( 295323 ) 2025/05/31 03:43:44 0 00 炊きたてのご飯(本文とは関係ありません)=2024年9月4日、宇田川恵撮影
コメの価格高騰を抑えようと、随意契約による政府備蓄米の引き渡しが始まった。そこで、にわかに世の関心事になっているのが、古いコメの品質、つまり「おいしさ」だ。
備蓄米が市場に出回ることはあまりない。放出は災害時に限られ、価格抑制目的は初めてだ。消費者の口に入る機会は少ない。
古いコメは食味が落ちるイメージが根強い。国民民主党の玉木雄一郎代表の「あと1年たったら動物の餌になるようなもの」という発言は、そんな印象に基づくものかもしれない。
では実際、経年によってどの程度コメの質は落ちるのか。そんな研究をした専門家と、大手炊飯器メーカーに聞いてみた。
◇専門家が分析したところ……
「やはり新米がおいしいですね。でも、古くなっても全然悪くないですよ」
そう語るのは新潟大の三ツ井敏明特任教授(分子生物学)だ。備蓄米放出を機に29日、同じ場所から収穫した2024年産、22年産、20年産のコメを精米して食べ比べた。
「新米(24年産)は香りやモチモチ感、上品な甘さのどれもが優れています。古い米は少しパサついたり光沢が失われたりします。ただ、22年産と20年産の違いは分からないし、良い香りこそ減りますが、嫌なにおいはないですね」
三ツ井さんによると、コメは経年により外側の脂肪分が酸化してヘキサナールといった物質が生じ、炊いたときに「古米臭」と呼ばれるにおいの原因になる。
ただ、実際に試してみると5年前のコメでも「普通のご飯だった」という。
「精米により外側は削られるし、何より保存状態次第です。備蓄米は低温で湿度もしっかり管理されていると聞くので、問題はないでしょう」
◇「家畜は良いものを食べている」
コメ価格は高止まりしている。それでも消費者にとっては、何とか普段から口にするおいしいご飯を食べたいのが心情だろう。
価格抑制を図る小泉進次郎農相は、玉木氏の「1年たったら動物の餌」発言に「ちょっと残念」と苦言を呈したが、内容自体は事実だ。
備蓄米は通常、保管が5年を過ぎると飼料用として売却される。今回、随意契約により政府が放出する30万トンのうち10万トンは21年生産分(20万トンは22年生産分)で、発言はこれについて言及したものだ。
玉木氏は、その夜の街頭演説でも「だから(5キロ)1800円で出しても安いと思わないんですよね」と述べた。
「動物の餌」という表現は著しく劣化したコメを想起させるが、三ツ井さんは「(備蓄米を餌にした)国産の家畜は、むしろそんなに良いものを食べているのかという話です」と笑う。
◇炊飯器メーカーが勧める炊き方は
「古いコメも十分おいしく食べられます。どうせなら、貴重な機会と思って楽しんで食べてみてはどうでしょう」
加えて、日本の炊飯器は日進月歩だ。各メーカーとも「古いコメもおいしく炊ける」と性能の向上を説く。さらに、精米技術の革新も著しいという。
大手の象印マホービン(大阪市)はホームページで「古くなったコメは水分量が少ないので、水を少し多めに入れて炊くのが良い」と説く。
一方、劣化を気にすることで、力を入れて研ぎすぎるのは良くないようだ。乾燥しがちな古米は、強く研ぐと割れやすいためだという。
広報部の担当者は「以前は、こするように研ぐといいと言われましたが、今は精米技術も発達したので、軽く洗う程度で問題ありません。古米だからとそこまで気にしなくとも大丈夫ではないでしょうか」と話している。【春増翔太】
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