがない」との失言の責任を取って21日に辞任。当初、官邸は江藤氏を留任させる方針だったが、20日に「宮崎弁的な言い方」と失言を重ねたことで、その夜にも森山裕幹事長(80)が進次郎氏にポストを打診したのだという。
そこで、森山幹事長本人に話を聞くと、
「進次郎さんは発信力もありますし、農林部会長もやっていましたから全くの素人ではなく経験があります。JAの関係者の中にはアレルギーのある方も一部いるかもしれませんが、誤解もあるでしょう。気にする必要はないと思いますよ」
と、小泉農水相にエールを送るのである。さらに、
「今度放出することにした令和4年産の備蓄米については、まず大手流通と2000円台で販売できるような随意契約を交わして売りますので、2000円ちょっとで間違いなく出回ると思います」
とも語り、小泉農水相の方針を後押しするのだが、
「今回の2000円台というのは4年産の備蓄米のことであって、新米ではありません。そこは農家さんもよく分かっていると思います。新米は新米で、適正な価格で販売していかなければなりません。今まで新米はあまりにも安過ぎましたが、米価が高騰するのも農家は望んではいません。新米は5キロ2800円から3000円くらいが生産費も賄える適正な価格だと思います」
あくまで、小泉農水相が示す「2000円」という数字は備蓄米に限ったもので、新米の値段には当てはまらないというのだ。
しかし、政治部デスクは、
「小泉農水相は各局の番組などで『5キロ2000円』と繰り返しており、国民に新米の価格も下がるかのような誤解を与えているとの声も上がっています」
と指摘する。
農水省は26日、随意契約による備蓄米の売渡価格を公式ホームページで公表。平均〈10700円/60kg〉としたほか、〈一般的なマージンで既存在庫とブレンドしない前提で試算すると、小売価格が2000円程度/5kg(税込2160円程度)となる水準〉と説明した。備蓄米は大手流通業者を通じて早ければ6月上旬にも店頭に並ぶ見通しである。
だが、コメ問題に詳しい、宇都宮大学農学部助教の小川真如氏は「随意契約方式」が全体の米価引き下げに資するか、疑問を呈する。
「消費者にとってなじみのある、特定の品種や産地が指定されて商品化された、いわゆる銘柄米は、品種や産地が多様な備蓄米が放出されたからといって、必ずしも供給量が増えるわけではありません。すでに、備蓄米を使ったブレンド米の価格と銘柄米の価格で差が生まれています。平均価格で見ると、銘柄米の価格は、備蓄米による平均価格の押し下げ効果を打ち消すほど上昇しています」
備蓄米が放出されても、関係のない銘柄米の小売価格は下がらないというのだ。
「銘柄米の値段は変わらない一方、国は備蓄米をこれまでの落札価格より大幅に安く販売するので、ブレンド米だけは一時期、極端に安くなるでしょう。しかしそれだけの、一過性のイベントに終わる可能性があります」(同)
全体的なコメの価格が下がらなければ期待感は逆風に変わる。小泉農水相は、果たして石破政権の浮沈が懸かったこの大勝負に勝てるのか。5月29日発売の「週刊新潮」では、現在のコメ事情のさらなる解説のほか、「5キロ2000円」を連呼する小泉農水相と父・小泉純一郎元首相(83)との共通点についても報じる。
「週刊新潮」2025年6月5日号 掲載
新潮社
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