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米穀店が仕入れた玄米。価格は上がり、数量の確保も難しくなっているという=福岡市西区で2025年5月29日午前9時22分、平川昌範撮影 

 

 政府備蓄米を2000円台で店頭に並べると宣言した小泉進次郎農相は、狙いについて「農家の皆さんが大変不安に思っている国産米離れを防ぐため」と強調する。農家はどのように受け止めているのか。穀倉地帯が広がる佐賀市内で家族で農業法人を営む50代の女性が米農家の厳しい実情を語った。【聞き手・平川昌範】 

 

 ――経営状況を教えてください。 

 

 ◆法人化して農地の大規模化を進めています。コメはブランド化してインターネットによる直販もしています。ただ、稲作には大型機械が欠かせません。トラクター、田植え機、コンバイン、最低この三つが必要です。大型コンバインは1500万~2000万円です。導入のために融資してもらっていますが、返しても返しても借金。自転車操業でした。 

 

 大規模化すると、もうかっているように見えるかもしれませんが、内実は違います。機械も肥料もすべて値上がりしています。一方でこれまで米価はずっと低くて、赤字続きでカツカツの状況でした。「どうやったら息子たちが将来に向けて頑張れる状況にできるだろうか」と、頭を抱えていたところに米価が上がり始めました。 

 

 ――これまでの米価が安すぎたということですか。 

 

 ◆私たち家族では「やっと一息つけたね」と話していました。法人化したものの、あまりにも経営が不安定だったので、やっと息子たちの給料やボーナスを上げられると思いました。そうしたら、「高い」「高い」と言われ始めました。 

 

 比較的高かったはずのうちのコメはむしろ安い方になり、インターネットでは対応できないほど多くの注文をいただきましたが、これまで高くても買い続けてくれたお客さんを対象に値上げせず販売しています。 

 

 ――政府の取り組みをどう感じていますか。 

 

 ◆政府は備蓄米によって値下がりすることを期待させていますが、今年収穫予定の新米はすでに奪い合いが始まっています。それに店頭で5キロ2000円台というのは私たちにとって適正価格とはとても思えません。消費者も納得して、私たちにももうけが残る適正価格っていくらだろうかと家族でよく話しています。 

 

 政府はあまりにも消費者の方ばかりを向いているように感じます。これから田植えの時期ですが、ある程度の価格でないと、農家が意欲を保つのは難しいと思います。消費者と生産者が違う方向を向いてしまっているようで残念です。 

 

 

 
 

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