( 295703 )  2025/06/01 06:16:38  
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なぜ中国の“普通の人たち”が億ションを購入できるのか(晴海フラッグ) 

 

 東京都の一大プロジェクトとして東京2020オリンピックの選手村(中央区)を改修して売り出されたマンション群「HARUMI FLAG(晴海フラッグ)」。2024年1月に入居が開始されたが、一帯にはある異変が起きていた。中国人絡みのトラブルが続出、違法の“ヤミ民泊”が横行し、それを阻止しようと「禁止」の張り紙が溢れる状況となっているのだ。ジャーナリスト・赤石晋一郎氏がレポートする。【全3回の第2回。全文を読む】 

 

 詳細は後述するが、違法民泊の運営側も、中国人グループだと見られている。 

 

 この問題の大きな特徴は、一帯に中国人経済圏が出来上がっている可能性があるところだ。並び建つマンションの玄関では定期的にアルファードが停車、発進する様子が見られる。客待ちのような車、スーツケースの荷下ろしをする車もある。 

 

「中国人観光客を運ぶ白タクで、空港からの送迎だけではなく、箱根観光などにも利用されているようです。言葉が通じるから日本のタクシーよりも利便性がいいのでしょう。運転手は黒ずくめの男性ばかりで、たむろしては路上喫煙をしている。違法駐車を繰り返しており、住人がその都度警察に通報をしているため、諍いがよく起こるのです」(前出・住民A) 

 

 送迎だけでなく、ホテル並みの各種サービスもあると見られている。 

 

「ある一室が中華食堂部屋になっているようで、フロアにいつもニンニクの匂いが充満し、大量の食材用段ボールが捨ててある。客がその部屋に食べに来ていることもあれば、デリバリーしていることもあるようです。また、マンションの鍵を大量に持って複数の部屋を回っている女性たちがいて、彼女らはリネンサービスと見られている。これらは全て人民元で決済されている可能性があり、日本にはなんのお金も落ちないのです」(同前) 

 

 メディアでは中国人富裕層が日本のタワーマンションなどを“爆買い”していると報じられる。しかし、「実情は異なる」と語るのは、中国人向けに不動産仲介を行なっている陳正義氏(仮名)だ。 

 

「日本のマンションを買っているのは、必ずしも中国の富裕層ではない。富裕層が買うのは“超”高級マンション。1億~5億円のマンションを買っているのは、北京や上海で月給20万~40万円で働く人たちなのです」 

 

 なぜ、中国の“普通の人たち”が、億ションを購入できるのか。 

 

「15倍近くにも高騰した中国の不動産バブルが理由です。例えば1000万~3000万円で購入した物件をいま売れば1億5000万~5億円弱になる。こうした売却益を元手に投資をする。円安もあり日本の不動産は彼らにとっては割安です。また、小金を持った悪い中国人がマンションを入手して、“利回り”を求めて違法民泊に手を染めるという話もよく聞きます」(前出・陳氏) 

 

 中国人の好む物件の条件1位は「海が見える」。2位が「東京タワー」、3位が「富士山」が見えることだと陳氏は解説する。つまり、東京湾が一望でき、その3条件をも叶えられる晴海フラッグのロケーションは中国人にとっても最高の物件であり、観光客向けにも訴求力あるポイントとなるのだ。 

 

【プロフィール】 

赤石晋一郎(あかいし・しんいちろう)/ジャーナリスト。「FRIDAY」「週刊文春」記者を経て2019年よりフリーに。近著に『韓国人、韓国を叱る 日韓歴史問題の新証言者たち』(小学館新書)、『完落ち 警視庁捜査一課「取調室」秘録』(文藝春秋)。『元文春記者チャンネル』をYouTubeにて配信中。Xアカウントは【@red0101a】。 

 

取材協力/西谷格(ノンフィクションライター) 

 

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 関連記事『【スクープルポ】旧五輪選手村「晴海フラッグ」がチャイナタウン化 “ヤミ民泊”横行で溢れる「禁止」の張り紙、“白タク送迎”“ヤミ中華宅配”の疑惑…困り果てる住民の嘆き』では、白タクなど中国人絡みのトラブルが続出している現状や違法民泊グループの代表X氏への直撃など、赤石氏のレポート全文を紹介している。 

 

※週刊ポスト2025年6月6・13日号 

 

 

 
 

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