( 295693 ) 2025/06/01 06:07:55 0 00 聴衆の歓声に応えるトランプ米大統領=米東部ペンシルベニア州ピッツバーグ近郊で2025年5月30日、金寿英撮影
トランプ米大統領は30日、米東部ペンシルベニア州ピッツバーグ近郊で演説し、日本製鉄との連携による鉄鋼大手USスチールの再建を強調した。日鉄による買収計画は2024年大統領選で政治問題化し地元は大きく揺れた。演説会場となったUSスチールの工場には従業員らが詰めかけ、歓迎の声をあげた。
「USスチールの全ての施設は米国で稼働し、繁栄し続ける」。トランプ氏がこう訴えると、会場の熱気は最高潮に達し、「USAコール」が湧き起こった。
トランプ氏は日鉄から140億ドル(約2兆円)という巨額の投資を引き出したとアピール。ピッツバーグ近郊の製鉄所に22億ドル、インディアナ州など4州に計70億ドルの設備投資資金を振り分け、従業員に5000ドルのボーナスを支給する用意があるとまで語った。
かつて栄華を誇ったUSスチールだが、競争力の高い海外メーカーにシェア(市場占有率)を奪われ経営は悪化。25年1~3月期の売上高は前年同期比10%減、最終(当期)損益は1億ドル超の赤字で、「日鉄の救済なしには立ちゆかなくなる可能性が高い」(エコノミスト)との見方が出ていた。
会場に来ていたポール・タデラモナックさん(79)は「日鉄の投資がなければ、かつて幾つもの工場が閉鎖したように、ここの施設が全てなくなってしまうところだった。提携は素晴らしい」と喜んだ。実際、トランプ氏の演説に先立ち登壇した日鉄の森高弘副会長が演説を促されると、USスチール従業員らはスタンディングオベーションで熱烈に歓迎した。
日鉄による買収計画の難航は、全米鉄鋼労働組合(USW)の反対によるところが大きい。24年大統領選では、激戦州であるペンシルベニア州でのUSWの集票力を期待し、共和党のトランプ氏、民主党のバイデン前大統領やハリス氏も反対した。一方、地元では買収の利点に対する理解が深まるにつれ支持が広がり、昨年12月には地元組合員らがバイデン前政権に買収を承認するよう求める集会を開くなどしていた。
地元住民らにも歓迎ムードは広がっている。近くでレストランを経営するペリティー・チムさん(60)は「USスチールの社員も含めて常連客のほとんどが日鉄の買収に好意的だった。かつての街のにぎわいを取り戻してほしい」と話した。【ピッツバーグ金寿英、ワシントン大久保渉】
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